協力者
これは、とある人から聞いた物語。
その語り部と内容に関する、記録の一篇。
あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。
身に覚えのないケガ。いや、ケガでなくとも身体の汚れ。
ものすごく気になるよね? 自分がどのようにして、こうなったのか。その原因がつかめないのは、不安きわまりない。
自分のせいなのか? 自分ではない誰かのせいなのか? それによってどのような影響が出るのか?
どのようにささいなタネであったとしても、判明しないうちは、その輪郭が自由に変わる。ときにはこちらを呑み込みかねないほど、巨大な山とか影になってショックを与えてくるかもね。
それが「枯れ尾花」であるとの確信がほしい。そのために、つっこまなくていい藪につっこんでいき、ときに新たな厄を呼び込んでしまうこともある。安心を求めるのも、欲である以上は危険もそばにあるってわけだねえ。
友達も、この身に覚えのないことを、どうにか「覚えよう」とした結果、ちょっと面倒なことに巻き込まれかけたみたいなんだ。その話、聞いてみない?
友達の違和感は、軽い痛みから始まった。
ふと朝に目覚めてみると、左腕がずきりと痛んだ。ぶらりと下げているのみなら問題ないのだけど、何かにぶつかったり、体重をかけたりすると、しびれるような痛みが走るんだとか。
打撲でもしたかな、と思ってしまうが友達にはとんと覚えがない。しかも、この痛みが持続するのは午前中の間のみ。午後になると、ぴたりと痛みが止んでしまうのが不審な感じをあおってきたとか。
この午前中のみの痛みは、はじめは左腕に限られていたけれど、やがて左半身すべてへ広がる気配を見せる。
その痛みもまた、日によって重さが異なってきた。ひどいときには、じっとしていても断続的に腕を中心とした身体へ広がっていくのだとか。
どれほどひどいと思っても、やはり午前中になると引いてしまう痛み。あまり、公にしたくはないし、自分が我慢すればいいだろ。
そう考える友達は、耐える一手をとった。痛みのひどいときなどは、ちょっと身体を傾げてしまいがちになるが、それも数時間の辛抱。どうにか不自然に思われないよう、思われないようと心掛けていたのだけど。
あるとき、それに出会ってしまった。
登校途中の横断歩道での信号待ち。その向こうの岸側にいる人に、向かって右半身を異様にぶらつかせている人がいる。
青い背広姿。おそらく社会人だ。
そしてこの動きは、自分が腕の痛い時に取りがちなポーズ。まさか、あの人も……。
そう考えているうちに信号が青になり、他の人たちと一緒に横断歩道を渡っていく。そして、例の人とすれ違いかけるとき。
とん、とその人が寄りかかるようにぶつかってきた……気がした。
自分の痛む左腕に触れたかと思うと、その人の姿はたちどころに消えてしまったんだ。ただ友達の腕へ真新しく強い痛みを残して、だ。
まわりの人は自分のことでアタマがいっぱいだったのか、彼の消失を気に留めていそうな人はいなかった。けれど、学校に着いてから、後からクラスに来た面々が騒ぎ出す。
友達が渡ったところから200メートルあまり離れた路上で。青い背広を来た男の死体が見つかったんだ。右肩より先がちぎれてしまった状態でね。
誰も彼が歩いていたところを見ていない。ただ、いきなり悲惨な形の死体となって転がっていたのだという。
あの痛み、彼に死を与えるためのものだったのか。彼自身がなにかしら望んだのか。なぜ自分だったのか。
いまだ、友達は謎を抱えているそうだ。




