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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スローター
32/90

上級兵種

 前方300メートルから500メートルの範囲はまさに地獄絵図だった。赤茶色の大地を埋め尽くす、実に100体近い生体兵器の群れ。頭部は砕け、腸をぶち撒け、手足を吹き飛ばされたまま苦悶の表情を浮かべるそれ。

ひとつとして息をしているものはない。


 死の海。そう呼ぶに相応しい光景。


 これらは全てタクムが仕留めた獲物であった。狩猟開始からわずか4時間での戦果である。


「今日はこんなところでいいだろう」

 それを作り出したタクムは擬装をそう満足げに呟く。


 タクムは現在、ガンマの街から南東へ100キロほど行ったポイントを狩場にしていた。

 ここから更に1時間ほど車を走らせると茶褐色の荒野が途切れ、深い森が姿を現す。


 <獣の森>と呼ばれるそこは、方角が全く利かない樹海だ。探索の困難さからほとんど未開拓のまま放置されている。


 人の手が入らない広大な空間は、多種多様な生体兵器が隠れ潜むに適しており、彼らの楽園となっている。その数は数千とも数万とも言われており、ガンマ近郊に出没する生体兵器の8割がこの森の出身だと言われるほどだ。


 タクムの選んだ狙撃ポイントはちょっとした窪地になっており、血の臭いがこもりやすい。獲物の豊富な森の近くで大量の餌を撒いておけば、血の臭いに引き寄せられた生体兵器達が次から次へと森から出てきてくれる。


 戦果は1時間に20体程度で安定している。十数体の小さな群れが一つ二つ、時間をおいて姿を現す。いわゆる沸きスポットというやつである。


 タクムは擬装状態から淡々と処理そげきし、こちらを認識される前に殲滅してきた。


 時には複数の生体兵器の群れがかち合うこともあったが、その場合はしばらく待機し、両者が睨み合っているところで引金を弾くようにした。混乱した生体兵器達が殺し合いを始め、漁夫の利を得る作戦だった。


 また群れの長として中型生体兵器も頻繁に姿を見せた。その場合にはまずRPG-7で中型を仕留め、残りを<デイドリーム>の弾幕で片付けた。


 タクムは、お昼を過ぎた辺りで複数の運び屋を呼び出していた。全て自衛能力を持つ、丙種以上の開拓者ばかりだ。森に程近い場所での運搬には危険が伴う。全員で固まってくるように、と伝えておいた。


 運び屋連中がすぐに出動したとしても、ここまで来るのに3時間はかかる。その頃には獲物の数は200に近づいているだろう。コンテナ15台分。ほとんど商隊規模の運搬量だった。やはり、森付近は効率が違う。


「さてと……いい加減、上がったか……?」

 狙撃に使ったデイドリームとRPG-7の砲身にある、弾頭の削りカスや火薬の灰などを取り除いたところでタクムは自らのカードを取り出す。


-------------------------------------

氏名:タクム・オオヤマ

別名:殲滅者(スローター)

年齢:19

性別:男性

職業:乙種 開拓者

兵種:剣銃兵ガンソードLv2

  :強襲兵コマンダーLv2

  :猟騎兵キャバリーLV1

  :狙撃手スナイパーLv10

  :偵察兵スカウトLv10↑

  :工作兵エンジニアLv10↑

  :投擲手ランチャーLv10

  :運転手ドライバーLv10

  :整備士メカニックLv10↑


HP:1475/1475↑+5

SP:1032/1289↑+5


能力値

STR:10.75(+3.50)↑+0.02

VIT:10.64(+3.50)↑+0.02

AGI:11.50(+3.63)↑+0.02

DEX:12.21(+1.67)↑+0.02

MND:10.59(+1.55)↑+0.02


技能スキル

[弾道予測]

[曲芸]

ステップ:SP10

ハイジャンプ:SP10

ダッシュ:SP15

ウォールラン:SP30

ダブルステップ:SP30

ダブルジャンプ:SP30

[近接戦闘]

エアカッター:SP30

アイアンナックル:SP30

スチールリッパー:SP30

ハンドボム:SP30

エアシールド:SP50

ワイヤーハンド:SP50

[拳銃 HG/SG]

ダブルショット:SP10

トリプルショット:SP15

スタンショット:SP50

バウンドショット:SP20

[小銃 AR/SMG]

バーストショット:SP100

オートリード:SP50

[重火器 SR/HMG]

ピアシングショット:SP10

マテリアルショット:SP150

ヒートショット:SP150

[投擲器 GR/RK/MS]

フレイムランチャー:SP200

スピアランチャー:SP200

[その他]

オプティカルハインド:SP100

サークルレーダー:SP100 new!

ブービーチェック:SP100 new!


預金残高:32,000,000$

-------------------------------------


 前々から上げていた<偵察兵>と<工作兵>、<整備士>のレベルが上がったようだ。兵種レベル限界は一律10であるため、これ以上、育て続ける必要はない。


 タクムはカードを操作し、<偵察兵>と<工作兵>をドラッグ&ドロップ、<狙撃手>の上に置く。同様に<運転手>と<整備兵>を、<投擲手>の上に配置した。


-------------------------------------

兵種:剣銃兵ガンソードLv2

  :強襲兵コマンダーLv2

  :猟騎兵キャバリーLV1

  :狩猟兵ハンターLv4 new!

  :機甲兵タンカーLv5 new!

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 これで全ての兵種を上位兵種――いわゆる上級職に変更することが出来た。タクムは満足げに微笑む。


 <人間>という生物の上限値10.00を超えると、兵種レベルの上昇によるステータスの上がり幅が極端に低くなることが分かった。


 これを解決するためには上位兵種に転職するしかない。上位兵種になるには、元となる基本兵種をレベル10にまで上げ、特定の条件をクリアするか、別の兵種をドラッグ&ドロップで融合させることが必要だ。


 剣銃兵や強襲兵、猟騎兵が前者にあたり、狩猟兵や機甲兵が後者にあたる。


 ちなみに、剣銃兵は一体型のロマン兵器<ドリームリッパー>で中型生体兵器を倒したら拳銃使いから変化した。剣と銃をそれぞれ両手・・に握った状態で戦闘経験を積めばよいらしい。


 強襲兵は弾幕屋がランクアップしたもので、対人戦闘を数多くこなすと変化する。幸いタクムは、盗賊と女王蟻素材を狙ってきた開拓者との戦闘で条件を満たすことが出来た。


 猟騎兵も<単車乗りライダー>からランクアップする。バイクやバギーあるいは騎馬(タクムの場合はロボットホース)などの、装甲のない車両に搭乗した状態で、狙撃したり、弾幕を張ったり、近接戦闘を行ったりと色々することで取得できるようだ。


 情報源は<アイのノート>だ。彼女は生前この世界のルールをまとめた資料を情報端末に残しておいてくれていたのだ。


 兵種に関する情報は元より、有力な兵器や車両の情報とその整備方法、様々な生体兵器の一覧とステータス情報、法律に一般常識、有効な戦術からサバイバル技術まで、生きていく上で必要そうな知識が網羅されたそれは、ほとんど攻略本のようなものである。これがなければタクムは今日まで生き残っていられなかったであろう。


 タクムは兵種を攻略本にあった、おススメジョブツリーの通りに進めている。当面の目標は、上位兵種のさらに先、最上位兵種<撃墜王エース>と<竜機兵ドラグーン>の取得だ。


 最上位兵種とは天才や神童と呼ばれるような才能豊かな連中が何十年という時間をかけてようやく到達出来る人類の最頂点であった。


 <撃墜王>はその名の通り、操縦系の兵種であり、<操縦手パイロット>か<機甲兵>のいずれかと、純戦闘職一つをレベル10にすることで取得出来る。あらゆる車両や乗り物に対する補正を受けられる便利な兵種だ。


 <竜機兵>はドラゴンのように硬く速く高火力な歩兵という意味らしく、取得条件は<強襲兵>と<狩猟兵>、<猟騎兵>をそれぞれレベル10にすることで取得できる。上位兵種三つを使用する分、強力なスキル――いわゆる竜の力が得られると言われている。


 既に必要な上位兵種は取得した。意外と簡単なように思えるが、恐らくは数年がかりの作業となるだろうとタクムは覚悟している。


 上級兵種のレベルアップ条件は非常に厳しい。小型生体兵器では千単位で倒さねばならず、中型生体兵器でも50から100は仕留めていかなければならない。

 今はまだ低レベルだから問題ないが、今後は更なる経験値が必要になることを思うと気が重い。


 タクムのメインジョブである<狙撃手>を含んだ<狩猟兵>がレベル4スタート、ジャイアントスローター戦で使用され、以後も数多くの中型生体兵器を仕留めている<投擲手>をベースにした<機甲兵>ですらレベル5スタートであることからもその困難さは想像にあまりある。


 転職直後にレベルが高いのは不思議に感じるが、この世界では積んできた実戦経験は無駄にならないという前提がある。前兵種である<狙撃手>、<投擲手>でレベル10以降に積んだ経験値は、反映されてなかっただけで消えてしまったわけではない。この数値はそのまま上位職である<狩猟兵>や<機甲兵>に引き継がれ、転職した直後にレベルアップという形で再評価を受ける。


 アマチュア時代に数々の記録を打ち立て、鳴り物入りでプロ入りしたトップアスリートと、プロテストをギリギリで合格した選手が同じ評価レベルを受けるはずがない。


 特定の兵種で延々戦い続けていたとある開拓者が、大型生体兵器を倒し、上級兵種へ転職した途端にレベル10(マックス)になっていた、なんていうこともあるらしい。


 あくまで噂話であるが、全くのホラ話とも言い切れない。普通に狩りをしていて大型生体兵器をお目に掛かることはまず有り得ないと言っていい。連中はいわゆるボス扱いだ。その経験値は莫大であり、討伐部隊レイドを組んでも十分な経験値を得られる。


「……大型、出てこねえかな……」

 タクムがそんなことを考えていると、試しに使っていた<サークルレーダー>が遠くに微かな生き物の気配を感じ取った。


 スコープの向こうに目を向ければ、そこには見慣れた小型生体兵器<リザードッグ>の姿があった。


 タクムは半ば無意識的に、体長1.5メートルの的を十字線レティクルに収めると引金を弾くのだった。



ステータス表のフォーマットを変えました。


その辺は物語に関わる部分じゃないので、

読み飛ばしていただければ幸いです。

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