そろそろ戦おうと思うんだけどどうかな?
「そろそろ戦おうと思うんだけどどうかな?」
代千華がそう告げると同時に、真っ白い床が光を放ち、明狼の身体に描かれたものと似たような紋様が浮かび上がる。
その光景を満足そうに眺めていた代千華が立ち上がると、そこにあったイスとテーブルが煙に包まれ消える。
「この状況で逃げようともしないのはありがたいね。
安心していいよ。きっちり始末してあげるから」
代千華の宣告に合わせて、明狼たちの前後左右、天井や床に五つの銃身のようなオブジェクトが現れる。
そのうちの一つから、明狼たちに向け光線が放たれる。
明狼はバリアを構築し、あっさりと光線を防ぐ。
「にみ」
明狼の呼びかけに日美々は即座に反応し、右手を上着の中に差し、銃を抜き出す。
そして、ポーチの中から明狼が魔力を込めた弾を取り出し、銃身のようなオブジェクトに向かって撃った。
雷属性の魔力が込められた弾によって、オブジェクトが破壊される。
残りのオブジェクトから、次々と光線が放たれるが、明狼が防御し、日美々が反撃するように、オブジェクトに向け発砲していく。
五つのオブジェクトを破壊したタイミングで、明狼が代千華に直接攻撃を入れようと駆け出す。
代千華はそんな明狼の突撃を、余裕をもって大きく避けた。
「明狼チャンは大量に魔力を消費しているように見えるけど、そんな余裕があるのかな?」
代千華が挑発するように言う。
「この床の紋様は、明狼チャンとこの地球の魔力の接続を止めるためのものなんだよね」
代千華の種明かしを無視して明狼は攻撃を仕掛けるが、代千華には当たることなく避けられる。
「にみ。煙幕を頼む」
明狼のが言い切るやいなや、日美々は銃に弾を込め直し、代千華の足元を撃つ。
すると、弾から五メートルくらいの範囲に、砂埃が広がっていく。
明狼は自身の魔力を用いて代千華の姿を捉え、砂埃の中へ飛び込む。
しかし、それでも代千華は明狼の攻撃を躱し、砂埃の外へと飛び出してきた。
「まさかボクにも、砂埃のちょっとしたゆらぎで動きを感知して避ける、なんて機会があるとは思わなかったよ」
やれやれと頭を振る代千華。
「うーん。それにしても」
代千華が訝しげに明狼を見る。
「明狼チャンには人の心というものが無いのかい?」
「急に何を言ってるんだ?」
明狼が問い質す。
「ボクが仕掛けた罠は、魔力の接続を切ることと、もうひとつ、ボクやクラスメイトたちを見捨てたことによっていだいているであろう、明狼チャンの罪悪感を増幅させることだったんだけどね。
罪悪感に押し潰されて動けなくなった明狼チャンなら、ボクでも簡単に倒せると思っていたのに、まさかカケラも罪悪感を抱いていないとは、想定していなかったよ」
代千華の持つ能力は、抱いている感情を増幅させるもので、僅かでも抱いていればそれを百にでも千にでもできるが、ゼロはどこまでいってもゼロのままである。
「それは違うかな」
明狼が切り出す。
「罪悪感なら抱いてるに決まってるだろ?」
「ははは。大事な人の手前、認めたくない気持ちはわかるけど、嘘はよくないね。
ボクの能力が効いてないのが、何よりの証拠じゃないか」
「いや。お前の能力が効かないパターンがもう一つあるはずだ」
「は? 何を言ってるんだい?」
「無いものは増やせない、そして、すでに最大限抱えているものも増やせないんだろう?」
「つまり、明狼チャンは、常に見捨てた者への罪悪感を最大限抱えながら生きているとでも言うのかい?」
「俺が殺した人たちのことなんだから、その罪を背負い続けるのは当然だろう」




