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とある夏の日の青年たち

作者: 音楽屋

青年はなにやら気配を察し、その目を覚ました。

彼が毎日暮らしているいつもと変わらない薄暗い部屋。それはいつもと変わらなかったが、今日はなにか白く、もこもことしたなにかが部屋の中央に立っていた。

不審に思った彼が「それ」に話しかけようとした時


青年の意識は途切れた。


「だーかーら!本当なんだって!!!」今日何度目かわからない白い髪に黄色い眼を持つ青年、フラットの叫びに俺は思わず顔をしかめた。18歳にもなるのに声変わりのしていない男子の叫びほど耳障りなものはない。

「おーおーうるせぇなー。で、何があったんだよ?」黒縁メガネに黒い瞳と赤いメッシュの入った黒い髪。いかにもイケメン、という言葉が似合う青年がからかうようにフラットに尋ねた。「だからな!俺の部屋になんかもこもこーってしたやつが出てきておれにバッってとびかかってきてそれで俺はバーン!ってなって!!!!」「なんで一々擬音語が多いんだよ!」

あまりにもバカさが溢れ出すフラットの言葉に俺、雄輝は思わずつっこんでしまった。

「ははっ、相変わらず雄輝のツッコミは冴えてんな」「うるせぇぞ色真!」 その光景を見て盛大に吹き出したメガネの青年、色真はさっきまでのイケメンオーラをどこにやったのか腹が痙攣するほど笑っていた。いろいろ言いたいことがあるが、その言葉を飲み込んでフラットに向き合った。「んで、そいつはどうなったんだよ?」仕方なく尋ねる俺に対して待ってました!とばかりに目を輝かせるフラット。……こいつ相変わらずわっかりやすいなぁ…と少し呆れ気味の俺の視線にも気づかない鈍感なバカはこう言った。

「わかんない!!」


その後、この言葉に盛大にブチギレた俺によりフラットが殴られ、再び色真の腹筋が筋肉痛になりかけたことは言うまでもない。


「…で。」

「なんでお前の部屋に俺達が泊まることになってんだ?」俺たちはなぜか漫画やゲーム、フィギュアなどが乱雑していたフラットの部屋に集められた。集まった内容は昼と同じ話題なのだが少しだけ昼とは違うことがある。それは俺、フラット、色真のメンバーのなかに悪紀野(あきの)が加わったことだ。怖いものが大好きで、自らを死神と名乗っている悪紀野が加わっている時点で嫌な予感しかしない。それに、昼に「出る」と言われたこの部屋に集められてるのにも嫌な予感しかしない。ぶっちゃけ帰りたい。あの双子のお守りをしていたい。

「んじゃー、今からおばけをたおすぞ作戦をはじめるぜー!!」「いぇー!!」

マヌケそうな少年の声と、心地よいテノールの無邪気さの感じられない歓声が響き渡った。俺の想い人…茉奈架(まなか)がよく言っている「男ってバカね。」という言葉が今ならよくわかる。

 まぁ彼女のいう男にはきっと自分も含まれているのだろうが。

 そんな冷めきった俺の視線には気づかず嬉々としてフラット達は話題を進めていく。「まず、おばけってなにが苦手なんだ?」真顔で尋ねるフラットに色真は「んー、そーだなぁ…猫…じゃない?」と半笑いで返している。気づけ、フラット。そしてぷるぷると震えているそいつの腹を殴れ。「よし!わかった!じゃー猫とってくる!!いってきます!」俺の願いは届かずフラットは既に日が沈んだ外へ飛び出そうとしていた。なんだお前、お化けが怖いんじゃなかったのか。「てめぇがただ猫に会いたいだけだろ色真!!!てかフラットも簡単にこいつのこと信じんじゃねぇ!!この単細胞野郎!!俺も協力してやるから真面目に考えろ!色真、悪紀野!」「たんさ…いぼ…?ん?なんだそれ、びょうきのなまえ…?」そう呟いたフラットの声は聞こえなかったことにして、しぶしぶ俺はこいつらと共に「おばけを倒すぞ作戦」に加わることになった。


俺達が決めた作戦は「お化け」が来るのをフラットの部屋で隠れて待つというものだった。フラットはベッドにて寝ているふりをし、色真はベッドの下。悪紀野は押し入れの中に入り、俺はクローゼットの中に隠れる。「お化け」が現れたら各自様子を見て、なにやら「お化け」が行動を起こしたら確保、という感じだ。ちなみにこれを決めるのに小一時間ほどかかったため深夜0時からのスタートとなり、今は午前二時を回っている。一睡もしていない俺達はこうなりゃ意地でも「お化け」を見つける…!とヤケになっているのだが事の発端であるフラットはすやすやと寝息を立てている。今すぐにでも叩きおこしたいがあわよくば囮になる可能性があるため放って置いている。


そして、異変は起こった。


ガチャッとドアが開く音がしたのだ。もちろん、こんな時間にフラットの部屋に訪れるヤツなどいるはずがない。こっそりと入ってきた「何か」を盗み見ると、昼間フラットが言っていた通りもこもことした何かが部屋を歩き回っていた。

さきほど俺達が立てた仮説の中に、フラットの同居人ではないか?というものがあった。フラットはミュー、リズ、シャープ、レガート、ナチュラルの5人と同じ家に住んでいる。だが影を見る限りその5人では無さそうだ。そもそも、この汚い部屋に好んであの5人が入るわけない。つまり、俺が言いたいのは今この部屋に入ってきた「誰か」はここに住んでいない「誰か」である、ということだ。

 色真と悪紀野に合図を送る。そして作戦通り俺たちがもこもことしたなにかに奇襲をかけようとした時



 そのもこもこがベッドの下にいた色真を引きずり出した。「っ!?色真っ!!」俺と悪紀野は隠れていた場所から飛び出し、色真のもとへ駆け寄った。色真は、もこもこにより卍固めをかけられている。あわてて色真をもこもこから引き剥がすと、もこもこが驚いたような声でこう言った。「なんでここにピカ●ュウとあきのんがいるの!?」「だから俺はピカ●ュウじゃねぇって言ってんだろうが!!」思わずつっこんでしまったが俺は今幽霊につっこんだという恐ろしい局面にいるのだ。これはやばい。非常にヤバい。悪いな双子。もう二度とお前らのお守りをすることはできないな。せめて最後はお前らの作った飴を食べたかった。などという走馬灯がよぎった、その瞬間


 俺の頭に一つの疑問が浮かんだ。


”こいつなんで悪紀野の名前を知ってんだ…?”


 すると絡まっていた糸がほどけるように次々と謎が解けていく。なんだ、そういうことか。俺は確かな確信とともに恐ろしいぐらいの倦怠感を抱いた。俺たちはまたこいつの奇行に振り回されただけだったのか。あぁやっぱり家であの双子のおもりをしていればよかった。色真にプロレス技をかけ、俺たちを変なあだ名で呼び、もこもことしている奴はあいつしかいない。俺は大きく息を吸い込んでもこもこ「少女」にむけて怒鳴った。

 


「お前こそ何やってんだ!もな!!」


「いやぁ、まさかここにあんたたちがいるなんて思わなかったわよ」「だからって俺に卍固めをかけなくてもいいんじゃねぇの?」「いや、あんたがいるだけで猫臭いから嫌なのよ。卍固めかけられるのが嫌なら早く死ぬか身体中の皮剥ぎ取るかしてくんない?」「お前それどっちみち色真死ぬぞ。」ようやくもこもこ幽霊少女の正体がわかり、俺たちはその「幽霊少女」の正体であるもなとすることもないので話していた。外はもう深夜…というよりもう朝日が昇ってきている時間になっている。「で、なんでもなは俺の部屋にいたんだー?」先ほど俺に叩き起こされたため少し赤くなった頬をさすりながらフラットはもなに尋ねた。「ん?あぁ。それはあんたの服を取るたm「おい!悪紀野はフラットを守りながら後ろに下がれ!!色真はおとr…じゃねぇもなをひきつけろ!!おれは逃げるから!!」「ちょっと!?話を聞きなさいよ!!あ、ちょ、色真!!さわんな!!っ…!!ぶっ殺す!!!」


(その五分後)

 「で、今から話すわけだけど私がいい、っていうまでは話してる途中に口を出さない。いいわね?

「「「「はい。」」」」

 仁王立ちのもなのまえに俺たちは正座をさせられている。やはり人類最強ではないかと噂されているもなに太刀打ちすることはできなかった。きっともなは人間ではないのだと思う。ゴリラとライオンと羊のハーフなのかもしれない。「ほら、さっさと話すわよ。いいわね?雄輝。」「お、おう!」当の本人であるもなはもこもことした二つに束ねた髪をいじりながら話し始めた。

「それで…さっきの話の続きだけど、私はなっちゃんからの占いで青いTシャツがあればイケイケ羊の一番くじの一等賞…イケイケ羊のもこもこ☆びっぐクッションを当てれる、って言われたから少しフラットのTシャツを借りようと思ってこのきったない部屋に出入りしてました。ハイ終わり。このことについて何か質問はある?」「はいはいはいはーい!!」待っていましたとばかりにフラットが手を挙げた。いつものようなアホみたいな顔とは違い、真剣そのもの、という顔でもなに向き合っている「発言を許すわ、フラット」「は、はつげんってなn…じゃなくて!え、えっとありがとうございますた!?」落ち着けフラット、お前が唯一完璧に使える敬語まで危うくなってんぞ。ていうかいつも白い肌が白いを超えて青白くなって幽霊みてぇになってんぞ。そんなフラットに同情してか、なぜか悪紀野がフラットの手を握っていた。ふつう男どうしで手を握っている様子ははっきりいってとても気持ち悪いがなぜか今はとても神聖なものに見えた。ヤバいなこれ、俺めっちゃ疲れてる。早く寝ないと。



 しばらくしてようやく落ち着いた様子のフラットがもなに問いかけた。「なっちゃんってさ、ラルのことだろ?なんでラルが占いとかしてるんだ?」「え、あんた知らないの?なっちゃんの占いはよく当たるって評判なんだけど。今までいろんな人たちが占ってもらってるの。だからあたしも占ってもらったってわけ。」「だからってなんでこいつに直接貸してっていわなかったんだ?こいつなら簡単に貸すだろ。」「あんたねぇ…」とジト目でもながこちらを見た。「な、なんだよ。」あまりの迫力に思わず身じろぎしてしまった俺を見てもなはふっと鼻で笑い馬鹿にしたような笑みを浮かべた。なんだその顔。すっげぇ腹立つ。「あんた知らないの?自分の運気を上げるためには他人に手伝ってもらってはいけないのよ?だから私は自分で取りに来たってわけ。」その理論で行くとまずナチュラルに占ってもらっている時点でアウトじゃないか?もなは色真に向けてビシッと指をさした。「私は機嫌がいいわ。特別に今だけならあんたの質問も受け付けていいわよ?」妙に気取ったような言い方をしているということは本当に機嫌がいいのだろう。やはりこいつの思考回路はどこかおかしい。すると今まで黙っていた色真が少しの沈黙を経てようやく口を開いた。「とりあえずもなは青いTシャツを貸してもらいに来たんだろ?ならほら。これやるから自分の部屋に戻ったらいいんじゃねぇか?」色真がぽんっともなにフラットのTシャツを渡すと、もなはすっと真顔に戻ってこう言った。「あぁそうね。ありがと。じゃ、おやすみ。」


 もなが去り、呆然としている俺たちに向けて色真が苦笑いを浮かべこう呟いた。「じゃ、寝るか。」


 しばらくの沈黙が続いた後「「「そうだな」」」という全員一致の答えにより、俺たちの長い長い一日はようやく終わりを告げたのだった。



余談だがもなはそのあと一発で一等を引き当て、無事にイケイケ羊のもこもこ☆びっぐクッションを手に入れたらしい。

改めまして、こんにちは。この作品が二作目となりました。

タイトルには夏の日とか書いているのは書き始めた当初が夏だったからです。今はもう冬になり始めてるので相変わらずの遅筆だなぁ…と感じています。これからは投稿ペースを増やしていく予定ですが。

今回は初めて他のメンバーが制作したキャラクターも登場させ、なおかつ主役にしてみました。個人的に雄輝くん、悪紀野くん、色真くん、フラットのことを男子高校生組と呼んでいるのですがこの4人の組み合わせを広めたいというのもあり、このメンバーとなりました。

次回も意外な組み合わせで書いてみたいなぁと思っています。

ではでは、ここまでお付き合いありがとうございました。音楽屋先生の次回作にお期待ください。

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