ライム、人生を振り返る
不意打ち気味に更新です。
バックファイアってやつですな。
ここまでお付き合いいただいている皆様へ質問なのですが、
戦争編をちゃっちゃと切り上げて、
終章行くのってどう思いますか?
気が付けば真っ白な世界にいた。
――ああ、あたし、死んだんだ。
とはいえ、これは二度目の経験。ライムは割とすんなりと現状を理解した。
前回はアイドルのオーディション帰りに酒気帯び運転のトラックに轢かれたのだ。まったく困ったものである。いずれ芸能界を牛耳る(予定)の前途有望なアイドル候補生を轢き殺すだなんて。人類の希望が危うく費えるところではないか。
トラック転生なんて物語の中だけの話だと思っていたが、事実、異世界で生まれ変わったのだからどうしようもない。異世界No1アイドルとしてお茶の間を席巻出来たのだから二度目の人生は中々上出来であったろう。
――まあ、死に方は最悪だったけど――
パニックを起こして仲間を攻撃して、もう一人の仲間から雌豚!雌豚!と罵られながら殴殺される。
惨めすぎる結末であった。
自業自得である。罪の無い一般市民が殺されたわけでもない。戦争なんだから、戦場にいるのだから殺す殺されるは当たり前。そのくらいの覚悟はあったはずだ。
ライムにだってそのくらいの分別はあった。ただ――ただ、人が嘲笑と共に虐殺されるシーンを見て頭がおかしくなってしまっただけである。
この考えなしの性格がもうちょっとどうにかなれば殺されずに済んだはずなのに、とライムは思う。
そもそも、あのタクム――<殲滅者>が動き出したのだからこのぐらいは予想してしかるべきだった。
彼は目的のためなら何でもする男である。しかもこの世界をゲームだと思い込んでいるところがあり、人殺しをガンシューティングの要領で平然とこなす気狂いだ。
前情報として分かっていたのだから、虐殺シーンで目を瞑りなり、通信を切るなりすれば良かっただけである。
――そいえばアタシ、人に流されてばかりだったなぁ。
他人に判断を委ねてばかりであった。この世界に来て、ライムが犯した唯一の間違いはそれであったろう。
これまでは持ち前の悪運のおかげで致命的な自体にはならなかったが、最後の間違いはひどかった。殺されたって仕方がない。
それにしてもパニックを起こすタイミングが悪すぎた。
奴――スローターは誰にも止められないほどの戦闘能力を持っており、そしてその気狂いに心酔するキチガイが多数居た。
もう少し状況が違っていればこうならずに済んだはずだ。それも誤まりであった。
――あれ、二つじゃない?
まあ、いいわよね、細かいことは。
「……ライムちゃんって、相変わらず大物だよね」
もうちょっとアイドルしてたかったな――。
二度目の人生を振り返れば後悔ばかりが先に立つ。
他人に流されてばかりではないか。
マネージャーと出会い、彼に導かれてアイドルになった。地球――アイドル先進国である日本の文化を彼に教えたところ、何を考えたのかサムライ、ニンジャとか言い出して、異世界チートを利用したド派手なプロモーションビデオを撮影させられたのである。
――歌って踊って戦えるってなによ!
「あの、ライム……ちゃん?」
そんな路線で人気が出たものだから、PVはどんどんと過激――露出系とは無縁だが――になり、最終的にはプロの拳闘士と闘技場で殴りあったり、戦車に乗ってパンツァーフォーしたり、全身装甲服(ヘルメット付き)で生体兵器の群れに突っ込んだり、終いには暗殺者ギルドに登録までさせられてしまった。
――アイドルに命賭けてますってほんとに賭けさせるって正気なの!?
死ぬような目に遭ったにも関わらず、人気は徐々に低迷していった。
怒り心頭のライムはその場で地団駄を踏んだ。先に立っていたはずの後悔は、遥か地平線の彼方にまで吹き飛んでいた。
――アタシだって普通にアイドルしたかったわよ!!
パワドルってバッカじゃないの!?
「ねえ、聞いてる?」
金が欲しい、ちやほやされたい、街を歩けば人々が握手を求め、意味も無いのに付いてきて知らぬ間に大名行列、そんな存在になりたかっただけなのだ。
そもそもアイドルになりたかったのは金銭欲と自己顕示欲を満たしたかっただけなのだ。
誰も無視できない存在、誰もが憧れる、あるいは嫉妬を覚える偶像になりたかっただけなのだ。
――いいじゃない、アタシだって幸せになりたいのよ!
目指しちゃ悪いの!?
欲望丸出しじゃいけないのッ?
だって頑張りたいじゃないッ!
幸せになりたいじゃない!!
たった一度の人生だもの――!!
「ちょと……」
――そもそも、あんな男の口車に乗ったからこんなことになったんだ。
「お願いだから、聞いて……」
――そもそもアタシがアイドルの座を転げ落ちたのもアンタのせいじゃない!
「どうしよう……ボク、こんなに話を聞かない人、初めてだよ……」
――タクムめ、タクムめ! ウサギちゃんみたいな目ぇしやがって!!
「って、マスターの悪口言わないで!!」
――え、誰?




