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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(上)
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7月 期末試験と招待状(上) パート8

「ふぅ、終わった終わった」

 最後の試験を終え、教室を後にした葵は、少し重い足取りで化学研究室へと向かっていた。

 普段ならば試験が終われば奈緒と一緒に遊びまわるのであるが、今回はそういうわけにはいかなかった。

 というのも、葵は何故か化学教師の山極誠三やまぎわせいぞうから呼び出しを受けたのだ。

 山極といえば、清峰学園の中でも1、2を争う名物教師で、一見すると山賊の頭のようにも見えるが、温厚な人柄で生徒からは慕われている。

 しかし、いろいろと怪しげな実験を繰り返しては様々な騒動を引き起こすため、『騒動師』の名をほしいままにしていた。

 呼び出される覚えはまったくなかった葵は、当然困惑の色を隠しきれなかった。

 やがて化研の前に到着した葵は、扉を静かにノックした。

「失礼しまーす」

 そして扉を開けて、中へと入る。

「ん?」

 そして中にいる人物を見て、少し言葉を詰まらせた。

 そこには山極と、何故か姫子が二人楽しそうに談笑している姿があった。

 おまけに化研の中は、なにやらおいしそうな匂いが漂っている。

「お、神津来たか。まぁ、入れ」

 山極は葵の姿を確認すると、近くへ来るよう促す。

「は、はぁ……」

 葵は曖昧な返事をしながら、二人の下へと近寄っていく。

「それで先生、なんでしょう?」

「まあまあ。とりあえずこれでも食ってだな」

 そういって山極はコンロの上にかけられていた鍋のふたを開けた。

 その鍋の中には、作り立てと思われるシチューが入っていた。

 山極は深皿にシチューを盛ると、それを葵と姫子に手渡す。

「わー、先生。ご馳走になります」

 姫子は嬉しそうに受け取って、食べ始めた。

「え、えっと……いただきます」

 戸惑いを覚えながらも、葵もそれを食べる。

「どうだ?うまいか?」

「はい!とっても!!」

「おいしいです」

「そうかそうか、それはよかった」

 山極は満足そうに頷くと、自分もシチューを食べ始めた。

「うんうん、うまいうまい」

 そして自画自賛をする。

 そんな山極を見て、ただ自分の手料理をご馳走するためだけに自分をここに呼んだのかと、葵が考えていた時であった。

「おお、そうだそうだ。神津、お前夏休み暇か?」

 突然山極が話を振ってくる。

「え、ええ……暇ですけど……」

 葵は頷いた。

「そっかそっか。じゃあ、俺の別荘に招待してやろう」

「……はっ?」

 突然の言葉に、葵は返す言葉を失った。

「実はな、虹沢と話をしてたらどーしても俺の別荘に行ってみたいとか言い出してな。それで、お前も誘ってみることにしたわけだ」

「は、はぁ……」

 葵は曖昧な返事を返す。

「ああ、もし断った場合は、俺の別荘への招待状の代わりに、夏休み返上の補習の招待状を俺の権限でお前に出してやるから」

 すると山極はとんでもないことを口にした。

「ええっ!?」

 葵は驚きの声を上げる。

 実際、山極だったらそれくらいのことをやりかねなかった。

「ねっ?葵、行きましょうよ。あんただって補習受けたくないでしょ?」

 姫子が葵に促す。

「わかったよ……」

 葵は渋々、その招待状を受け取ることにした。

 葵の頭の中は不安な気持ちで埋め尽くされていった。

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