表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/42

灯が導く先へ

 深夜の山間の集落を、パトカーの赤いランプが照らす。ひとりの母親の悲痛な声が、塗りつぶされた夜空に響き渡る。


「蒼真! 蒼真! どこにいるの!?」


 騒ぎの聞きつけて、深夜にも拘らず近所の家も明かりをつけ、窓を開けた。


「なんだ? 宇津森さんのとこ、なにかあったのか」


「子供がいなくなったんだって。学校の裏山に向かっていったのを見た人もいたみたいよ」


 ざわつく近隣住民の声は、パトカーのサイレンに掻き消された。パトカーの中の警察官がぼやく。


「またあの山か。これで何人目かな」


「そこの山、しょっちゅう迷子が出るんですか?」


 助手席の若手警察官が首を傾げ、運転席のベテランはため息をついた。


「そんな生易しい話じゃねえよ。よく覚えとけ、新人。ここらに住んでる人には分かりきった話だ。あの山には、固有種の変なキノコが生えててな」


 唸るサイレンの中で、警察官は淡々と話した。


「冬虫夏草って知ってるか?」


「あー、虫に寄生するキノコでしたっけ。菌糸の状態で寄生して、最後には虫を養分にしてキノコ生えるやつ」


「そう。それの近縁種の中には、虫の行動をコントロールする種類もあるんだが……」


 この集落には、昔からわらべ歌が残っている。


「そこの山のキノコは、虫じゃなくて人に寄生するんだ」


 森の奥に 光が灯る

 誰も知らない 木の根の下で

 ひとりぼっちの 子供が来れば

 優しい声が 名前を呼ぶ


「発光して、人を誘導してな。胞子を吸った人間は、ものの数分で寄生されて脳神経を支配される。意志を菌に操られて、ゾンビみたいに彷徨う」


「ひえっ、怖!」


 水をあげれば 地が潤い

 手を触れれば 心が繋がる


「脳を菌に持ってかれたら、外見はその人のままでも本人の思考は一切なくなる。キノコの繁栄のためだけに、新たな餌食を探すように行動操作されるんだ」


「寄生されたら、もう助からないんですか?」


「脳がやられてるからなあ……。聞いた話じゃ、身も心も地中の菌糸ネットワークの一部に取り込まれて、キノコの養分になっちまうとか、なんとか」


 けれどその先 帰り道


「菌類学者の話じゃ、菌糸ネットワークの中心となる木に、吸収された人間の記憶が保存されてるんだとよ。木が『記憶の中枢』になって、菌になんらかの作用を起こしてると考えられてるらしい」


「体も、心も、記憶も、全部乗っ取られちゃうんですね」


「ああ。だからあの山には入っちゃいけない。この地域ではずっと、そう言い伝えられてるのになあ」



 どこにも もう 見つからない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ