二度目の出会い
運命? いえ、偶然です。
翌日の朝。
春にも関わらず相変わらず朝は寒い…包まった毛布から身を出す何って一種の苦行である…。
女の声「……て……」
女の声「…おきて…」
ん? 誰だ…俺は昼まで寝たいんだ…。
女の声「……」
諦めたか?
………。
……。
…。
ダッダッダッ、と床をならす音が近くなってきて……?
女の声「えいっ」
ドスッ!
?「ぐはっ…!…」
女の声「起きた? 拓海お兄ちゃん?」
目を薄っすら開けながら状況を推理する。
妹が俺の腹部に勢いよくお尻からのしかかってきたようだ…。
朝から酒も飲んでないのに吐き気が……うぷっ…。
俺こと八城夜拓海の朝は、いつもこうやって始まる。
拓海「……い、いもうと……次からはもう少し違う起こし方を検討してくれまいか?」
小鳥「お兄ちゃんもいい加減、妹って呼ぶのやめてくれません? 私には小鳥ってお母様から頂いた名前があるのです」
拓海「気に入ってるからやだ」
小鳥「なら私もやめません」
くっ、流石同じ血を引くだけある……この妹だけには一生頭が上がる気がしないな…我が妹ながら大した奴だよ…。
拓海「というか、そろそろそのお若いお尻をのけて頂けないだろうか?」
一応上半身を起こして妹の胸部の高さにちょうど顔が上がる。
小鳥「変な目でみないでよ」
拓海「思い上がるなよ妹よ、いくらお前が花の高校一年生でも、妹のこの膨らみある胸を揉みたいなど決して思ってないぞ、ああ! 思うわけないとも‼」
小鳥「………」
小鳥はゆっくり俺の身から離れ、部屋の外に歩き出す。
小鳥「バカ…」
拓海「ん?」
拓海「いってきまーす」
玄関のドアを開け、視界に太陽の光が指す。
小鳥は先に行ったようだ。
拓海「薄情な奴め、兄を置いて行くとは何事だー」
無気力に思ってもいないことを独り言する。
高校二年の春、一年生の入学式も終わり、二年になった俺達は今日はクラス替えの発表ってところか。
まさか小鳥も同じ高校に通うなんって想像もしていなかった。
拓海「ふあぁ〜…」
あんな起こされ方をされたのに、睡魔はまだ俺を眠りに誘おうと言うのか⁉
拓海「早く行って保健室で寝よ…」
まぁ…当然保健室まで保つ訳もなく…。
俺は電車内であえなく眠りについた。
友人「おい拓海着いたぞ? 起きろ」
拓海「……俺を起こすなら…妹をもってこ〜い…」
友人「ダメだこいつ……置いて行くか」
拓海「……」
………。
……。
…。
?「もしもーし」
拓海「んっ…」
駅員「降りてください」
拓海「……?」
拓海「………」
駅員「?」
おっと頭が追いつかないぞ?
えーっと…この感じだと…友人に見捨てられた?
拓海「はっ‼」
駅員「シラフになりました?」
拓海「すいません‼」
駅員「その制服は赤月高校ですね…だったらもうすぐ、3番乗り場から電車が出るので急いで下さい」
拓海「あ、ありがとうございますっ‼ ではっ‼」
駅員「忙しい人だ…」
高校の最寄り駅に着いた頃には8時30分だった…とっくに希望なんか無かった。
拓海「おいっ小次郎‼ なに置いて行ってんだよ⁉」
俺はHR中だと分かりながらも、置いて行った張本人の白宮小次郎に電話をした。拒否しないだけ良い奴だとは思う。
小次郎『だってお前、俺を起こすなら妹をもってこいって言うんだから、置いて行くしかねーじゃねぇか』
拓海「言うか‼ んなこと‼」
小次郎『寝言かもしれないが、俺には心の叫びかと思って』
拓海「絶対寝言だよそれ‼」
小次郎『と言うわけで、悩みに悩んだ俺はお前を置いて行くことにした』
拓海「なぜそうなる⁉ 本当に悩んだのかよ⁉」
小次郎『勿論だ、言い掛かりはよろしくないぞ? ちゃんと3秒考えた』
拓海「さ、3秒⁉」
小次郎『あー電波が悪い〜オマケに充電がきれ……』
ツー……。
あの野郎っ…!
見え見えな大根芝居披露しやがってっ…!
拓海「はぁー…」
クラス聞いときゃ良かった…。
疲れを感じながらも俺は高校の通学路を歩く事にした。
あー…昨日帰ったの1時回ってたんだぞ…。
なのに妹のヒップドロップを朝にくらう……我々の業界ではご褒美です……なんってとても言えないぞ…。
拓海「そういえば内の高校って美術部あったけ?」
ふと昨日の事が脳裏に蘇る。
拓海「ハンカチ返せるかな? また会える気がするって漠然としたこと言ってたけど…」
一応カバンの中にハンカチはいれてある。学校に着いてれば、転入生の噂が聞けたのかもしれないな…。
拓海「同じ高校なんってそんな偶然ないない…アホらしいアホらしい」
拓海「そんなのアニメやゲームの世界だっての」
でもあのデッサン…やっぱり気になる。
拓海「ふいー生徒指導うるさかった〜俺を誰だと思っている? 生徒会の雑用係と言われる総務だぞ」
拓海「……」
……だからこその叱責か…。
生徒の模範となる者が何事か‼ って、あーくだらね。
さて、そんな事より俺の新しいクラスに向かわなければ。
拓海「ん?」
俺の教室になるドアの前で、長く綺麗な髪をしている女子が立っている。
あれは……。
髪の長い女「……貴方は…」
足音に気付いた彼女は少し怯えた様な眼差しで俺を見つめた。
拓海「デッサンの人…ですよね…?」
限りなく控えめに聞く。
髪の長い女「冗談の通じない人?」
どちらも名前を知らないぶん呼称が酷い…。
拓海「同じ高校になるとは思いませんでしたよ」
髪の長い女「キミのクラスはここなの?」
拓海「そうだけど」
髪の長い女「私もなの…」
拓海「はぁ…」
何故か少しホッとした様な表情に彼女はなった。
髪の長い女「……」
拓海「……」
……気まずい…昨日みたいな彼女の余裕はどうしたというのだ。転入初日だから緊張しているのか? だとしたら敬語を続けるんじゃなかったな。
だけど今さら気安く喋るべきなのか? んー頭が働かん…。
拓海「と、とりあえず入りましょうよ」
髪の長い女「先生は呼ばれてから入るように言ったんだけど?」
拓海「そんなもんほっといて、さぁ」
ドアに手をかけ、自然と彼女に手を差しのばした。
髪の長い女「貴方の…名前、私まだ聞いてない」
伸ばされた手をゆっくりと掴もうとしながら、顔を赤くして俺の名前を聞いてくる。
自分から友達作るの下手なのか? 気軽に昨日は話せたのに。
拓海「八城夜拓海です、貴女は?」
友達作り、いや、学校に慣れるのを手伝うのも悪くないかな?
月夜見「私は月哀月夜見」
夏も熱くなり鼻血に悩まされる上条です。
暑いと何もやる気が起きないですよね…。
小説? の執筆にもやる気が出なくなる嫌な季節です(汗)
アニメのサウンドトラックでも聞きながらポテンシャル上げていこうと思います。
それでは皆さん暑さにお気をつけて下さい。