第五章
傾き始めた日に照らされた街道を複数の馬車が進んでいく。
「今日はこの辺りで夜営とする!」
物騒な噂もある。無理に行程を進めない方がいいだろう。
その声に、馬車が止められて商人たちが降りてくる。
商人なだけあって和気藹々と騒ぎながら、夜営を準備していく。
その中で一人が声をあげた。
「……お兄さん、旅人かい?」
視線の集中した先では、見慣れないローブの男。
街道を進んでいた旅人だろう。
「旅人……」
力なく呟いた男はなんだか不気味だ。
話しかけた仲間も少し戸惑っているようだ。
「あ、ああ……呼び止めて悪かったな!」
「苦しい……」
その場に座り込んだ彼に、どうしたものかと顔を見合わせる。
「あ~……薬なら積み荷にあるが……まあ、タダでは譲れないけど……」
「ずっと間違ってるんだ……」
これは頭のおかしな奴に絡んでしまったかと、肩を竦める仲間に苦笑を向ける。
「とにかく……俺たちはここで夜営するから、お兄さんは移動してくれよ……」
ローブの男の肩を掴もうとすると、痛い程の強さで腕を払われる。
その拍子に、男のローブが揺れる。
顔を隠していたフードが外れて……おぞましい黒い紋様が浮かんだ顔が露になった。
周囲の話し声が止まる。
風で用意しかけていたテントが倒れた。
同時に誰かが叫んだ。
「ば、化け物……!」
堰をきったように、口々に男を詰る。
男は静かに佇んでいた。
そして、顔をあげて虚ろな瞳で周囲を見渡す。
「ああ、そうだな……やっぱり間違いだ」
それが彼らの聞いた最後の言葉だった。




