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【全知】と【全能】

 ――あっちの世界における明狼チャンたちの、生い立ちや境遇とか、細かい部分を詳しくは知らないんだけどね。


 ――明狼チャンと羅羽羅クン、そして日美々クンの三人は、幼なじみでずっと一緒にいたとか。

 

 ――明狼チャンは【全能】、羅羽羅クンは【全知】、そう名付けられた能力を持っていたみたいだね。


 ――持って生まれたのか、何らかの方法で持たされたのか知らないけど。


 ――まあ、羅羽羅クンは、「全知」なんて名ばかりで、「全知」とはほど遠いとか言ってたかな。


 ――実際、全てを知るなんて人間の脳では容量が足りなすぎるだろうね。


 ――【全知】って言っても、知っているものが詳しくわかるようになるだけで、認識すらしていないものについては、何もわからないって羅羽羅クンは説明していたみたい。


 ――顔も名前も存在も知らない人間を、検索できないというより、検索しようともしないってことなんだろうね。


 ――明狼チャンの【全能】も、想像できるものは魔法でできるけど、逆に言うと、想像したものしかできないし、それにしたって魔力が足りなければそれまでの能力だって聞いたよ?


 ――とはいえ、【全能】は万能で強い能力には違いないし、明狼チャンはそんな強い能力を持った以上は、人々のために使うべきだって思ったみたいだね。


 ――怪我を治し、病気を治し、魔物を倒し、人々のために明狼チャンは奔走した結果、絶大なる信頼を得るに至ったわけだ。


 ――人々からの信頼を集めると同時に、その能力を自分のためだけに使わせるために囲い込もうとする輩や、強すぎるが故に敵視され、排除しようとする輩、その他諸々、打算や私利私欲のために利用とする輩たちも集まってきてしまった。


 ――大きな危害を受けたことは無かったと羅羽羅クンは言っていたけど、明狼チャンたちに安息の場所は無くなってしまっていたようだね。


 ――なにより、共に過ごしていた二人に多大な迷惑をかけることになったことに、明狼チャンは憤りと後悔を抱いてしまった。


 ――結果、明狼チャンはすべてを捨てて、異世界、こちらに転移することにしたわけだ。


 ――転移に足りない魔力は、魔力を有する貴重なアイテムから複数、嫌がらせの意味も込めて空になるまで抜き取ったとか。


 ――そうして明狼チャンは、自分の行動の反省からか、【全能】も魔力の使用も、記憶すらも封印して、転移してきたというわけだね。


 ――記憶を封じた影響か、振り回されて無駄にした時間を取り戻したかったのか、転移してきた時は、かなり若返ってたけどね。


 ――そして羅羽羅クンは【全知】の影響か、明狼チャンが望んだのか、自ら選んだのか、記憶を持ったままこっちに来た。


 ――ま、あくまで羅羽羅クンの話でしかないから、どこまで真実かはわからないけど、確実なことは、魔法の使えなくなった明狼チャンと、やけに物知りな羅羽羅クンと、獣人の日美々クンが転移してきたということだね。


 ――重要なのはここからなんだけどね。


 ――魔力の使用を自ら封じた明狼チャンに、事情を知っている羅羽羅クンが、魔法を使えるように戻したのは何故か。


 ――それは、明狼チャンの身体に異変が起きたからなんだよね。


 ――明狼チャンはこの世界の人間とは違って、魔力を生み出すことができるんだけど、魔力の使用そのものを封じたことで、魔力が体内に留まり続けてしまった。


 ――例えるなら、風船に空気をずっと入れ続けているような状態だね。 


 ――そこで羅羽羅クンは、明狼チャンの体内に溜まり続ける魔力を抜くために、魔法――魔力を使えるように戻した。


 ――定期的に魔力を抜くだけなら、他にも方法がありそうにも思えるけど、羅羽羅クンはどうして明狼チャンに魔法を使わせることにしたんだろうね?


 ――カッコよく魔法を使う明狼チャンが見たかっただけだとボクは見てるんだけど、真実は羅羽羅クンのみぞ知るってやつかな。


 ――さて、魔力が使えるようになったことで明狼チャンの異変は解決したわけだけど、魔力が溜まり続けることで異常をきたすことがある、ということを認識したことで、羅羽羅クンはあることに気付いた。


 ――魔力が溜まり続け、異常をきたし始めていたのはこの()()も同じだということにね。

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