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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
5月 木漏れ日の公園
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5月 木漏れ日の公園 パート4

 言い争いに近い雑談を交わしながら歩くこと10分。

 二人は奈緒の家へとやってきた。

 奈緒の家は他の家と大して変わらない二階建ての家で、庭に大きな柿の木が生えている。

「ホラ、お望みどおりつれてきてやったぞ」

 葵は家の前に立ち止まり、親指でその家を示す。

「ふーん……ここが……」

 姫子は奈緒の家をしげしげと眺める。そして面白くなさそうに呟いた。

「大して珍しい家じゃないわね」

「当たり前だろうが。一体、お前は何を期待してたんだ?」

 葵は呆れながら姫子を見る。

「ホラ、もういいだろ?気が済んだか?」

「うん。一応は」

「それじゃ、さっさと帰るぞ」

「え~?よってかないの?」

「はぁ?」

 姫子の言葉に、葵は素っ頓狂な声を上げた。

「なんで奈緒の家によってかなきゃいけないんだ?」

「物はついで、って言うじゃない。せっかくここまで来たんだし、寄って行きましょうよ」

「そんなこと言って。お前、奈緒の家に居座っていろいろ悪さするつもりなんだろ?この悪魔め!!」

「あたしは悪魔じゃなくって死神よ!!大体、なんであたしがそんなことしなくちゃいけないわけ!?」

「当たり前だろ?お前みたいなお子様の考えることなんて、程度が知れている」

「なんですってぇっ!?」

「なんだよ!?」

「なによ!?」

 二人の口論はエスカレートし、互いににらみ合う。

「あっ、アオくんに姫子ちゃん」

 その二人の口論にピリオドを打ったのは、頭上から聞こえてきた、のほほんとした声だった。

「ん……?」

「えっ……?」

 二人は同時にその方角を見る。

 すると、二階の開いた窓からひょっこり奈緒が顔をのぞかせていた。

「げっ!!」

「あっ!!」

 二人は驚きの声を上げるとともに気まずそうな表情を作る。

「どうしたの二人とも?そんなところで?」

「あっ、いや……その、なんだ……」

「え、えっと……」

「ちょっと待ってて。今そっちに行くから」

 奈緒はそう言って、窓から顔を引っ込める。

 二人は互いに顔を見合わせた。

「どーするんだよ。お前がバカ騒ぎするから、奈緒がこっちに来るじゃないか」

「あ、あたしのせいだって言うの!?」

「当たり前だろ。俺は知らんからな。お前が何とかしろよ」

「ちょ、ちょっと……」

 姫子の言葉を遮るかのように、玄関の戸が開かれる。そしてスカート姿の奈緒が出てきた。

「お待たせー」

「お、おう奈緒」

「こ、こんにちわ」

 葵と姫子は、奈緒に軽く挨拶する。

「なんだか騒がしいなって思って外見たらアオくんと姫子ちゃんの姿が見えたからボク、ビックリしちゃった。それで、ボクに何か用?」

「うーんと、その、なんだ……姫子がな……」

 葵は苦笑しながら姫子を肘で小突く。

「姫子ちゃんが?」

 奈緒はキョトンとしながら姫子を見る。

「え、えっと……」

 姫子は慌てた様子を見せたが、急にしおらしくなると、奈緒の前に歩み出た。

「ご、ごめんなさい……あたし、奈緒お姉ちゃんの家ってどんなところか一度遊びに来てみたくってお兄ちゃんに頼んだんだけど……お姉ちゃん迷惑がるからって……」

 そしてあからさまに演技とわかる泣き真似を見せる。

「はぁ!?」

「えっ!?」

 葵と奈緒は目を丸くするが、その感情は対照的であった。

「ちょ、ちょっと……」

「そうだったんだ……ボク、姫子ちゃんだったらいつでも大歓迎だよ」

 奈緒は姫子の頭を優しくなでると、一歩歩みでて葵をキッと睨んだ。

「ダメじゃないかアオくん!姫子ちゃんに意地悪しちゃ!!」

「意地悪って……」

「お兄ちゃんなんだから、もっと優しくしてあげなくちゃダメでしょ!?」

「……………………」

 葵は何も言い返せず閉口した。

 奈緒の後ろでは姫子がアカンベーをやっている。

 一瞬にして奈緒のハートをがっちり掴んでしまった姫子のしたたかさに、葵は舌を巻くしかなかった。

「悪かったよ……」

 葵は気まずそうに呟く。

「これからは気をつけるようにするよ」

「本当?」

「ああ、本当だ。でもよかったな。姫子が今日一日、奈緒のことお姉ちゃんって呼んでくれるみたいだから」

「えっ?」

「えっ!?」

 奈緒は瞳を輝かせながら姫子を見る。

「ホント?姫子ちゃん」

 思いがけない葵の反撃に姫子は表情を一瞬こわばらせるが、すぐに笑顔になった。

「う、うん……今日一日……よろしく、お姉……ちゃん」

「うん!!」

 奈緒はとても嬉しそうに頷いた。

「エヘヘ……ボクがお姉ちゃんか……なんだか恥ずかしいな……」

 そして表情をほころばせる。

「さ、あがってよ。何の変哲もない家だけど」

 そして奈緒は、二人を自分の家へと招きいれた。

「よかったな、姫子。望みがかなって」

「ええ。本当にそうねお兄ちゃん!!」

 葵と姫子は、視線をスパークさせながら紅林家へと入っていった。

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