逃亡
《???》
走る。
見渡す限り真っ白な世界を、方向も定めずにひたすら逃げ続ける。
背後からは、未だに雪煙と共に恐怖が追いかけてくる。
――いつまで、こうやって逃げていればいいんだろう。
仲間たちにはとっくの昔に置いて行かれてしまった。残っているのは、自分だけ。
自分だけが、この白い世界で、あの白い化け物からいつまでも逃げ続けなければいけない。
手に持ったナイフを握り込む。
拾った欠片を、木の塊に刺し込んだだけの簡易的な武器。けれど、あの化け物をどうにかできる道具は、これしかない。
目標は眼球だ。
巨体のため随分と高い位置にあるが、頑丈な甲殻を避けて確実にダメージを与えるには、あそこに投げ当てる以外の方法がない。
別に倒せなくていいのだ。奴の目を晦ませればそれでいい。
そして、最終的に自分が安全な場所まで逃げられれば。
足を止め、迫りくる化け物へと向き直る。
急いで呼吸を整え、心音が収まるのを待つ。まだか。早く収まれ。
化け物はもうすぐそこまで来ている。もう無理だ。やるしかない。
ナイフを振りかぶり、一投。
その切っ先は、目標の大きく下、化け物の肩の甲殻に突き刺さった。
もうダメだ。
化け物が腕を持ち上げる。
もう距離が詰まってしまった。武器も残っていない。また走り出す体力もない。
僕は絶望し、せめて自分の存在を世界に残すかのごとく、吠えた。
――助けて。誰か。




