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第28話 『弱者認定』された重戦士

「やっぱ邪魔やな、攻撃しにくいわ」

 二階層のゴブリンにとどめを刺した後、堂本は面倒くさそうに言った。

「そうですか?割と様になってると思いますけどね」

 成瀬が足元の魔石を拾いながら言った。


「それになんか、こんなん使うとると、正々堂々やないっていうか卑怯な気するわ」

「魔物相手に卑怯もクソもないでしょう。だいたい魔物だって武装してるじゃないですか」

「そうやけど、なんかなぁ」

「だったら、素手で魔物と戦いますか?」

「アホ言うな、そんな変態みたいなことできるか」

「俺から見たら、十分変態に足突っ込んでると思いますけど」

「アホか!」


 そんな会話を成瀬と堂本がしている間に、第三階層に朔たちはついた。


「さぶイボ立つわ」

 一番初めに第三階層に降り立った堂本が、そう言った。

「見た目が全然違いますね」

 樫村が周りをキョロキョロ見渡し、そう言った。


「朔は初めてじゃないんだよね?」

 成瀬にそう聞かれて、朔は伏し目気味にこくりと頷いた。

「やっぱ実技一免除されただけのことはあるな、頼むで」


 堂本にそう言われて、朔はこのメンバーの中では実戦経験が一番豊富なのだと気づいた。樫村はもともとダンジョン自体、学校に入って初めてだと聞いていたのだが、成瀬や堂本に関しては、その件については詳しく聞いていなかった。

 第3階層に入ること自体は、それほどハードルが高いわけではない。探索者が4人揃えば入れるというハードルの低さだ。

 堂本と成瀬も緊張しているように見える。


「ここに出る魔物とか、記憶してますか?」

 なんとなく朔はそんなことを聞いた。水野千紗が朔に聞いたセリフだ。

「なんか色々おったな。ダイアウルフや、それとヒルジャイアントもおるな」

 堂本が上から順番に言ってきた。


 堂本はあまり動画を見ていないのかと思ったが、出てきた魔物の名前からして DTube は見ているようだ。

 しかし、その後の雑魚キャラに関してはあまり記憶していなかったらしく「後はお前が言え」と言わんばかりに成瀬の方に視線を向けた。


「最新の情報ではトロルが入ってますね」

 成瀬がそういうと、堂本が「そんなんか」と目を大きく見開いて成瀬を見た。

「他は、ケイプバットにケイプボア、グリントラット、コボルト、アーマービートル、アラームビートル」


 樫村と成瀬はきちんと把握しているようだ。ここまで聞いて、水野千紗が朔に対してこの質問をした意図がよくわかった。

「まあ何が来ても、朔が先に教えてくれるんやろ?」

 堂本が悪気がない笑顔でそう言った。


 ふー。朔は意図せず、深く息をはいた。


「堂本さん、仲間を頼るのと丸投げにするのは別だと思いますよ」

 そう言ったのは成瀬ではなく、樫村だった。

「……おお、そうか。すまんすまん。朔、かんにんな」

 意外なところから注意されたので、慌てて頭を下げる。


 朔が索敵を行うと、とりあえず手近には反応はなかった。しかしサーマル・センスを使うと、天井にケイプバットの反応が2つあった。


「伊織、20m 以内に敵の反応があるんだけどわかる?」

 朔はあえて場所を言わなかった。

「なんだよ、試すのかよ」

 そういった伊織は面倒くさがるわけではなく、何か楽しげに目を見開いてキョロキョロしていたが、見つけることができなかったので、すぐに見るのをやめて少し考え出した。


「グリントラット…ケイプボア…ケイプバット」

 成瀬が疑わしい魔物の名前を一つ一つ、ゆっくり朔に言った。


「ケイプバット」

 成瀬がそう言って朔の顔をじっと見る。

 朔は違いを感じさせないように、平静を装うが「ケイプバットがいるんだね」といった。


「いや、俺の表情を見て探るのは違うでしょ」

 朔はそう言ったが正解だった。


「私はグリントラットだと思います」

 正解を言う前に樫村が割り込んできた。

「なぜですか?」


「朔くんの索敵は音を頼りにしてやるんでしょ?ケイプバットそんなに音を出さないと思うから、ケイプボアかグリントラットだと思う。ケイプボアだったらさすがにわかるしね」

 樫村が少し得意げに言った。

「いや、だから俺の思考を基準に考えるのはちょっと違うくて」

 朔がそう言うと、成瀬と樫村はお互い顔を見合わせて少し笑う。

「分かってるけど、そんなこと俺らには分かんないよ。そういったスキルがないからね」


「だいたい、ケイプバットやグリントラットなんて雑魚敵やろ、そんなん気にすることないやろ」

 堂本は気にせず歩き出す。

「確かにケイプバットは臆病ですし、パーティーで行動してると襲ってこない時も多いです」

 朔は話をしながら、堂本に続いた。

 樫村と成瀬は、天井を見回しながらそれに続く。


「通常時なら問題はないんですが、怪我をしている時などは、血の匂いを嗅ぎつけて攻撃してくることがあります」

「そういえば、負傷した高ランク魔術師が魔力ギレの時に、ケイプバットに襲われて大けがをしたって話がありましたね」

「弱い魔物ほど、弱者に対して執着したりするんです」

「なら、俺は大丈夫やな」


 堂本がそう言って、後ろの朔たちの方に振り返った時。

 バサバサバサッ。

 天井からケイプバットが堂本の頭に向かって降り立った。

 かろうじて気づいて盾で防いだ堂本。剣で薙ぎ払おうとするが上に逃げられる。


「弱者、認定されたようですね」

 成瀬がにやつきながらそう言った。

「ちゃうわい!見とれ俺の方が強いのわからせたる。降りてこいクソコウモリ」

 そう言って天井に向かってブンブンと剣を振る堂本。

 だが、高さが届かない。


「マジックボルトで倒してやりたいんだけど、俺が倒したら怒りそうですね」

 成瀬がそう言って、その様子をにやつきながら見守っている。


 そうこうしているうちに、飛んでいるケイプバットに誘発されて、他のケイプバット2匹も羽ばたき出した。

「ええー、あんなところにいたんだ。全然気づかなかった」

 樫村が感心したように、ぽつりと言った。


「俺をバカにしたやつ、どいつや?わからんようになってもうたやないか。しゃーないから、お前ら全員道連れや」

 届かない高さで逃げるケイプバットに石を投げる堂本。石は狙っていたケイプバットには当たらず、たまたまその近くに飛んでいたケイプバットに当たった。

 石が当たったケイプバットは体勢を崩し、2メーターほど落下するが、体勢を立て直して再び飛び始める。

 そこに堂本が飛びかかり、剣を振るが、間一髪のところで避けられる。

 蛇行しながらどうにか逃げるケイプバット。


「逃がすか」

 堂本が追撃の一振りをするが、少しかすめただけで避けられる。

 よろめいたケイプバットは、そのまま壁へ激突する。


――そう思った瞬間。

 ケイプバットが、消えた。


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