事後処理
「よう、首尾はどうだった? 説得したんだろ」
クリスの問いに、タクムはニタリとした笑みを浮かべた。
「成功とも失敗とも言えん。半々といったところだな」
後ろには半裸に剥かれた美少女が居た。断ち切れた紐、うす緑色の患者服からは薄っすらと血が滲んでいた。
サファイアブルーの瞳は虚ろに揺らいでおり、今にも泣き出しそうな、しかし何の感情も浮かんでいない、そんな不可思議な表情を浮かべている。
ニーアの姿を見れば十人が十人は何があったか想像するであろう。そして少女に同情するであろう。
「少しやりすぎた」
「お前……最低だな」
砂だらけの素足がとみに痛々しい。クリスは強面に似合わず、子供に優しい。二児の親であり、特に長女のほうを溺愛しているらしい。
年端もいかない――とは言えないまでも、うら若い女性であるニーアへの暴行は心情的には許せるものではない。
「勘違いするな。俺はアイ以外に興味ない」
タクムのどこか遠い――少女のことなど全く眼中にない様子に、嘘は言っていないのだろうとクリスは少し安心する。
タクムは何かした訳ではない。目の前で事務官を惨殺され、ちょっと反抗的な目をしてきたので殺気を飛ばしてやっただけだ。
そうしたら意識が飛んでしまったのだ。一応、知識だけは残っているので事務官として雑用をさせるくらいなら出来るだろう。
タクムは彼女の能力だけは買っていた。しかし、獅子身中の虫を飼うつもりはない。だから手っ取り早くスキルを発動させて精神汚染で頭の中を弄くってやったのだ。
使える頭さえ残っていればいい。事務処理をきちんと確実にこなせるだけで十分だ。タクムの行動をフォロー出来るブレーンも欲しかったのだが、今とはなってはもう必要ない。
――なにせ、もうすぐアイと再会出来るんだからな。
タクムにニコリと歳相応の笑みを浮かべた。タクムの頭脳はやはり、アイ以外には有り得ないのだ。多少、見目が良くて頭が回る程度の女なぞどうでもいい。今となっては何の価値もない。
「適当に変装させて組織に組み込んでおけ。事務官としてな」
「おう……。じゃあ、来な、お譲ちゃん」
こくりと頷く、ニーア。時折、少女のほうを振り返り労わるような仕草するのはさすがに年頃の娘を持つ、父親といったところか。
「ベジー、状況は」
「市街地は八割方、制圧完了。主要な軍事施設は全て抑えた。今、南門を内側から攻めている」
「さすがベジーだ! そうか、ついに来たな。俺も行って来る!!」
タクムは言うが早いか、バギーに乗り込み、アクセルを吹かし始めるのだった。




