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猫の獣人

「猫の獣人の女性に反応した気がする!」


 日美々が鋭い眼光を明狼に向けて放つ。


「え? 無いよ無い無い」


 さすがに今回ばかりは日美々の思い過ごしだと、明狼は否定する。


「本当ですか?」


「本当です」


「本当に本当?」


「本当に本当」


 しつこく疑う日美々。


「にみたん大丈夫。にみたんにも一緒に行ってもらうつもりだから」


「え? そうなんですか?」


「にみたんが居たほうが話もスムーズに進みそうだし。

 それに、めいろがでれでれと鼻の下を伸ばさないか、監視して貰わないといけないし」


「わかりました! 任せてください!」


 日美々は自信を見せつけるように胸を叩きながら、了承の意を示した。


 



 翌日。


 獣人からの面会依頼を受けた明狼と日美々は、萌美智(もみち)に連れられ、湾岸地区にある高層マンションの一室に訪れていた。


 明狼自身の存在を不用意に晒す危険性は当然あったが、自分の代わりに矢面に立ち、モンスターを討伐する、それ自体の必要性も理解したので、面会を受け入れることに踏み切った。


 何より日美々が彼らならおそらく大丈夫、という言葉を信用することにしたのだ。


 一つ気がかりがあるとすれば、今日はその日美々の様子が少しおかしく見えるということくらいだろうか。


 獣人の仲間と会うということに、なにか思うところがあるのかもしれないし、全く関係無いことかもしれないし、そもそも様子がおかしく見えるということそのものが、間違いなのかもしれない。


 そんなことを考えながら、明狼は萌美智に続いてリビングに入ると、二人の獣人が立って待っていた。




 

「よく来てくれた。仁雄優(におゆ)という。よろしく頼む」


 がっちりとした体付きをし、Tシャツにジーンズという、ラフな格好をした狼の獣人――仁雄優。


 三角の耳、硬そうな毛に覆われた顔、鼻や口など、狼に近い特徴を有しており、日美々と同じ系統の獣人とは到底思えない程の差異があった。


 そんな仁雄優が差し出す手を明狼は握り返して答える。


「明狼です」


 続いてその隣に立つ、猫耳と尻尾が付いていること以外は、この世界の人間と変わらない見た目をしている、胸元、へそ、脚などを惜しげもなく大胆に晒した猫の獣人――乃胡音(のこね)が明狼に手を差し出す。


「ウチは乃胡音ですにゃ」


「え!?」


 乃胡音の挨拶に大きな反応をする日美々。


「あ、いや。ごめんなさい」


 日美々は視線が自分に集まったのを感じて、顔を赤らめながら頭を下げる。


 日美々のリアクションに動きを止めてしまっていた明狼は、乃胡音の手を取り挨拶を返す。


「明狼です」


「日美々も久しぶりだな」


 仁雄優が日美々にも声を掛ける。


「久しぶりだにゃ」


「あ、どうも」


 ぺこりとお辞儀をする日美々だが、どうにも様子がおかしく、困惑した表情を浮かべている。


 そんな日美々を含めた四人に、萌美智は座るように促し、各々の前に飲み物を置いていき、部屋の隅に控えた。


「早速だが、明狼くんの腕前、見せてもらってもいいかい?」


 仁雄優が切り出す。


「その前に聞きたいことがあります」


 しかし明狼は、仁雄優の出鼻をくじくかのように、彼の希望を遮る形で言う。


「ふむ。何が聞きたいんだい?」


「本当に自分たちの戦ってる姿を、人前に晒すつもりなんですか?」 


「そう頼まれたからな」


「断るという選択肢もあるはずです」


「ここまで俺たちの生活を援助してもらって、断る選択肢はねえな」 


「こういう時に断れないよう、懐柔するための打算的な援助でしかないかもしれません」


「理由や思惑はどうあれ、世話になってることには変わりねえ」


「そんな事を聞くのは、明狼くんは今回のことに反対だからかにゃ?」


 乃胡音が口を挟む。


「賛成か反対かと問われれば、反対なんでしょうね」


「その理由を聞いてもいいかい?」


「これから獣人の人たちを目にすることになる、多くの人たちの反応があまりに不透明過ぎます」


「どんな反応が嫌なんだ?」


「ありきたりなので言えば、見た目の違いから起きる、差別的な言動や行動ですかね」


「他にはどんなのが考えられるにゃ?」


「この世界にダンジョンが現れた理由として、無理矢理結び付けられ、槍玉にあげられることですかね」


「なるほどね」


「後は、受け入れられても、逆に人気が出すぎて危険が及ぶ可能性もあります」


「ウチが魅力的過ぎて、力ずくでもモノにしてやろうって輩が出てくるわけにゃね?」


「そうですね」


「明狼くんは既にウチの魅力にメロメロというわけにゃね!」


「それは違います」


 きっぱりと否定した明狼だったが、こういう時に口を挟んできそうな日美々が、何も言ってこないのでどうしたんだろう? と日美々を見る。


 日美々は、これまで明狼が見たことの無い、困惑しているような、懊悩しているような、何かに耐えているような、複雑な表情をしていた。


「にみ? 大丈夫?」


 明狼がそう言い終わるやいなや、日美々がテーブルに手をついて叫ぶかのように言う。


「関係無い話で申し訳ないんですけど、乃胡音さんの『ウチ』とか『にゃー』とか何なんですかそれ!? 今まで聞いたことなかったんですけど!?」 

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