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最終章


「……カイル!!」


 腕を強く握られてカイルの瞳がびくりと揺れた。

 幼い自分を見ていた、親が子を心配するような声で壮年の男が腕を握る力を増す。


 「何がお前をここまで……」


 「ノア……」


 カイルは何かを探すように、目を迷わせる。


「……なんだ?」


 後ろから聞こえる優しい声。

 何故だか背筋が震える。


「ノアに……会いに行く」


「だから、ノアは……!!」


 男に掴まれた手を払い、踵を返して歩を進める。


「……俺はここにいるだろ?」


 横から囁く声に、カイルの思考がぼやけていく。

 喉が引きつり、肺が上手く膨らまない。


 足を止めたカイルは傍にある、その手を握ろうとする……が、届かない。


「…………会いたいんだ」


 選ばなかった筈の道を、歩いていく。










 何かに壊された日常が広がっていた。

 

 鉄の匂い。

 どす黒い赤。


 辺りに転がっているのは……。


「俺が……これを……」


「……見なくていいだろう? 間違ってたんだから」


 横から伸びた手が視界を遮る。

 口を開くが、喉が上手く動かない。


「本当に行くのか?」


 目的地など無い筈なのに、迷い無く足が動く。


「間違いだって…………見たくなかったんだろ?」


「……違う」


「違わないだろ?」


 足を止めたい筈なのに、止まってくれない。


「カイル……もう、いいのか?」













 そこに、彼が居た。


「……ノア」


 一人で、そこに残されていた。


 その場にしゃがみこみ、彼を拾い上げる。


「……カイル」


 聞こえる筈の無い彼の声がカイルの耳に届く。

 カイルを抱き締めようとした手は、届くことはない。


 心は凍りつきそうなのに、身体が……肌を這い回る呪いが熱を帯びる。

 もうすぐきっと燃え尽きる。


 久しぶりに……"親友"に笑いかける。


「……ごめんな」


 掠れた声が寂しく響く。

 独りの終わりがそこにはあった。



 


 

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