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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スタート
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ガンマの街へ

 ローラン達の目的地は<ガンマ>という前線都市らしい。前線というのは、ボスモンスターの攻略されていない地方にあるの一歩手前、いわば国境に位置する地方のことを言い、多くの生体兵器が潜んでいるため治安はあまりよろしくない。


 しかし、生体兵器達から取れる素材や未知の鉱物資源、あるいは旧文明のロストテクノロジーは、この世界においてなくてはならないものらしく、一攫千金を夢見て多くの者が訪れるのだという。


 当初の目的地である<アルファ>の町は、農場プラントが多く存在する一大生産地だ。あまり面白みのあるところではないそうなので、タクムとしても目的地変更に否やはない。


 ちなみにローランは、<アルファ>で生産された食料を仕入れ、前線都市である<ガンマ>へと運んで売ることで生計を立てる行商人だ。

 ガンマに集められた大量の糧食は更に前線、<国境>を超えた策源地へと運ばれていく。


 行商というと馬に荷台を引かせてのんびりと町から町へと渡る、みたいなのどかなイメージがあるが、それはアルファ達のそれは全く異なる。個人の運送業に近い。

 乗り込む貨物自動車トレーラは全長20メートル、全幅は6メートルもあり、一度に30トン以上の荷を運ぶことが出来るそうだ。日本でよく見る大型トラックは6トンから7トン程度の積載量しかないことを考えればその化け物っぷりがよく分かるだろう。ちなみに一般的なワゴン車は全長4.5メートル、全幅は2メートル弱である。公道はまず走れない。


「アイ、到着予定時刻は?」

 携帯電話を取り出し、声を掛ける。するとディスプレイが移り変わり、通話状態になった。

『うん、トラブルがなければ今日の夜明け前には着くんじゃないかな』

 自称高度な人工知能(AI)から返答がくる。


「野営か」

『いいや、多分、そういうことはしないね。さっきの盗賊騒ぎで大分、時間をロスしたから多少のリスクは承知の上で急ぐんじゃないかな。そもそもそういうつもりがあるから、マスターに護衛の依頼をかけたんだよ』

「俺への依頼?」

『そう。拳銃で30メートル先のあたまを撃ち抜くなんて、相当な凄腕じゃなければ出来ないことだよ。しかも飛び交う銃弾をガンガン躱して……マスターさえいれば魔物の群れくらいちょちょいのちょいだと思われたんだろうね』

 それは完全に予測線のおかげで、勘違いも甚だしいくらいの高評価であったが、そのおかげで相場より高い報酬が得られるのだから文句はない。


『早速だけど、マスター。出番だよ』

「出番?」

『うん、ここから三時の方向に生体兵器の群れを発見したよ。距離は600メートル。相手はこちらに気付いていないけど、このままならまず間違いなく発見される』

 草木も生えない荒野である、全長20メートルの化け物トラックなぞ容易く発見されるに違いない。


 タクムは銃座の脇についた無線機を取り出し、運転席へ報告をした。


『タクムさん、そこから狙撃は可能ですか?』

「……やってみます」

 銃座にはタクムより他にいない。雇い上げた護衛に今、狙撃適正のある者はおらず(いるにはいたが、前回の戦闘で死亡している)、類稀なる射撃能力を持つ(ように見えた)彼に銃座を任せるのは当然の帰結であったらしい。


「アイ、どうしよう……俺、狙撃なんてしたことねえ」

『じゃあ、ボクが誘導するね。申し訳ないんだけど、カメラのところを照準器の所に固定してくれないかな』

 タクムはブローニングM2に据付けられた望遠鏡のような照準器テレスコピックサイトにスマートフォンを紐で括りつけた。ちなみに紐はジャージの裾を縛るそれを使った。


 ディスプレイにスコープの映像が拡大表示される。拡大された荒野に十字の線が見える。


『じゃあ、調整するね。照準を敵のところに合わせてくれるかな。敵の姿を捉えたら引き金を弾いて、試し撃ちしてみて』

 タクムは機銃を動かし、アイに誘導されたとおりに銃口を生体兵器に向けた。ディスプレイに写る敵は、茶色の表皮を持った犬と蜥蜴の合いの子のような生物に向けた。


-------------------------------------

リザードッグ

犬のような形状をした生体兵器。近接戦闘では爪や牙を用い、遠距離では口内に備えた銃口から生体散弾を放ってくる。また爬虫類のような硬い表皮を持っており、F級程度の防弾性能を持つ。

脅威度こそ低いが、移動速度は最高で時速100キロ、小型で小回りも効くため倒しにくいことで有名。またある程度の社会性を備えており、連携攻撃を行ってくるため、かなり厄介な生体兵器である。


脅威度:D-

生命力:F

近/中/遠攻撃力:E/F/-

装甲:F

俊敏性:C+

-------------------------------------


「拳銃程度じゃ効かないし、動きも素早く群れてくる。厄介なやつだな」

『うん、初心者キラーってことで有名らしいよ。それより、撃って。そろそろあっちも気付く頃だと思う』

 了解、とタクムは頷いて引き金を弾いた。


 ドゴッ!


 炸裂音が鼓膜に響く。銃座に固定されているため、反動こそほとんどなかったが、耳が痛かった。ちなみに銃弾はリザードッグの後方一メートルほどのところに落ちた。


 リザードッグは飛び上がり、キョロキョロとあたりを見回し、周囲を警戒し出す。


『じゃあ、次は照準器に回せるところが二つあるから調整しよう。手前のは右に3クリック、奥のほうは左に2クリック動かして。あ、クリックは動かしたときに鳴るカチカチって音の数のこと』

 タクムは言われた通り、照準を動かす。


『じゃあ、もう一発、敵の胴体に向けて撃ってみて』

 ずれた照準を再び合わせる。先ほど狙ったリザードッグはこちらを発見したのか、遠吠えをしていた。


 まるで犬だな、とタクムは思いつつも引き金を弾いた。


 銃口から放たれるマズルフラッシュと共に12.7ミリ弾、チョーク大の鉄塊が放たれる。


「どうなった?」

『うん、着弾したよ。さすがにマシンガンは威力が桁違いだね』

 ディスプレイには胸から上を消失させた生体兵器の姿があった。周囲には弾けた臓器や吹き出した血と共に螺子やバネのような機械部品が転がっていた。


「なんだ……ありゃ……」

『生物と機械の合いの子、それが生体兵器の正体だよ。生物として備えている内臓や筋肉の他に、戦闘機械としての機関も備えているんだ。

 機械仕掛けの四肢で普通の生き物では考えられない速度で移動したり、体内で弾丸を生成して放ったりする。古代文明を滅ぼした張本人。人類の天敵さ』

「そうか、古代文明とかあったんだな」

 さすがゲーム世界、と感心しつつ、タクムは次なる獲物を探し求め、銃口を動かす。すぐにリザードッグの姿を捕らえた彼は、引き金に指をかけた。


『居たね、マスター。彼らを開放たおしてあげて』

「おう、任せておけ!」

 アイの淡々とした声――いつもの飄々としたそれとの変化に気付くことなく、タクムは引き金を弾いた。



 トレーラの存在に気付き、追跡を開始した生体兵器達であったが、遠距離からの一方的な狙撃に数を減らされることとなった。10匹ほどを撃ち倒したところで生体兵器は撤退を開始したが、タクムは連中が有効射程から離れるまでの30秒ほどで更に5匹のリザードッグを討伐した。


 有効射程は800メートルという表記こそあったが、それは照準器の倍率の問題であり、アイの優れた誘導――観測手スポッターとしての助けや、カメラの拡大映像の効果もあって1000メートル先の生体兵器を撃ち抜くことに成功していた。


『マスター、すごいよ! 初めてで1000メートル級の狙撃に成功するなんて!』

「や、やめろよ……恥ずかしいだろ……」

 手放しで褒められたタクムは気恥ずかしげに、頭を掻いた。移動物といっても敵は一直線に逃げていただけだし、ゴルゴ13みたく輻射姿勢からズドンってわけじゃなく、敵が携帯のディスプレイに表示された瞬間、何も考えずにフルオートで連射したらたまたまその内の一発が相手に当たってしまっただけなのである。


『マスターがデレた!』

「デレてねえ! 照れただけだ! と、それよりステータス、どうなった?」

『あいあい、ちょっと待ってね』


-------------------------------------

氏名:タクム・オオヤマ

年齢:18

性別:男性

職業:丁種 開拓者

兵種:拳銃使い(ガンスリンガー) Lv6

弾幕屋(ガンナー) Lv2 new!

狙撃手(スナイパー) Lv5 new!


HP:400/400↑150

SP:370/370↑170


能力値

STR:3.05↑1.25

VIT:2.55↑0.75

AGI:3.40(+0.10)↑0.70

DEX:5.00(+2.67)↑2.20

MND:2.90(+0.31)↑1.20


技能

ハンドガン:1.19

Hマシンガン:1.50 new!

Sライフル:1.50 new!

CQC/CQB:1.24

フットワーク:1.02

精密射撃:2.44

急所撃ち:3.14


スキル

弾道予測

ダブルショット(HG):SP10

バウンドショット(HG/SMG/AR):SP20

フレイムショット(HG/MG/R):SP30 new!

ピアシングショット(HG/HMG/SR):SP10 new!

エアカッター(CQC):SP30

エアシールド(CQB):SP50

ステップ:SP10

ハイジャンプ:SP10

ダッシュ:SP15


アイテム

コルト・ガバメント(M1911)

ジャージ(プーマ)

スーパースター(アディダス)

アッポー アイホン5

M1911用マガジン(装弾済)

M1911用マガジン(空)

.45ACP弾×429

オートマグ×2

モーゼルC96×4

ベルグマンMP18短機関銃×2

トンプソンM1短機関銃×3

ブローニングM1918自動小銃×5

マークⅡ手榴弾×3

.44AMP弾×31

7.63mm×25モーゼル弾×51

9mmパラベラム弾×300

.30-06スプリングフィールド弾×1400

サバイバルナイフ×5

防弾チョッキ(F)×7

防弾マント(F)×4

鉄帽(F)×5

回復薬(F)×5

回復薬(E)×2


所持金:19,914$24¢

-------------------------------------


「兵種が増えてる」

『狙撃手は遠距離から狙い撃ったから取れたんだろうね、あと弾幕屋は最後のほうはフルオートで弾幕をばら撒いてたからかな。どちらも適正有りってことで兵種に追加されたんじゃないかな』

「弾幕についてはともかく、狙撃についてはお前のおかげだな」

『そんなことないよ。いくら補助があったからといって移動物に対して1000メートル級の狙撃を成功させるなんて才能がなくちゃ不可能だよ。もはや神業だね』

「ま、まぐれだよ……」

『デレたー』

「デレてない!」

 スコープに貼り付けた携帯電話アイを取り出し、ポケットに仕舞う。


「そうだ、アルファさんに報告しなくちゃな……」

 通信機をオンにし、生体兵器を追い払った旨を伝える。


『ありがとうございます、さすがはタクムさんですね』

「いや、大したことじゃないです、ほんとに。それじゃあ、移動を再開してください」

『了解しました、引き続き、警戒をお願いします』

 化け物トレーラがゆっくりと走り出す。ゴツゴツとした路面を踏みしめるたびに銃座が揺れる。


 何もない荒野。黄土色の地面と抜けるような空色のコントラストをタクムはしばらく堪能するのだった。



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