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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(下)
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7月 期末試験と招待状(下) パート13

 3人の目に飛び込んできた光景、それはプールで誰かが泳いでる姿であった。

 バシャバシャバシャと、心地よく清涼な音を立てながら勢いよく水しぶきが飛びはねる。周りから聞こえる蝉のコーラスがそれにアクセントを加える。

「なんだここは?」

 3人はとりあえず、その場所へと足を踏み入れた。

 ムシムシとした暑さと涼しい風が吹きぬけ、気分を爽快にさせる。

 空を見上げると、まるで青いキャンバスに白い絵の具をサーッと流したような、見事な青空が広がっていた。

「あっ、アオちゃん、奈緒ちゃん、姫ちゃん。どうしたの3人とも?」

 3人の侵入に気がついたその人物が、泳ぐのをやめて水面から顔をあげた。

「どうしたの……って、お前こそこんなところでなにやってるんだ、楓?」

「なに……って、もちろん泳いでるんだよ」

 楓はキョトンとしながら、不思議そうに答える。

「綾杉さん、大丈夫?」

「大丈夫……って、どうして?」

「だって綾杉先輩、山極先生に捕まってたんじゃ……」

「俺がどうかしたのか?」

 まるで計ったかのように、タイミングよく山極が現れた。

 その服装はアロハシャツに短パンといったラフなもので、手に持ったお盆のうえにはオレンジジュースがはいったコップが2つ、乗っている。

「なんだなんだお前達?そのきつねにつままれたような表情は?」

「あの……先生、ここは一体……」

「ん?見ての通り屋外プールだが?」

「いえ、そういうことじゃなくってですね……この、メモなんですけど……」

 葵は奈緒が持ってきたメモを山極に見せた。

 すると山極は何がおかしいのか、突然笑いだした。

「あ、あの……先生?」

「あ、いや、すまんすまん。俺もようやく事態が飲みこめたよ」

「と、おっしゃいますと?」

「つまり、お前達はこのメモを見て綾杉が俺によってどこかに監禁されてると思ったわけだろ?」

「え、ええ……」

「でも、このメモって、実は、俺が一時期凝っていた推理小説用に用意した物なんだ」

「なっ……!!」

「いやぁ、どこになくしちゃったのかと思ったら、まさかそんなところにあったとはな。はっはっはっ」

「そ、それじゃあ、あの数々のトラップは?」

「トラップ?」

「そうです!あの怪しげなトラップの数々は一体……!」

「ああ。オフクロがカラクリ好きだったからな。その影響だろ多分」

「……………………」

「いやぁ、それにしても、俺が綾杉を拉致監禁か。こりゃいい。傑作だ。はーっはっはっはっはっはっ」

「……………………」

 おかしそうに笑いつづける山極をみて、3人はただ呆然とするしかなかった。

「ホーント、3人ともそそっかしいんだから」

 山極につられて、楓も笑い出す。

「誰のせいでこうなったと思ってるんだ?誰のせいで?」

「そうだよぉ!プールに行くなら行くって、一言言ってくれてもいいじゃないかぁ!」

「人騒がせにも、ほどがありますよ」

「まーまー。すんだことはもういいじゃない。それよりもアオちゃん、奈緒ちゃん、姫ちゃんも泳ごうよ。とっても気持ちいいよ。ほら」

 3人の呆れる言葉をよそに、楓はマイペースな調子で再び水面に潜った。

「はぁ……相変らずマイペースなやつだなぁ……」

 葵はため息をつきながら、頭をかいて呟いた。

「まぁ、泳ぐといわれても、水着なんかもってきてないし……」

「えっ?アオくんはもってきてないの?」

 奈緒が意外そうに言う。

「ひょっとして……奈緒は持ってきたのか?」

「うん。山極先生からプールがあるって聞いてたから」

「あたしもちゃーんと持ってきたわよ」

 奈緒に続いて姫子がフフンと高圧的な態度で言った。

「あんたにもちゃーんと教えてあげたのに、人の話を聞かないからこーゆーことになるのよ」

「な、なんだと!?」

「だって本当のことじゃない。さっ、紅林先輩。着替えてきましょ」

「う、うん」

 勝ち誇ったように、姫子は笑顔を浮かべながら奈緒の腕をくんでつれていく。

「……………………」

 葵は無言のままその様子を見守るしかなかった。

「なんだ?神津、お前水着もってきてないのか?」

「え、ええっ……まぁ……」

「だったら俺のを貸してやろうか?」

「えっ?」

「ただし……ビキニタイプだけどな」

「いえ……結構です……」

 不敵な笑みを浮かべる山極の申し出を丁重に断わった葵は、ここにいても仕方ないので、もう少しこの館の中を歩きまわって見ることにした。

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