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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(下)
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7月 期末試験と招待状(下) パート11

 葵、姫子、奈緒の3人は大広間にやってきた。

 天井に吊るされたシャンデリアからは煌びやかな光が放たれ、静かな空間を照らし出している。

 どこにトラップが潜んでいるかわからないため、葵達は注意深く進む必要があった。

「姫子、お前楓がどこにいると思う?」

「そんなの決まってるじゃない。人目につかない場所よ」

「……その、人目につかない場所はどこだと聞いてるんだが……」

「あたしが知るわけないじゃない。それをこれから探すんでしょ?」

「……………………」

 葵は聞いた自分がバカだったと後悔しながら、同じ質問を奈緒にした。

「奈緒、お前は楓がどこにいると思う?」

「ボク?うーん……そうだなぁ……2階のどっかの隠し部屋、じゃないかなぁ?」

「隠し部屋かぁ……確かにありえるな」

 奈緒の意見に葵も納得する。

 山極の人物像、性格を考えた場合、隠し部屋のひとつやふたつ存在していても決して不思議ではなかった。

 1番手っ取り早い方法は本人を捕まえてその存在を聞き出すことではあるが、そう簡単に捕まらないことは重々承知している。

 故に、自分達でその場所を探し当てるしかなかった。

「それじゃあ2階から調べるとするか」

「うん」

「オッケー」

 葵はゆっくりゆっくり階段を上り始めた。その両脇後方から姫子と楓がついてくる。

 階段は幅が広く、3人が並んで歩いてもまだ余裕があるくらいであった。おまけに特殊な加工を施している材質を使っているのか、滑りやすい。まるで摩擦係数がゼロと思えるような感覚さえした。

「なぁ、この階段ってなんか滑りやすくないか?」

「アオくんもそう思う?ボクもそう思ってたんだ」

「大方、あたし達を2階へ上がらせない様にするための小細工よ。気をつけて進めば大丈夫よ」

 3人はぎこちない動作になりながらも注意深く1段1段あがって行く。

「奈緒、姫子、大丈夫か?滑るから気をつけろよ」

「う、うん。アオくんが側にいてくれるから大丈夫だと思う」

「そうよ。突然ノースロープになるならいざ知らず、こんな段差があるところでコケるわけ……」

 姫子の言葉が終わるか終わらないかという時に、突然階段がパタンと音を立てて急斜面の平面になった。

「なにっ……?」

「えっ……」

「きゃ……」

 姫子は慌てて葵の服の裾を掴むと、力任せに後方へ引っ張った。

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

「キャぁぁぁぁぁっ!!」

「イヤぁぁぁぁぁっ!!」

 葵が倒れこむところへ身体を反転させた姫子が尻餅をつくようにしてのっかかり、

奈緒はうつ伏せ状態になって足から滑り落ちていった。

「いたたたたっ……」

「いったいよぉ~!!」

 散々な目にあった葵と奈緒は苦痛を訴えるが、対称的に姫子はケロリとした表情で滑り降りてきた階段を眺めた。

「敵も、なかなかやるわね」

「ひ~め~こ~……お前、なんでそんな変なこと言うかな?」

「あら?あたしの性で起こったとでもいいたげね?でも残念。これは、必然的に起こった事故なのよ」

「どうでもいいが……はよどいてくれ……」

「えっ?」

 葵の弱々しい言葉で、姫子は初めて彼が自分の下敷きになっていることに気がついた。

「あっ、ご、ゴメン!!」

 姫子は慌てて葵から起きあがった。

 そして照れ隠しのためかそっぽを向いた。

「ま、まぁ、あんたでもたまには役に立つことがあるってことね。一応感謝だけはしておくわ。その……ありがとう……」

「へいへい。どういたしまして」

 葵はパンパンと服についた埃を払いながら立ちあがった。

 そして隣で座りこんでいる奈緒に手を差し出す。

「奈緒、大丈夫か?」

「う、うん……なんとか……」

 奈緒は葵の手を借りて立ちあがると、痛みを振り払うように頭を2度3度振った。

「ホント、酷い目にあったよ」

「まったくだ。まさかこんなトラップをしかけてるとはな。これからはより、注意して進まないと」

「わかってるじゃない。それじゃあ、二階へ上がる階段が他にないか、探すわよ」

「あっ、ちょっと待て」

 はりきりながら探索に向かおうとする姫子を、葵が呼びとめる。

「なによ、もう。せっかく人がやる気だしたっていうのに」

「お前……太ったんじゃないか?」

「!!」

 途端に姫子は右の拳をプルプルと震わせた。

「バカぁ!!」

 そして、葵に怒りの鉄拳が炸裂したのは、それから直後のことであった。

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