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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スクラップ
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補給路潰し

 司令室にはそそくさとライブへと繰り出した欠員一名を除いた、幹部級が一同に介していた。大きなテーブルを囲って上座にはガンマ義勇軍には総司令であるタクムが座り、その左右を情報部局長を務めるベジー、一般兵科の指揮を任されたクリスが固める。


 残る幹部席は三つ。いずれも第一、第二、第三中隊長である。いずれも甲種開拓者の資格を持ち、大規模兵団クランの首領であり、国内トップクラスの戦闘能力の持ち主だ。


「で、何だ、その話ってのは?」

 タクムは椅子の上に足を乗せた状態で尋ねる。幹部三人はその横柄な態度に顔を顰めたが、これは同盟を結ぶ会合の時からなので今更指摘するような輩はいない。


「ああ、最近、司令んトコの部隊が派手にやってるって聞いてな」

 まずはミッツ・ガルド第二中隊長が口を開いた。色白で神経質そうな顔立ちをした男である。歳は四十前といったところか。優秀な偵察兵や工作兵を多く有することで知られる兵団<ジャッカル>首領であり、情報収集力は情報局長であるベジーにも劣らない。下調べは済んでいるといいたいのだろう。


「派手にやってるとは? 俺達は情報の分析やら戦略の作成やらであまり任務はこなしてないが?」

 タクムの発言は一応、事実ではあった。現在、司令部付きのスローター本隊は、支援活動や情報収集、メディア戦略、作戦指揮を取るのに注力しており、他部隊と比べると消化した戦闘任務の数は半分にも満たない。


「ハッ、身内同士で腹の探り合いはなしにしようや。しゃらくせえ。アンタが独占してる輜重隊への襲撃、俺達も噛ませろや」

 タクムの煮え切らない回答に、ローグ・カルーセル第三中隊長が声を荒げた。赤毛を逆立てた筋肉質な男だ。


 最新式でこそないものの、戦車や自走砲など高火力な戦闘車輌を一〇輌も有する大兵団<パイルバンカー>の首領である。幹部級の中では現在二八歳とタクム、ライムに続いて若い。


 成り上がり、今なお上を目指す上昇志向の強さ故か、その瞳は飢えた狼のようにぎらついている。しかし、あまり賢い人物とは言えないだろう。野心を隠そうとせず、ガンマ義勇軍総司令であるタクムに何かと突っかかってくる面倒な人物だ。


「そういうことだ。スローターにクリスのところだけでは、さすがに全ての補給路には手が回るまい」

 締めくくるように言ったのが第一中隊長であるヘクトール・ランバー。二メートルを超えた巨躯を誇る偉丈夫で、常に眉間に皺がよった巌のような男である。


 開戦当時、車輌数、兵員共に都市国家群最大を誇った大兵団<トールハンマー>の首領を務める大人物である。もしもタクムがご老公カフカとの知己を得なければ義勇軍の総司令は彼であったろうと誰もが口にするほどの男だ。


 クリスの取り成しがなければ正規軍のほうに左官待遇で引き抜かれていただろうことは確実で、彼を取り込むことに成功したことにより、義勇軍は軍としての体制を為すことに成功したと言っても過言ではない。


 当時というのはタクムが保有する<鉄屑兵団>に国内最大の地位を奪われてしまっているからだ。クリス主導で開催された有力部隊の首領達との会合の際にはこの倍は居たのだが、彼らはタクムの横柄な態度に文句を付け、タクムは彼らを挑発することによって戦闘状態に移行、首領共を半殺しにすることで<鉄屑兵団>隷下の部隊として吸収することに成功している。


「で、どうなんだ、総司令。当然、俺達も混ぜてくれるんだろう?」

 ローグが半ば脅すように尋ねてくる。


 補給部隊の襲撃は現在、タクムの私設部隊である<鉄屑ジャンク部隊>が独占している状態だ。表向きの理由はソフィスト軍の主力戦車であるT-64やT-55を保有し、内部事情に詳しい元ソフィスト戦車兵がいることから、敵の懐に入り込むことが容易だからである。


 ヘクトールの言う通り、<鉄屑部隊>は規模が小さいことから補給路の全てを潰していくことは困難であった。小隊規模の部隊を分割することで何とかやりくりしていたが、このままでは疲労で倒れてしまう可能性が高い。


 ジャンク部隊は皆、重度の精神汚染者で構成されており、タクムの命令とあらば自爆攻撃すら厭わないような連中だ。どれだけ疲労が溜まっていたとしてもそれを口にすることは絶対にしない。しかし、それは自らを省みない行為であり、命を削るに近い。


 度重なる襲撃により、ソフィスト側も補給の重要性に気が付いたようで、最近では補給部隊に護衛が付けられるようになっていた。中々敵を油断させることが難しい状態になりつつある。


 護衛が付くようになってからは<獅子心王>の予備兵力を借りることで対応しているが、いずれ消耗していくだろう。虎の子である特殊部隊をこんなところで使い潰すわけにはいかない。彼らの提案はタクムとしても願ったり叶ったりなのであった。


「言いたいことは分かった。しかし、今は俺達だけで十分に回っている。そもそもアンタ等は、補給路潰しに否定的だったろう?」

 しかし、タクムは簡単に頷くことは出来ない。普通の軍隊とは異なり、義勇軍は単なる戦闘技能者の寄り合い所帯だ。少しでも弱みを見せれば嵩にかかって責めてくる。


 タクムが当初、補給部隊襲撃の協力依頼をした際、彼等三人は別の任務を優先するからと断った過去がある。これは補給の重要性を認識していなかったことと、補給物資を丸々奪えるとは考えていなかったからに他ならない。


 それが蓋を開けてみれば、敵軍は大慌てで補給部隊に護衛を付けて戦力を分散し始め、倉庫には大量の支援物資が溜まっていく――奪った物資は司令部が相場価格で買い取ることになっている――状況を見て居ても立ってもいられなくなったのだろう。借り受けた<獅子心王>の予備兵力を通じて、クリスには相応の報酬が支払われている。


「そこをなんとか頼」

「我々からも頼む。利益は全員で共有すべきだろう」

「つーか、そのための同盟だろうよ」

 三隊長が頼み込んで来たところで、タクムはわざとらしく肩を竦めた。


「貸しだぞ……ベジー、発行してくれ」

「承知した」

 ベジーが端末を操作し、任務書を発行する。


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ミッションID:B03-01

表題:敵補給部隊の殲滅


ガンマへと物資を輸送する敵部隊並びに護衛部隊を殲滅すること。

作戦期間は任務受諾から二週間。任務に関連する情報については別途、作戦本部にて提供する。


戦功ポイント:5000~

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ミッションID:B03-02

表題:敵補給物資の強奪


ガンマへと物資を輸送する敵部隊から支援物資を強奪あるいは破壊すること。

作戦期間は任務受諾から二週間。任務に関連する情報については別途、作戦本部にて提供する。


戦功ポイント:5000~

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「敵の補給路は、主にこの三つが使われている」

 タクムは言いながらガンマからソフィスト国境の<トゥーリ>の街へと繋がる街道を指し示す。これ以外のルートとなると車線が狭く、また生体兵器の生息域に近い関係で、大型トラックなどの輸送車輌を使えないのである。


「二週間で10000ポイントか。少し報酬が低すぎやしないか?」

 通常、長期任務ともなればこの十倍は支払われてもおかしくはない。1ポイント5ドル程度の価値となるよう価格を調整しているため、500万円程度の報酬しか支払われないことになる。補給路潰しのような重要な任務にこの額は少なすぎるというわけである。


「たかが補給部隊の殲滅だぞ? 今までの襲撃では護衛部隊もせいぜいが分隊規模しかいなかった。物資の買取を考えれば美味しい任務だと思うがね。ま、嫌なら蹴ってくれて一向に構わんぞ。穴は俺とクリスでカバーする」

 そう言われてしまえば彼らに拒否権などあろうはずもない。タクム達は過去数度の出撃で数千万ドルという巨額の報酬を得ているのだ。自ら言い出した関係上、強く言い張ることも出来ない。どんな世界でも業突く張りは嫌われる。大兵団の首領ともなれば風聞も気にしなければならない。


「言っておくが、物資は絶対にガンマに届かないようにしてくれ。奪えなければ必ず破壊してくれ。もしも取り逃がしたら相応の違約金を払ってもらうぞ。ニコニコ現金払いでな」

「了解した」

「已むを得んな」

「ッチ、わーったよ、それで受諾してやる」

 三者三様の反応を返して中隊長達は司令部を後にした。


「ベジー、定刻だ。戦力分布を最新状態に反映してくれ」

 ベジーは黙って頷くと、テーブル中央の地図模型に敵戦力を現すピンの位置を入れ替え始めた。戦車を示す赤いピンや、小隊規模の戦力を現す黄色のピンが次々にその国境付近の街道に移動していくことが分かる。


 それが指し示す意味は、言うまでもなく護衛部隊の増強であろう。恐らく敵部隊は戦車小隊や一線級の部隊を用いて確実に補給路を確保してくるのだろう。その隙を付いて物資を強奪することなど不可能に近い。護衛諸共、物資を破壊するのが関の山だ。無論、それを成功させるには自部隊に多大な消耗を強いることになる。


「お前さん、ホント、悪りぃ奴だわな」

「今更気付いたのか? 俺は生粋の悪党だぞ?」

 タクムが嗤い、クリスは獰猛な笑みを浮かべる光景を、ベジーは微笑ましげに見つめるのだった。


以下、どうでもいい設定集


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ガンマ義勇軍編成


司令部兼支援部隊

 戦車0輌     歩兵100名

 非戦闘員で構成され、掃除や料理、車輌や銃器の整備

 などの福利厚生及び

 戦略の決定や情報分析、広報活動などを行う。


本隊(代理指揮官クリス)

 戦車/自走砲10輌 歩兵150名

 <獅子心王>を中心に構成

 歩兵も完全機械化されており、独立した作戦行動が可能


ヘクトール中隊

 戦車/自走砲10輌 歩兵100名

 <トールハンマー>のみで構成

 歩兵も完全機械化されており、独立した作戦行動が可能


ミッツ中隊

 戦車/自走砲0輌  歩兵100名

 歩兵のほとんどは偵察兵や工兵で構成

 戦車はないがマイクロ戦車など工作・偵察車輌を多数保有


カルーセル中隊

 戦車/自走砲15輌 人員80名

 旧式戦車や自走砲による戦車部隊

 高火力による殲滅戦を主とする


ジャンク部隊

 戦車/自走砲6輌  人員30名

 最新戦車や上位兵種など選抜された兵士でのみ編成された特殊部隊

 主に潜入活動や破壊工作などの特殊任務を担う。


ライム音楽隊

 戦車/自走砲0輌  人員10名

 ライムと親衛隊など選抜された有志でのみ編成された特殊部隊

 主にライブ活動やサイン会などの特殊任務を担う。

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