強い代わりに割がいいのは何処の世界でも同じでしょ?
『だいじょーぶ、マスター? ごめんね、こんな体で。痛いの痛いの出来ないんだ』
レースゲームばりの大クラッシュをしでかした張本人はしれっと言った。
「いや、そういう問題じゃないだろ……」
タクムは後頭部を抑えながら言った。アイの報告では頭部に強い衝撃を受けたことによる脳震盪であるらしい。
あの時の急加速からの急停止&急旋回は、死に掛けたジャイアントゴーレムが放った生体砲弾を回避するためであった。砲弾には強烈な蟻酸が詰まっており、いくら丈夫なマイクロ戦車とはいえ耐酸性の低い通常装甲では一たまりもなかっただろうとのことである。
ある意味、清清しいくらいに気持ちの篭らない謝罪。腹立たしくはあるものの、アイの行動は最善のものであったことは疑いようがない。
おかげでタクムは無事だし、マイクロ戦車も銃座に備え付けられた2門の銃器が外れたくらいで済んでいる。
タクムが気絶している間、アイは回収を終え、ガンマの街に帰還していた。解体工場に生体兵器を出荷し、後は出来上がりを待つばかりというわけだ。
ちなみに最初に狩った30匹超の生体兵器と巨大なジャイアントアントの組み合わせはさすがのコンテナでも収まりきらず、運び屋を呼んだとの事後報告も受けた。
運び屋とはその名の通り、様々な荷物を目的地に運び入れることを生業にしている開拓者だ。
戦闘車両かそれに順ずる武装を施した防弾車両に乗っているため、護衛としての能力も期待出来るとのこと。生体兵器の出没する街外でも配送配達にきてくれる唯一の職業であった。
ちなみに料金は距離によって変わるが、街均衡であれば1コンテナ辺り、1000ドル。約10万円程度であった。
中々に痛い出費だが、蟻系ということでアイも捨てるには惜しいと思ったらしい。アント種が全身に纏う鋼鉄っぽい外殻はかなり上質な合金素材であるらしく、加工あるいは鋳潰すなど戦闘車両の装甲板や銃器に使用されることが多い。
つまり何が言いたいかといえば、かなりの利益が見込めるのだ。アントゴーレムならD級からC級、ジャイアントゴーレムに至ってはB級の依頼として持ち込まれることがあるという。
アイは予想される金属の産出量に合わせて目ぼしい依頼を受諾しており、その合計金額はなんと5万ドルを超えるという。1日2回で10万ドル。月ベースなら100万ドル。月収一億円。その金額はベテラン開拓者の域を超え、一流と呼ばれるレベルである。
アイの見解によれば、南の方面に蟻の巣があるのではないか、とのことでこれからも蟻で稼げるとタクムは狂喜乱舞した。毎月、宝くじに当たるようなものだ。浮かれて贅沢三昧を始めようとしたタクムであったが、毎回毎回そんなに大金が稼げるはずがないと早々に釘を刺された。
そんなこんなをやりつつも狩りは順調、ふたりの生活は軌道に乗り始めるのだった。




