よくわかったね
「あなたってもしかしてだけど、代千華さん?」
その言葉に異形の女は目を見開く。
「へえ。よくわかったね。
そう。ボクはそこの明狼チャンに見殺しにされた、代千華だよ」
異形の女――代千華がニヤリとわらう。
「アレは痛かったなあ。二つの意味で。
いやあ大変なんだよ? 適合する身体を見つけるのって。
袋とじを手だけでキレイに真っ直ぐ切って開けるくらいにはね」
「適合する身体?」
「ボクと相性が良くて、同性で、同じ名前で、なおかつ物心がつく前に亡くなっててもらわなきゃいけなくて、その上で亡くなったからあまり時間が経たないうちに、同化しなくちゃならないんだよね。
――まあそんなことはともかく、日美々クンとは初対面だと思うんだけど、どうしてボクが代千華だって思ったんだい?」
「女の勘かな」
日美々が自慢気に答える。
「へえ。女の勘は侮れないねえ。でも、その女の勘にも根拠があるんじゃないのかい?」
「前に代千華さんの写真を見たんですけど、その時に思ったことと同じことを、さっき思ったんで」
「ボクを見てどんなことを思ったんだい?」
「すごく嫌だけど、めいろくんのハーレム引力にがっつり惹きつけられそうだなって」
「ボクが明狼チャンのハーレムの一員ねえ。まあ、無くはないかもね?」
代千華は熱い視線を明狼に送る。
「ところで、代千華さんって何者なの?」
代千華の視線を遮るかのように、日美々が訊く。
「ボクが何者かはおいおい話すことにするよ。久し振りに話すのが楽しくてね。人間としてのボクは死んじゃって、人と話すなんてできなかったからさ。
――あ。そういうことか」
代千華は突然、何かに気づいたようで、手をポンと打つ。
「マンガとかゲームでさ、ラスボスとか黒幕が、聞いてもない真相を語る場面ってあるだろう?
あれって、メタ的に言えば、読者や視聴者、プレイヤーに、それまで明かされてなかった真実を、一番詳しい存在に話させることで、説得力を持たせて説明してるってことだと思うんだ。
でも、似たような立場に立たされたボクは理解したよ。あれは話す相手がいないか、居てもちゃんと聞いてくれないから、真剣に聞いてくれることが嬉しくて、ついつい話してしまうんだろうね」
自らの説に、満足して頷く代千華。
「ボクの場合、明狼チャンに見捨てられちゃったから、話し相手もいないし寂しかったんだよね。
ということで、もう少しボクの話に付き合ってもらってもいいかい?
ほら、このあとまた話し相手が居なくなってしまうからね。今のうちにたくさん話しておかなくちゃね」
この後で明狼たちをきっちり殺すという、宣戦布告の込められた代千華の煽りに日美々が返す。
「代千華さんの最期のお話、ちゃんと聞いてあげますよ」
「ふふ。死ぬのはボクの方ってことかい? それならそれで、ボクが満足するまで話に付き合ってもらわなきゃいけないね。
さて、何から話したものかな?」
代千華が考えるように手を頬に当てる。
「俺が狙われる理由を聞いてもいいか?」
明狼が訊く。
「ふむ。しかし結局最初から話すしかないか?」
呟くように言う代千華。
「明狼チャンはこっちにくる前のこと、羅羽羅クンに聞いているのかい?」
「いや? 俺は何も聞いてないし知らない」
「そうか。まずは君たち三人がこの世界にやってくるところからだね」
「三人っていうのは?」
「明狼チャンと羅羽羅クンと日美々クンの三人だね。
――あれ? みんなノーリアクション?」
どうやら代千華は、期待していたリアクションが得られなかったようだ。
「私はらうらさんに教えてもらってますから」
「その場に私も居たので……」
「知らないはずの明狼チャンは?」
「さすがに俺が、生粋のこの世界の人間ってことはなさそうだなあと」
「うーん。テストで高得点取ったのに、全然見向きもされない子供の気分ってこんな感じかな?
――まあいいや。とにかく話は、明狼チャンたちがこの世界にやってきたところからだね」




