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適合

「またかよ!」


 叫ぶように言葉を吐き出した明狼。


 迫りくる芽緒が、上半身裸になろうとしていたので、明狼は一旦手っ取り早く止めようと【催眠】の魔法を掛け、眠らせようとしたのだが、まさか抵抗(レジスト)され、眠らせることに失敗したことで、前に日美々にも同じように抵抗(レジスト)されたことを思い出し、思わず口から出てきてしまった言葉だった。


 しかし、このまま芽緒の思うように行動させ続けるわけにはいかず、明狼は先ほどより多くの魔力を注ぎ込んで【催眠】の魔法を使い、今度こそ芽緒の動きを封じることに成功した。


「おっと」


 意識を失った芽緒が倒れる前に、明狼は抱き止める。


「む? めいろくん?」


「え? 何?」


「もしかして大きさ確かめたかった?」


「いやいやいや、それならむしろこうはしないでしょ」


「あー。まあそうか」


 日美々が引き下がったところで、羅羽羅が興味深そうに目を細めて訊ねてくる。


「そんなことよりめいろ、魔法を抵抗(レジスト)されてなかったか?」


「うん。された」


「めおめおって普通の人間で間違いないはず。となると……」


「となると?」


「やはりめおめおは、魔力に適応して、適合したってことだろうねえ」


「やはり?」


 まるでわかってたかのような、羅羽羅の言葉に引っ掛かる明狼。


「今のところ、普通の人はダンジョン内に24時間以上居るなんてできないからね」


「ダンジョン内の魔素が、()()()()毒ってことか?」


「そそ。魔力に馴染みきっためいろや、獣人であるにみたんには問題ないけど、普通の人は魔素を取り込み過ぎると死に至るみたい」


「試した人間が居るってことか?」


「本人の意思かはわかんないけどね。個人の人権にあって無いのと変わらない国もあるし」 


「非人道的な国ならやりかねないか。

 でも、あの時はダンジョン化したばかりで、魔素が薄かったから大丈夫だったとかは無いのか?」


「それでも保って半日ってところだろうね」


「魔素のある環境に適応して、魔素そのものに順応した結果、魔力に適合し、魔法を抵抗(レジスト)できるようになったと。

 ということは、この世界の人も適応できればダンジョンに入れるようになるということなのかな?」


「まあ、その辺はめおめおの状況を詳しく聞いてみないとかな?

 場合によってはこの世界の人間がダンジョンを探索したり、利用していく日がくるかもしれないね」


 それが良いことか悪いことかはともかく。と、羅羽羅は締めた。 




 ――翌日。


「おはようございます」


 朝食をとろうと、リビングに向かった明狼を迎えたのは、いわゆるメイド服――しかも胸元を強調しまくったもの――に身を包んだ芽緒だった。


「お、おはよう」


 何故ここにいるのか、何故そんな格好をしているのか、そんな疑問はとりあえず置いておいて、挨拶を返す明狼。


 芽緒は明狼に一礼すると、そのまま下がって行った。


 昨日の今日なので、どこか拍子抜け感もあったが、とはいえ昨日のように押せ押せでこられても困っていたはずで、明狼はほっと胸をなでおろしてもいた。 


「おはよめいろ」


「めいろくんおはようございます」


 続いて、既にテーブルについていた羅羽羅と日美々が明狼を迎える。


「おはようございます」


 挨拶を返すと明狼は、「メイド長」とだけプリントされた白いTシャツを着た女――羅羽羅に訊ねる。


「アレは何?」


「かわいいでしょ? 昨日の今日でよく間に合わせたよね」


「よく用意できたなってのはたしかにあるけど、そうじゃなくて」


「めいろに強引なアピールをしなかったのは、女子特有のマウントを取ってわからせたからだね」


「冗談でも事実でも、そういう言い方はよくないかなー」


「うちに居るのは、母親との折り合いが悪くて、家に帰ってもそもそも顔すら合わせないし、ダンジョン発生(今回のこと)に巻き込まれて死んでて欲しいくらいに思ってそうらしくて、ここに居ていいなら居させてほしいって頭を下げられたからだね」


「なるほど」


「で、ただお世話になるのも心苦しいから、家事とかは任せてくださいって言うから、メイド服(あの格好)を用意してお願いしたってとこだね」


萌美智(姉さん)が忙しくて全然家に居れないから、代わりに家事を押し付けたって訳じゃあない?」


「そんなことはないから大丈夫。何をしなくてもここに居てもらうつもりだったし」


「ふーん?」


「魔力に適合した人間なんて貴重なサンプル、野放しにするわけにはいかないからね」


「家事押し付けるより酷い話だね」


 苦笑いの明狼。


 実際、魔力に適合したことで、彼女が何らかの特別な能力を得た可能性もゼロではなく、不測の事態に対応するためにも、近くに居たほうが望ましいとは明狼も思っていた。


「それで、彼女に話を聞いて、魔力に馴染めた理由が推測でもいいからわかったりした?」


 明狼がいるとまた暴走しかねないということで、芽緒への聞き取りは、羅羽羅と日美々で行われていた。


 芽緒の母親の話もそこで聞いたものだろうし、肝心の魔力に適合した理由も、羅羽羅であれば話を聞いて推測できているはずだと明狼は考えていた。

 

「結論から言うと、めおめおが魔力に適合したのは、めいろのせいだね」 

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