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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(上)
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7月 期末試験と招待状(上) パート2

 教室掃除を終えた葵と奈緒は、図書室へとやってきた。

 土曜日の放課後、しかも試験が間近に迫っているということもあって、広い図書室の中には、あまり生徒の姿が見受けられない。

 本にはあまりいい環境とは言えないムシムシした暑さの中、カウンターでは図書委員の女子生徒が独り、黙々と作業をこなしている。

「脇本、試験前だってのに大変だな」

 葵はカウンターの前まで行くと、その長髪の少女に声をかけた。

「仕事ですから」

 少女は淡々とした口調で答える。

 彼女の名は脇本優菜わきもとゆな。葵や奈緒のクラスメートではあるが、クラスの中では変わり者として通っていた。というのも、物静かで他人とあまり接しようとはしなく、どこか自分から他人を拒絶している節がある。

 実際、葵も優菜とはあまり話したことがなかった。

 こんな機会でもなければまず話すことがない。しかし、話したからといって、淡々とした会話しかなされないので会話が続かない。

 そんな感じで、外見はいいのに損をしている部分が優菜にはかなりあった。

「相変わらずだなぁ。もっと愛想良くできないのか?」

「そんなこと、神津君には関係ありません。用がないのなら来ないでいただけますか?」

「用があるから来たんだ。実は本を探してるんだ」

「本、ですか?」

「ああ。今度の期末試験に出される問題と解答を一冊にまとめた本を探してるんだが……」

「…………」

 優菜は無言のまま、軽蔑の眼差しを葵に送る。

「そんなもの、あるわけないに決まってるじゃないか」

 奈緒が呆れながら優菜の代わりに答えた。

「アオくん、あまり変なこと言って脇本さん困らせちゃダメだよ?」

「なんだと?俺は大真面目に聞いたんだ。ここの図書室は結構そろってるからな。探せばあるかもしれないじゃないか」

「絶対にないよそんなもの。それに、もしあったとしたらアオくんがとっくに使ってるよ」

「まぁ……それもそうか」

 葵は奈緒の言葉に思わず納得してしまう。

「…………」

 そんな二人を、優菜は冷ややかな目で見ていた。

「図書室内で騒ぐなって言いたいんだろ?わかったよ」

 葵は気まずそうに言うと、奈緒を見る。

「ホラ、さっさと返却済ませちゃえよ」

「う、うん」

 奈緒は鞄の中から借りていた本を取り出すと、優菜に手渡した。

「これ、お願いします」

「ちょっと待っててください」

 本を受け取った優菜は、手際よく返却手続きを進める。

「ありがとうございました」

 そして、作業が終わると抑揚のない声で呟いた。

「脇本、お前もうちょっと愛想良くしたほうがいいと思うぞ?」

「……大きなお世話です」

 葵がそう忠告するも、優菜は迷惑そうに答える。

「そんじゃ、帰るか」

「う、うん」

「図書当番頑張れよ」

 葵は優菜にそう告げると、奈緒と一緒に図書室を出ていった。

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