ショートショート 夢で泳ぐ〜怪獣・コチラの最後〜
俺の名はコチラ。
俺は核実験の影響で突然変異によって生まれた。
職業は怪獣、時に破壊神、まれに救世主。
主な活動拠点は日本で、アメリカに何度か出張したこともある。
仕事内容は、破壊活動。
人間を恐怖と混乱に陥れるが俺の役割だ。
攻撃拠点は、主に日本。
そう、活動拠点が攻撃拠点でもある。
ホームタウン東京を破壊するのはお手のものだ。
出張先のアメリカでもいい感じに暴れたな。
まれに救世主と言ったが、たまに気が向いた時、人間を助けることもある。
そうは言っても俺は破壊神、破壊することが俺の仕事だ。
まぁ、前置きはこれくらいでいいだろう。
早速、本題に入ろうか。
俺は生まれてから何十年も怪獣をしてきた。
人間ならけっこうな年だ。
それで俺はふと考えた。
怪獣コチラの最後は?
どんな最後を迎えるのか?
お前たちは考えたことはないか?
コチラの最後。
お前たちの最後。
俺は考えた。
ラストはこうだ。
俺、怪獣コチラは、思い出したように海から這い出てきて、破壊の限りを尽くす。
全ての大陸に上陸しては破壊していく。
俺は楽しくて仕方がない。
俺が出す脅威的なエネルギーは全てを無に帰す。
汚れた地に希望はない。
人間の努力は報われない。
物語はいつも人間の勝利で終わるが、そもそも破壊神の俺に勝てると思うのか?
俺はな、手加減してやってるだけだ。
お前たちが手にする勝利は自分たちが勝手に作り上げた幻想に過ぎない。
俺はな、最後に日本を破壊する。
俺の活動拠点は日本だからな。
世話になった日本を最後に破壊するのが礼儀ってもんだろう。
そして全てが、全世界が破壊される。
そこに見える景色は何か?
なんだと思う?
世界の平和だ!
争いのない平和な世界だ!
なにもない荒涼とした静寂の世界だ。
そして俺はまた海に帰っていく……。
真に世界に平和が訪れる。
だがそれもそう長くは続かない。
なぜなら数年、数十年、数百年後に新たな生命が誕生するからだ。
そう、俺と同じ核による突然変異で生まれし生き物たち。
深海の奥底から、あるいは地面の奥底から、あちらこちらから、そいつらはむくむくと顔を出す。
そして世界の覇権を目指した争いが始まる。
シン・コチラ期の始まりだ!
もちろん、俺も参戦する。
負けるつもりはない。
新参者とは場数が違うからな。
だが、ここで一つはっきり言っておこう。
お前たちはよく勘違いするからな。
俺が住んでいる世界は……
俺のいる世界は、破壊の限りを尽くして街を壊しても、来週には何事もなかったかのように街が元通りになっている。
そして何事もなかったかのように、また新たな物語が一から始まる……
そんな世界だ。
そんな世界の中での、ただのお伽噺話だ。
破壊の限りを尽くして、再起不能なことを平気でやってのける、お前たちの世界とは違うのさ!
俺はお前たちが望む限り、これからも長く、長く破壊の限りを尽くして、お前たちを恐怖と混乱に落としいれていくことを誓うよ。
再生可能な世界の中で、お前たちがのたうち回るのを楽しみにしている……