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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
6月 恋の梅雨前線北上中
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6月 恋の梅雨前線北上中 パート10

 陽はすっかり傾き、空一面には鮮やかな茜色の夕焼けが広がっていた。

「ただいまー」

 学校から帰ってきた葵は、家に入るとそのまま自分の部屋へと向かう。そして、自分の部屋に入るとベッドに身を投げ出した。

 オレンジ色に染まった部屋の中は、哀愁を感じさせるとともに心が不思議と落ち着く。

「ふぅ……今日も疲れたな……」

 葵は大きく深呼吸をした。

 姫子も今日はちゃんと学校に行ったので、もう風邪の心配はしなくてもいい。

 むしろ、姫子の風邪よりも今日の夕食の献立の方が葵にとっては心配事であった。

「今日の夕飯……どうするかなぁ……」

 葵は目を瞑り、あれこれとイメージを働かせて見る。

 突然、その思考をさえぎるかのように、玄関のチャイムがピンポーンと鳴り響いた。

「誰だろ?」

 身を起こした葵は、そのままベッドから抜け出し、部屋を出て玄関へと向かう。

「はーい、どなたですかー?」

 玄関に着いた葵は呼びかけてみたが、返事が何も返ってこない。

「おかしいなぁ……」

 葵は不審に思いながら、玄関の戸を開けた。

「わっ!?」

 そして、驚きの声を上げた。

 玄関の前に、萌が黙ったままじっと立っていた。

 その様子には、何かただならぬ雰囲気を感じる。

「ど、どうしたんだ萌?」

「……………………」

「ま、まぁ、とにかく、上がれよ」

「……………………」

 萌は無言の行を続けたまま家の中へと上がる。

 そして、そのまま二階へと上がっていった。

「お、おい?萌?」

 戸惑いの表情を浮かべながら、葵は萌の後をついていく。

 萌が入ったのは、葵の部屋であった。

「どうしたんだ萌?俺の部屋になんか来たりして」

「……………………」

「黙ってちゃわからないぞ?何か言ってくれないと」

「……………………」

「まぁ、言いたくなければいいんだが……とりあえず、適当なところに座ってくれ」

「……………………」

「おいおい……どうしたんだ萌?今日のお前、なんだか変だぞ?」

 葵は心配そうに萌を見ながら、ベッドに腰掛ける。

 すると萌は、何を思ったのか、その葵の膝の上に腰掛けた。

「も、萌?」

 突然の萌の行動に、葵は戸惑いの声を上げる。

「葵ー、お客さん誰だったのー?」

 タイミング悪く、姫子が入ってきた。

「ちょ、ちょっと萌。何やってるの!?」

 そして、葵の膝の上に腰掛けてる萌を見て、驚きの声を上げる。

「ちょっと葵!一体何してるの!?」

「さ、さぁ……俺にも何がなんだか……」

 葵もわけがわからず、返答に困ってしまう。

「……聞いたもん」

 その時、初めて萌が口を開いた。

「えっ?」

「鈴歌ちゃんから聞いたもん。お兄ちゃんが、鈴歌ちゃんと一緒にアマリリス亭の新作ケーキ食べたこと」

「あっ……」

 葵は絶句した。

 おそらく鈴歌が口を滑らしてしまったのであろうが、そのことに萌がやきもちを焼いているというのは、はっきりと理解できた。

 鈴歌ちゃん……ナイショって言ったのに……

 葵は鈴歌に対して恨み節をつぶやいたが、最早手遅れでどうにもならない。

「萌だって、お兄ちゃんと一緒にアマリリス亭の新作ケーキ食べたいもん。連れてってくれるまでここから動かないもん」

 萌は膨れた表情を見せたまま、一歩も動こうとはしない。

 葵と姫子は互いに顔を見合わせると、苦笑した。

 萌の顔は差し込んできた夕陽の光によって、赤く染まっていた。

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