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016 登録完了

「……っ! し、失礼しました」


 しばらくの沈黙の後、アリサが我に返る。

 ふと、彼女は何かに気付いたように口を開いた。


「あれ? ゼロスという名前に、【無の紋章】……もしかしてシルフィード侯爵のご子息ですか?」


「ッ!?」


 想定外の発言に、思わず息を呑んだ。

 素性を見抜かれたことに驚いた俺は、疑いの視線をアリサに向ける。


 そんな俺を見て、彼女は慌てて付け加えた。


「あの、そう警戒なさらないでください。ゼロスさんが貴族だからと言って、特に何かするわけではありませんから」


 ……その言葉に嘘はなさそうだ。

 誤魔化すのも無理だろうし、正直に答えることにした。


「……どうして俺の正体が分かったんですか?」


「実はその、私も貴族なんです。このギルドには指導者としての経験を積むため一時的に来ているだけで、以前までは王都にいました」


「……そうだったんですね」


 立ち振る舞いや口調からそれなりの教育は受けていそうだと思っていたが、まさか貴族だったとは。


 驚く俺の前で、アリサは続ける。


「それでですね、シルフィード支部のギルドマスターを引き受ける以上、侯爵家とも関わりがありまして。数日前に次男の紋章天授があり、結果が【無の紋章】だったという話を聞いていたんです。ゼロスさんのお名前まではおぼろげにしか記憶していなかったのですが、状況的にもしかしたらと思いまして……」


「……なるほど」


 俺は納得して頷いた。

 そういうことなら、アリサが俺の素性を見抜けたのも理解できる。


「事情は分かりました、疑ってすみません」


「いえ、お気になさらないでください。自分の素性を知られていて警戒するのは当然ですから」


「……そう言ってもらえると助かります」


 俺は少し安堵の息を漏らす。

 そこでふと、素性がバレたことに伴う一つの疑問が浮かび上がった。


「ところで一つ尋ねたいんですが、冒険者登録時に家名は必須ですか?」


 アリサは俺の渡した紙に視線を落とした後、穏やかな口調で答えた。


「いえ、問題ありません。平民の方が多い中で活動する以上、身分を隠したいと思われるのもよく分かりますから。ゼロスのみで登録いたしますね」


「助かります」


「いえ、そんな! 実力者が増えて助かるのはこちらの方ですから」


 アリサはこちらを安心させるように柔らかい笑みを浮かべ、そう言った。


 それから待つこと数分。

 俺はアリサから出来上がった冒険者カードを受け取る。

 カードには名前の他に、紋章名、それから『ランク:F』という記載があった。

 登録時は全員がFランクスタート。そこから幾つもクエストを達成して上げていく仕組みなのだ。


 何はともあれ、これで登録が無事に終わる。

 貴族だとバレた時はどうなるかと思ったが、アリサが柔軟な人物で助かった。


 その後、俺はアリサと別れの挨拶を交わし、ギルドマスター室を後にした。



 ◇◆◇



 約一時間後。

 貰った報奨金で幾つかのアイテムを購入した俺は、その足でFランクダンジョン【飛鳥落勢ひちょうらくせい】にやってきていた。


 攻略推奨レベルは16。

 【新兵しんぺい鍛錬所たんれんじょ】以上、【棘針きよくしん巣窟そうくつ】未満となっている。


「まあ、ここのダンジョンの特徴はギミックの特殊さだし、レベルは参考程度でしかないんだけど……」


 いずれにせよ、今の俺なら問題なく攻略できるはず。

 そしてこのダンジョンでは、なんと【魔導の紋章】用のスキルを獲得できる。



「剣のスキルを集めるだけじゃ、せっかく【無の紋章】を得た意味がないからな。よし、さっそく挑むとするか!」



 俺は気合を入れ、ダンジョンの中に入るのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 隠すってなんだろ?
[気になる点] そもそも貴族なの隠す必要ある?
[一言] 隠す意味が全くなくなってきましたね…
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