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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(上)
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7月 期末試験と招待状(上) パート6

 昼食を食べ終え、葵が自分の部屋でくつろいでいると、玄関のチャイムが鳴る音が聞こえた。

「来たか」

 葵は部屋を出て玄関へと向かう。

 そして玄関の戸を開けた。

「こんにちわ、アオくん」

 そこには、バッグを持ち、ワンピース姿の奈緒がいた。

「お、来たな。さ、あがれ」

「うん。お邪魔しまーす」

 葵は奈緒を家の中に招き入れると、自分の部屋へと案内する。

 葵の部屋はがんがんエアコンをきかせていたため、かなり涼しくなっている。

「とっても涼しいね」

「まぁ、外があんな気温だからな。ここまで来るのに大変だったろ?暑くって」

「うん。夏らしくっていいと思うけど、これが毎日続くのは大変だよね」

「ホント、イヤになっちまうよな。天気もテストも」

「天気は仕方ないけど、テストはちゃんと勉強すれば……」

「わかってるわかってる。それじゃあ、始めるか?」

「うん」

 奈緒は座ると、バッグの中から勉強道具を取り出してテーブルの上に置いた。

「何から始める?」

「とりあえず……数学からでいいんじゃねえの?」

 葵も奈緒の向かい側に座ると、教科書とノートを開く。

「あー見てるだけで眠くなってきた……」

「ダメだよアオくん。そんなことじゃ」

「そんなこと言われてもなぁ……」

「来週はもうテストだよ?」

「わかってるよ……」

 奈緒に促され、葵は渋々問題を解き始めた。

「うんうん」

 奈緒も安心すると、葵と同様に問題を解き始める。

 そして、二人の間に静寂の空気が流れた。カリカリカリ、とリズミカルな音を立てながら、ノートに鉛筆を軽やかに走らせる。

 始めは乗り気でなかった葵も、不思議とやる気が湧いてきた。

 これも奈緒のおかげかな……

 葵はそう思いながら勉強に集中することにした。

 次々と問題を解いていき、教科書のページをめくっていく。

 が、その集中力は物の10分と経たないうちに途切れてしまった。

「うーん……」

 難問に遭遇した葵は、鉛筆を止め、教科書と睨めっこしながら低い声で唸った。

 いくら考えても、まったく答えが導き出せない。

「どうしたのアオくん?」

 その様子を見た奈緒が、鉛筆を止めて尋ねてきた。

「ああ、ちょっとこの問題がわからなくってな……」

「どの問題?」

 奈緒は身を乗り出すようにして葵の教科書を覗き込む。

「あっ、この問題はね、この公式を使えば解けるよ」

「どれ……」

「違うよアオくん。そうじゃなくって、こうやって……」

「おおっ、ホントだ。奈緒、お前って頭いいんだな」

「そんなことないよ。アオくんだって基本さえしっかり覚えれば、簡単に解けるようになるよ」

「そうかなぁ……まぁ、頑張ってはみるが」

「その調子だよ、アオくん」

 奈緒はニコッと微笑む。

 葵は次の問題を解くため再びノートに鉛筆を走らせようとした。

 と、その時、まるでその動作を中断させるかのように、コンコンとドアがノックされる音が聞こえた。

「失礼しまーす」

 そして声がしたかと思うと、ドアが開かれ、姫子が中に入ってきた。手にはお菓子とジュースを載せたお盆を持っている。

「紅林先輩こんにちわ。葵のために、今日はすみません」

 姫子は奈緒に向かって一礼すると、そのお盆を床の上に置いた。

「ひ、姫子ちゃんそんなに気を使わないでよ。ボクが好きでやってることなんだから」

 かしこまった姫子の態度を見て、奈緒は少し慌てた様子を見せる。

「……おい、一体どーゆーつもりだ?」

 対照的に、葵は冷たい眼差しで姫子を見た。

「どーゆーつもりって……その……」

「俺は、こんなもん頼んでないぜ?」

「だ、だから、そろそろ休憩の時間かなぁ、って思って持ってきてあげたんじゃないの」

「休憩も何も……奈緒が来てからまだ10分くらいしか経ってないと思うんだが?」

「え、えーっと……」

「ひょっとして、覗きに来たのか?様子が気になって」

「そ、そんなこと、あるわけないじゃない!!」

 姫子は顔を真っ赤にしながら否定するが、動揺した様子を見せる。

 葵の考えはズバリ的中している様子であった。

「ねぇ……姫子ちゃんも一緒に、勉強する?」

 そんな姫子の心を知ってか知らずしてか、奈緒が尋ねてきた。

「えっ?いいんですか……?」

 姫子は驚いたように、奈緒を見る。

「うん、いいよ。3人で勉強した方が、はかどるもんね」

「お、おい奈緒。俺は……」

「ありがとうございます!」

 葵が言葉を発するよりも早く、姫子は奈緒にお礼を述べた。

 そして部屋を飛び出して行ったかと思うと、あっという間に勉強道具を片手に戻ってきて、葵と奈緒の斜め隣に座った。

「それじゃあ、張り切って勉強しましょう!」

 そして嬉しそうにノートと教科書を開く。

「うんうん。今日、明日、三人で頑張って勉強しようね」

「だから俺は……」

「はい!紅林先輩!!」

 奈緒の言葉に姫子が大きく頷く。

 姫子のやつ……一体どういうつもりだ……?

 葵はそう思いながらも言葉に出すことはせずに、勉強に集中することにした。

 そして、あっという間に2日間は過ぎていった。

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