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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
6月 恋の梅雨前線北上中
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6月 恋の梅雨前線北上中 パート4

 6時限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、先生が教室から出て行く。

 途端に騒がしくなる教室。

 足早に席を立つ生徒や、友達と帰りの予定を話し合う生徒など、その姿は様々だ。

 そんなにぎやかな雰囲気の中、葵は一人窓の外をボーっとしながら眺めていた。

 厚く覆われた灰色の雲からは、しとしとと雨が降り続く。

「アオくん……」

 いつの間にか、奈緒がそばに立っていた。

「やっぱり、姫子ちゃんのことが心配なんだね」

「そんなことねーよ。この雨がいつやむかなって思って……」

「ウソ」

 奈緒が言葉をさえぎる。

「ボクにはわかるもん。アオくん、口ではそんなこと言ってるけど、心の中では姫子ちゃんを心配してるんだって」

「奈緒……」

「アオくん、今日一日ずーっとボーっとしてたし、どこかそわそわして落ち着きがなかったし、なんだか元気がなかったもん」

「…………」

「だからボクわかってたもん。姫子ちゃんのことが心配なんだって。だってアオくん、優しいもんね」

 コイツ……俺のことよく観察しているな……と、葵は思わずにはいられなかった。

 実際、奈緒の言うとおり、今日の葵は元気がなかった。

 朝、姫子に冷たい態度をとった葵であったが、時間が経つにつれその罪悪感が増していく。

 姫子は今何をしているのだろうか?

 苦しんだりしていないだろうか?

 考えれば考えるほど姫子のことが頭に浮かんできて、授業どころではなかった。

 自分を狩りに来た者を何故心配する必要があるのか?

 もっともっと苦しめばいい、そう思ったんじゃなかったのか?

 葵はそんな自分に苛立ちを覚えるとともに、姫子を心配する気持ちが募っていく。

「俺は優しくなんかないさ」

 葵はぶっきらぼうに答えると、かばんを手に取り席を立ち上がった。

「アオくん、どこ行くの?」

 奈緒が慌てて呼び止める。

「どこ……って、家に帰るに決まってるだろ」

 葵は苦笑した。

「あっ、じゃあボクも」

 奈緒は慌てて自分の席からかばんをとってくる。

「それじゃあアオくん、帰ろ」

「帰ろ……って、俺途中までしか一緒に帰れないぞ?」

「え~!?どうして?」

 それを聞いて、奈緒は不満の声を上げた。

「どうせお前のことだから、俺にくっついて姫子のお見舞いに来るつもりだっただろうが、そうは問屋がおろさないぜ?お見舞いになんか来なくていいからな」

「ぶぅ~~!!」

 まるでお見通しといわんばかりの葵の言葉に、奈緒は恨めしそうに葵を見る。

「アオくんのケチ。ボクだって姫子ちゃんのことが心配だもん!」

「ケチでも何でも結構。お前が来ると、かえって姫子に気を使わせるからな」

「そうかな?そんなことないと思うけど」

「そうなの。それに、お前が姫子のお見舞いに来て風邪でもうつされたら大変だからな」

「えっ?」

 奈緒はその言葉に顔を赤らめる。

「アオくん……ボクのこと心配してくれるの?」

「まぁ、一応な」

 葵はそれだけ言うと教室を出た。

「エヘヘ……なんだか嬉しいな」

 奈緒も笑顔になりながら葵の後をついていく。

「ところでアオくん、姫子ちゃんに買ってあげるもの決めた?」

「姫子に買ってやるものだぁ?」

「うん。姫子ちゃん病人なんだから、おいしいものうんと食べて早く元気になってもらわないと」

「そうだなぁ……特に決めてはないけど」

「それだったら『アマリリス亭』のケーキなんかどうかな?」

「アマリリス亭?」

「女の子の間でとってもはやってるケーキ屋さんだよ。ボクも友達と一緒にいったことあるけど、すっごくおいしいんだから」

「ふーん……」

 葵は気のない返事を返す。

 奈緒はため息をつくと、ボソボソと呟いた。

「アオくん、ちっとも乙女心がわかってないんだから」

「うん?なにかいったか?」

「う、ううん。なんでもないよ」

 奈緒は慌てて笑顔を作る。

 そして二人は雨の降りしきる中、帰路へとついた。

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