絆桜
共通ルート終了!
その後音々達と合流し、無事に天照を月哀に送り届け、俺の仕事は終わったかの様に思えたが…。
夜って事もあって、音々達を家に送るという新しい仕事につかされた。
拓海「何で俺が…」
音々「あんた男でしょっ! 紳士なら家まで送るのが筋なのよ‼」
拓海「どこの世界だよ…」
音々「それに、可愛いくてか弱い私達が心配じゃないの⁉」
拓海「……」
月哀姉妹は確かに色んな意味で心配だが…こいつに限っては大丈夫な気がする。
音々「何か言いなさいよ⁉」
拓海「あー分かった分かった分かりました、僕は貴女達がこの上なく心配なのでご自宅までお供させてください」
音々「なに一人称変えてるのよ」
拓海「こまけーよっ!」
月夜見「……」
天照「……」
音々「あっ、ごめんね…私達だけで喋って…」
月夜見「いえ…」
天照「お二人は仲が宜しいのですね」
音々「そ、そんな事はないわよ…!」
そう言いながら、照れ隠しなのか俺の腕をぐうで殴る。
拓海「いたっ…」
月夜見「幼馴染とか?」
音々「ははは…ただの腐れ縁よ…‼」
バシバシッ‼
今度は肩を叩かれる…。
流石に俺の肩を事あるごとに無造作に叩く癖を、そろそろ治して欲しいんだが……俺の肩が機能するうちに…。
拓海「…速く行こう…」
これ以上体に傷が増えるのは好ましくないので、早足で俺はその場から逃走を試みる。
月夜見「あっ、待って!」
天照「お姉ちゃん…?」
音々「…行っちゃったね」
天照「人見知りのお姉ちゃんが、同い年の男の人を追いかける何って…」
音々「私達も行こっか? 天照ちゃん?」
天照「そうですね、天林先輩」
月夜見「最後までエスコートしなさいよ…」
拓海「はい?」
後ろから誰か付いて来てると振り返れば、俺を転入して初めての友達にした月哀さんじゃありませんか。
朝よりも活発に動いて、何か急に昨日みたいな口調に変わったし……夜行性なのか?
月夜見「途中で投げ出す何って、男じゃないわよ拓海」
拓海「……」
名前も呼び捨てだし。
月夜見「な、なに?」
拓海「いや…月哀さんって、二人じゃないと強気になれないのかな、って思って」
月夜見「っ‼」
うぉっ⁉ かなりショックを受けてる顔になった‼
月夜見「は……」
拓海「は?」
月夜見「はぁーはっはっはっはっはっ‼」
壊れたか⁉︎
月夜見「そ、そそんな訳ないじゃない⁉」
拓海「いや、だって…」
音々「ふぅ…やっと追いついた……大笑いしてたけど何かあった?」
月夜見「っ⁉」
天照「お姉ちゃん達…早い…です…」
そんな速く歩いたつもりはなかったが、二人は走って来たのか息を切らしていた。
月夜見「こ、これからは気をつけて下さいよ、八城夜君」
拓海「⁉」
拓海「は、はい……」
月哀はそれだけ言うと、音々達の方に寄って行った。
拓海「面白い人…」
初めに月哀姉妹を送る事になり、また例のブランコと桜しかない公園に行き着く。
まだ桜は散ってはいない。
拓海「この辺に家があるって、あの時言ってましたよね?」
月夜見「え、ええ…」
天照「お姉ちゃん、あの時って?」
月夜見「…赤月高校に入る前日、ここで八城夜君と出会ったの」
天照「それで…か…」
音々「……」
月夜見「なに? 天照?」
天照「ううん、何でもない」
拓海「あの時に描いてたデッサン、見せて下さいよ」
月夜見「…考えとく……」
音々「ねぇ拓海……あれ小鳥ちゃんじゃない?」
俺の肩を軽く叩いて、音々がブランコを指差す。
紛れもなく俺の妹が制服姿でブランコに乗っていた、それも一人で。
小鳥「……」
視線はやはり桜を見ている様で、俺達の存在には気づいてない様だ。
天照「い、行かなくて…良いのですか?」
恐る恐る男の俺に尋ねて来る。俺が行くべきなのか? 友達であるお前がいるじゃないか。
拓海「そうだな、一人じゃつまらないだろうし」
あえて状況に合わせる事にした。
なんで? 何って言ったら音々がうるさそうだからな…。
拓海「よっ、何してるんだ? こんな所で」
小鳥「おにぃちゃ……!」
小鳥「……」
小鳥「バカアニキ…」
拓海「……またか」
後ろから来てる三人の存在に気付いたのか、急に呼び方を変える妹。
天照「小鳥ちゃん…ここで何してたの?」
小鳥「…ちょっと桜が見たくなって」
ブランコから降りて、バッグを手に取りながらそれっぽい訳を話す。
音々「ここは隠れた名スポットだからね」
小鳥「お久しぶりです、天林先輩」
音々「先輩何って、子供の頃みたいに音々で良いわよ?」
小鳥「いえ、今は会長でもあらせられますし」
音々「分かった、好きにしなさい」
小鳥「はい!」
相変わらず愛想だけは良いな。それは何より貴重な長所なんだけど…。
小鳥「初めまして拓海の妹の八城夜小鳥と言います、以後お見知り置き下さい」
今度は月哀姉に向き直り、丁寧に頭を下げ自己紹介する妹。
月夜見「こ、ここちらこそ…天照の姉の…つ、月哀月夜見です!」
対して月哀は、初対面なのでかなり動揺していた。人見知りもここまで行けば才能だ。
小鳥「天照ちゃんのお姉さんにこんなに速く会える何って、私感激です」
ニコリと微笑み、月哀の緊張を解すような優しい声で妹は喋る。
どっちが年上か分からなくなるな。
月夜見「い、妹をこれからも宜しくお願いします…‼」
天照「ちょっとお姉ちゃん…!」
小鳥「はいっ、分かりました!」
間が空いたので、結果は見えてるけど俺も妹に声をかける。
拓海「挨拶はすんだか?」
小鳥「喋りかけないで」
拓海「おいおい、家の中だったら…」
バスッ‼
喋ってる途中とも限らず、いや…ワザとだな…。
妹はワザとバッグを振り回し俺の顔にぶつける。
拓海「っ!」
拓海「……何をする⁉」
小鳥「うるさいっ‼ ふんっ!」
……うん、今のは俺が迂闊だった。危うく妹が必死に隠そうとしていることを言いかけた訳だし…。
それにしても、だ……。
くぅ〜っ…! 口の中いてぇ〜……切ってないかな?
音々「喧嘩でもしてるの?」
拓海「うぉっ⁉」
突然音々が後ろから耳打ちしてくる。
拓海「いや……そういうんじゃないから、心配するな」
一瞬驚きはしたが、すぐに対応して小声で返す。
天照「小鳥ちゃん…拓海先輩が可哀想だよ…」
小鳥「別に良いのよ、このバカアニキは」
天照「でも……」
小鳥「いいの」
拓海「……」
全く不自由な奴だ……。
月夜見「こ、小鳥ちゃん…」
小鳥「何ですか? 先輩?」
月哀はカバンから一冊のノートと鉛筆を取り出していた。
月夜見「突然だけど…絵のモデルになって貰える?」
小鳥「急ですね、別に構いませんが?」
月夜見「じゃあまた、ブランコに乗ってくれる?」
小鳥「分かりました」
音々「へぇー、月哀さんって絵上手なんだ、良いなぁ〜」
月夜見「そんな事…ないよ」
恥ずかしそうにしているけど、満更でもない顔をしているな。
だから、俺はこう言ってみた。
拓海「十分に長所って言えるレベルだと思うけど?」
完成した作品見たことないけど、きっと上手だと思ったから。
月夜見「あ、ありがとう……っ」
あっ、顔がこの上なく赤くなった。
天照「お姉ちゃん、子供の頃よく私をモデルに描いてくれたよね」
月夜見「…うん」
小鳥「良いなぁ〜、そういう姉妹」
それは俺も同感だ、そういう事を俺は小鳥になに一つしてやれなかったからな。
天照「小鳥ちゃんには優しい拓海先輩がいるじゃない」
良い子だぁ〜‼ 今から天照の兄を自称してもいい気がする。
小鳥「……」
…うん…ノーコメント…。
…まぁ、想定の範囲だ…。
音々「拓海〜? もしかして嫌わられてる?」
拓海「かもな」
小鳥「……と……な…ぃ…」
月夜見「何か言った? 小鳥ちゃん?」
小鳥「べ、別に何でもありません‼」
デッサンが始まり、残された三人で天照の事も考慮し音々を中心にして会話する事になった。
音々「……もうすぐ…散るわね…」
風で揺れる桜の樹を眺めていると、自然と話題は桜となった。
拓海「そうだな、だから綺麗なんだろうけど」
天照「でも…悲しいです…」
拓海「ずっと咲いてない所がミソなんだよ」
音々「語るわね」
小鳥「キモい」
月夜見「……」
俺は言葉の暴力が嫌いです…。
天照「た、拓海先輩はロマンチストなんですね……」
拓海「フォローありがと…」
小鳥「こんな男にフォロー何って勿体無いわよ」
音々「ボロクソね…」
耐えるんだっ‼
男の心の防壁を…今こそっ‼
拓海「ど、どこの世界の妹も…大体こんなもんさ…」
小鳥「ふんっ…」
音々「小鳥ちゃん、何かやらしい事でもされたの?」
なんで嫌なフラグを立て様とするの⁉
いや! 俺は何もしてないぞ⁉
朝の事を言われたらー……反論は出来ないけどさ〜…。
小鳥「大丈夫です」
ふぅー…胸を撫で下ろす様な気持ちだぁ〜。
天照「あ、あの……拓海先輩に聞きたい事があるのですが…」
何だろう? いや天照ならきっと、心を破壊する様な事は言ってこないだろう、何だって話してやる!
拓海「何でもどうぞ?」
天照「い、今先輩は…その…………や、やっぱり良いですっ‼」
ええっ⁉ 超気になる〜っ‼
拓海「な、何でも答えるよ?」
天照「も、もう良いんです‼」
音々「小鳥ちゃんに続き天照ちゃんにも嫌われたわね」
うるさい‼ もっと言葉に服を着せろよ‼
拓海「うるせー」
音々「そんな事言って良いの〜? 私も離れて行くわよ?」
何なんだこいつ?
拓海「……好きにすれば?」
音々「……」
一瞬だったが、音々はどこか淋しそうな表情を浮かべた。
そんな答えなど予想していなかった…そんな顔だった。
音々「ふん、何マジに答えてんのよ!バッカじゃない⁉」
音々(私だけは…あんたから離れないわよ……ずっと…)
拓海「じゃあ聞くけど、何の意図があったんだよ逆に」
音々「あ、あんたには関係ない‼」
拓海「はいはい…そーですか」
天照「せ、先輩! わ、私は先輩を嫌ってませんから‼」
拓海「ははは……分かってる分かってる。無理しなくていいよ」
男性恐怖症の子にもこんなフォローさせる何って……流石の俺も少し残念だぞ。
その後、月哀のデッサンで小鳥は描けたそうだが、背景に時間がかかるらしく、途中で切り上げて帰る事になった。
月哀姉妹を送り届けてから、次に自称『か弱い女の子』である音々を家まで送った。100%のツンに耐えながら……。
そして俺と小鳥は、ようやく家路に着いた。
拓海「……疲れた…」
今日一日振り返ると……余計な目にしかあってない事に気付く。
初日の授業で保健室送りにされ…弁当はなおちゃん先生に食べられ…天照には分厚い本をぶつけられた………他に何かあったか?
まあいい、一つ言えることはろくな目にあってないと言う事だ…。
小鳥「お疲れ様……お兄ちゃん」
拓海「…やっと戻ったか…」
小鳥「ごめんね…いつも」
拓海「謝らなくていいさ……もう慣れた」
小鳥のさっきまで見せていた俺に対する態度は、言うならトラウマから来ているらしい。
何でも中学生の頃、友達にお兄ちゃんっ子をバカにされたのが原因らしい。それで他人の見てる所では俺に冷たく当たるようになったらしい。
初めてされた時は、本当に心がすり減った…。
小鳥「ありがとう…お兄ちゃん…」
小鳥「あ、あの……これっ…!」
両手で可愛い動物柄のバンドエイドを小鳥は差し出して来た。
小鳥「さっき私のバックで唇切ったでしょ? だから…」
拓海「ありがとう小鳥」
頭を撫でながらそのバンドエイドを受け取る。
小鳥「うんっ!」
久々にちゃんと名前で呼んだからか、それとも頭を撫でられたからか、小鳥は嬉しそうだ。
小鳥がせっかく気を遣ってくれたんだし、早速バンドエイドを唇に貼っておくか。
今もヒリヒリして痛かったのだ…。
そしてまた俺達は家路につく。
小鳥「お兄ちゃん……」
歩くのをやめていたのか、小鳥の声が後ろから聞こえて振り返る。
拓海「何だ? もう遅いし急ごうぜ?」
小鳥「…うん…」
拓海「疲れたのか? 昔みたいにおんぶしてやろうか?」
勿論冗談であり、俺はシスコンじゃないぞ‼
小鳥「バーカ…一人で歩けます‼」
恥ずかしがりながら早歩きで小鳥は俺を抜かす。
抜かす際、小鳥は何かを呟いた。
小鳥「嫌いにならないでね…」
拓海「えっ?」
小鳥「ほら置いて行くよ? お兄ちゃん」
笑顔で小鳥は走り出して行く。
拓海「おい‼」
しょうがなく俺も走り出す。
やれやれ…。
拓海「…そう言えば……ハンカチ返しそびれてた…ってか完全に忘れていた…」
小鳥を追いかけながら、改めてハンカチを月哀に返すことを俺は頭に焼き付けるのだった。
数奇な巡り合わせで俺と繋がった四人の女性達。
その出会いの中心には、いつも桜があった気がする。
必然か偶然か……想いが共鳴した結果なのか…。
だが所詮この世界はリセット、ロードが効かない世界……だから常に頭を回して最善を探し求めないといけない……。
桜が散るのを待ってくれない様に…人の想いもまた…待ってなどくれない…どれだけ辛く…叫んでも…。
桜の様に綺麗に舞うことは…ない…。
これより俺が語るのは、この四人に基づく物語。
楽しくも辛い……俺の記憶の1ページ。
序章 完
上条です。
今回で序章が終わりと言う事で、ギャルゲーに例えるなら共通ルート終了です!
と言ってもこの後はまだ考え中です……すいません…。
だから他の作品がちょくちょく出て来ると思うので、良かったらそっちも読んでみて下さい。
それではさよなら。