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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
5月 木漏れ日の公園
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5月 木漏れ日の公園 パート8

 ファーストフード店を出て、鈴歌、萌と別れた葵達は、商店街を後にし、一路公園へとやってきていた。

 午後の公園は、穏やかな日差しの下、のんびりと散策を楽しんでいる親子連れやカップルの姿が、ところどころで見受けられる。

 青々と生い茂った樹々の葉の間からは柔らかな木漏れ日が、うっすらと地表へ降り注いでいた。

「のどかねぇ~」

 姫子が大きく口をあけて、欠伸をする。

「ほんと、こんなのどかな日はみんなで草むらに寝転がってお昼寝でもしたいよね」

 奈緒がニコニコしながら言った。

「やるんだったらお前等二人でやれよ?俺は嫌だからな」

 葵がつれない返事を返す。

「とっても気持ちいいと思うんだけどなぁ……」

 奈緒は残念そうに呟いた。

 三人は公園の中を散策する。

 やがて、大きな池の前へとたどり着いた。

「ホラ、着いたぞ」

「ここがどうかしたの?」

 葵の言葉に、姫子は顔をしかめる。

「お前、町を案内しろっていったじゃないか」

 葵は呆れてため息をついた。

「そう言えば……そうだったわね。で、ここがなんなの?」

 姫子が思い出したようにポンと手を打ち、葵に尋ねる。

「ここはだな、『真実の池』だ」

「『真実の池』?何よそれ?」

「その昔、木こりがこの池に斧を落としてだな、困り果ててたところに、突然池の水が光り輝いたかと思うと、中から女神が『金の斧』と『銀の斧』を持って現れ、その木こりに『池に落としたのはどちらか?』と聞いたんだ。ところがその木こりは強欲で『違います。私の落としたのはダイヤモンドの斧です』と答えたからさあ大変。怒った女神がその木こりを池の中へと引きずり込んでしまった、って話だ」

「へぇ。まるでギャグみたいな話ね」

 姫子が感心したように相槌を打つ。

 しかし、奈緒は苦笑した。

「アオくん、それは……」

「違いますね」

「えっ?」

 突然、奈緒の言葉を遮るかのように、横から声が割り込んできた。

「ここは、池ではなくお堀です」

 そして、眼鏡をかけたおさげの少女が、葵達の横に歩み出る。

「お堀?どういうこと?」

 姫子が聞き返す。

「これはですね、その昔、清峰城きよみねじょうのお堀として造られたものなんですよ」

「お城?そんな建物見当たらないけど……」

「今は現存してませんから。ほら、向こうに小高い丘が見えるでしょ?

「うん」

「あの場所に、清峰城はあったんですよ。今現在、当時の面影を残しているものはこのお堀だけになっちゃいましたけど」

 少女は嬉しそうに話す。

「へぇ……そうなんだ」

「それからもう1つ。先程お話になられた木こりの童話は、木こりが『私が落としたのは鉄の斧です』って正直に答えて、それで『あなたは正直者ですね』って女神が言って、金の斧と銀の斧を両方貰った、というのが正確ですよ」

 少女はそこまで話すとニコッと微笑んだ。

「あ~お~い~!!」

 騙されたと知った姫子は、険しい表情で、今にも飛び掛りそうな剣幕で、葵に迫った。

「あ、待て、姫子。落ち着け。な?奈緒、お前からもなんか言ってやってくれよ」

「自業自得だよ」

「奈緒!!」

 突き放す奈緒の発言に、葵は恨めしそうに彼女を見る。そして、横にいる少女を睨んだ。

「何で本当のこと教えるんだ!?おかげでこっちはピンチじゃないか!!」

「何で……って、ウソを教えるのはよくないと思いますけど?」

「そうだよアオくん。その娘の言うとおりだよ」

 少女と奈緒は、葵を非難する。

 助けを求められないと悟った葵は、姫子にペコペコと頭を下げた。

「お、俺が悪かった。謝るから。この通り」

「反省してる!?」

「してるしてる。じゅーぶんしてる!!」

「……ったく、次変なこと言ったら、ただじゃおかないんだからね!!」

 姫子はようやく怒りを納め、葵から離れる。

「ふぅ……」

 葵は大きくため息をついた。

「大丈夫ですか?顔色が悪いですけど」

 その様子を、少女が心配そうに見守る。

「いや、大丈夫だから……」

 葵は苦笑した。

「それよりもお前、随分と詳しいんだな?」

「はい。これでも、清峰学園史跡研究会の一員ですので」

 少女の言葉に、葵は眉をひそめた。

「お前……清峰学園の生徒なのか?」

「……ということは、あなた達も?」

 葵の言葉を聞いて、少女はキョトンとなる。

「ああ。俺は2年A組の神津葵」

「ボクは同じく2年A組の紅林奈緒」

「あたしは1年D組の虹沢姫子」

 葵達はそれぞれ自己紹介をした。

「そうだったんですか。わたしは2年E組の寺山千亜希って言います。史跡研究会に所属しています。歴史についてはそれなりに自信があるので、わからないことがあったら何なりと聞いてくださいね」

 千亜希もそう言って、自分の自己紹介をした。

「史跡研究会……つまりは歴史オタクってわけか」

「失礼な!!オタクではありません!!マニアと呼んでください!!」

 葵の言葉に、千亜希は非難の声を上げた。

「どっちでも同じような意味だと思うんだが……」

「いいえ。まったく違います!!」

「まぁ……寺山がそう言うなら、そうなんだろうなぁ……」

 千亜希のあまりの迫力に、葵はタジタジになってしまう。

「それで、さっきみたいに、待ち伏せして突然現れ、そんでもって解説しまくってるってわけか?」

「違いますよ。今日はフィールドワークで来たんです」

「フィールドワーク?」

「はい」

 千亜希はコクンと頷くと、空を見上げた。

「こうしてここに来て、歴史の息吹を感じるとともに、古代の浪漫に想いを馳せているんです」

「は、はぁ……」

「そしたら、あなたが虹沢さんにウソを教えているのが偶然耳に入ってしまって……出すぎた真似をしちゃいましたね」

 千亜希は葵を見ると、苦笑しながらペロッと舌をだす。

「俺にはよくわからんことだが……まぁ、頑張ってくれ」

「もちろん、言われなくっても!」

 千亜希は元気よく答える。しかしすぐに考え込む仕草を見せた。

「うーん……そうだなぁ……」

「どうした?」

「神津くんが興味持ちそうなことって言ったら……このお堀の下に、実は埋蔵金が隠されてるかもしれない、ってことかなぁ?」

「埋蔵金?」

「ホラ、興味が湧いてきたでしょ?」

「このお堀の下に、埋蔵金があるんだ?」

 奈緒が興味深そうに、水の張られた堀を見る。

「ちょっとあんた、今から行ってその埋蔵金掘り起こしてきなさいよ」

 姫子がドンと葵の背中を押した。

「わわわっ!?危ねえな!!何するんだ!?」

 危うく堀の中に落ちそうになった葵は、何とかすんでの所で踏みとどまり、姫子を睨む。

「えーん……お姉ちゃん。お兄ちゃんが怒るよぉ~」

 姫子はすぐさま奈緒に助けを求めた。

「ダメだよアオくん。姫子ちゃん怒ったりしちゃ」

 奈緒は表情をほころばせながら葵を怒る。

「それじゃあ何か?お前も俺に、この堀の中に飛び込めって言うのか?」

「え、えっと……あはは……」

 しかし、葵の反論に奈緒は言葉を失うと、苦笑を浮かべるだけであった。

「まったく……しょうがねえやつだな……」

 葵はそんな奈緒を見て、ため息をつかずにはいられなかった。

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