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面会依頼

「めいろに面会を求める獣人の方がおりまして、会っていただけませんか?」


 羅羽羅はそう言うと、一枚の紙を明狼に渡す。


(ギルド依頼ごっこでもしたいんだろうけど、真っ白なコピー用紙にプリントアウトされたものでは、雰囲気も何もあったもんじゃないな)


 そんなことを思いながら明狼は手にした紙に目を通す。


仁雄優(におゆ)さんだ」


 横から覗き込んでいた日美々が発する。


「知り合い?」


「うん。獣人グループのリーダーみたいな人かな」


「なんか最近出会う俺の知らない人、にみが知ってるパターン多いね」


「知らないって、この人はそうだけど、クラスメイトとか同じ学年の人を知らないめいろくんがおかしいだけでしょ」


「それは……その通りですごめんなさい」


「ん」


 大仰に頷く日美々。


「それで、獣人グループっていうのは?」


 明狼の疑問に受付嬢ごっこを続ける羅羽羅が答える。

 

「お父さんの組織(ところ)で支援している方々がおりまして」


「この国で生活する獣人が、大勢居るってこと?」


「にみたんがこうしてここに居るように、異世界――と思われるところから、古今東西様々な理由でやってきて、生活を営んでおります」


「そうなのか」


「鬼だったり、天狗だったり、河童だったりといった、古くからこの国で妖怪と呼ばれる存在(モノ)たちは、異世界からやってきた獣人であることが多いんですよ」


 説明口調のまま話し続ける羅羽羅。

 

「へええ」


「とは言え、獣人である彼らがこの世界で普通に生活をするには、なかなかにハードルが高く」


「にみみたいに、尻尾だけならまだ隠しようもあるけど、目立つところに特徴があったら、余計な騒ぎが起きたりすると」


「その通りでございます。ですので、彼らの衣食住、働き口などの支援を、お父さんの組織(ところ)で行っております」


「それで、そんな彼らがどうして俺と会いたいと?」


「彼らを支援してる理由って、この世界でも生きていけるようにとか、世間を騒がせないようにとか、一応そういう綺麗事もあるはあるんだけど」


「いや、待て待て。口調はもういいのか?」


「うん飽きた」


 あっさりと言う羅羽羅。


「で、これは最初から彼らにも伝えてはあるんだけど、何かあったとき――有事の際は力を貸してもらうと」


「支援する代わりに、何かのときは頼むぞと」


「そう。で、何かの時が今ってわけ」


「それで、彼らに何をさせようと?」


「ダンジョンのモンスター討伐だね」


「え? モンスターによる被害が出てるのか?」


「ううん。ダンジョンから出てきて人間を襲う、みたいなのはまだ出てないけど」


 今のところ犠牲者は、ダンジョン化したときに運悪く中に居た人か、好奇心からダンジョンに潜り込んだ人である。


「それでも討伐の必要があると」


「うん。もし仮にモンスターが外へ出てきた時に、対抗手段があるというのを人々に周知させて、人心を安定化させておくべきだろう、と」


「ということは、戦って倒す姿を見せるということか?」


「めいろにその役目を担わせる案もあるんだけど、嫌でしょ?」


「うん。絶対嫌だね」


「その代替案として彼ら、獣人たちに白羽の矢が立ったってわけ」


「人々に見つかって混乱させないように、ひっそりと匿うように生活させてたのに、矢面に立たせて大丈夫なのか?」


「その懸念はたしかにあるんだけど、まるで()()()()()()()()()()()()()、あっさりとダンジョンを受け入れている様子を見ると、彼らも受け入れてくれるんじゃないかって。

 何より、自分たちの生活を守ってくれるかもしれない存在なわけだしね」


「なるほど――って、俺に会いたい理由がまだわからないんだけど?」 

  

「まあまあ慌てなさんなって」


 からかうように羅羽羅は言う。


「慌ててるわけじゃないんだが」


「まあまあ、めいろくん。落ち着いて落ち着いて」


 日美々も戯れに加わる。


「はあ。なんで俺が悪いみたいなことに……」


 思わずこぼす明狼を無視して羅羽羅は説明を続ける。


「彼ら獣人がこの世界でモンスター討伐をするにあたって、何が足りないかわかる?」


「足りない物? ええと、武器とか?」


「うん。その通り。

 獣人はあまり魔法が得意じゃないみたいでね――少なくとも、討伐を依頼した獣人のグループには、魔法を使いこなせる人は居ないみたいで」


「私が知ってる限りでも、魔法を使える人は居なかったです」


 日美々が補足する。


「モンスターにダメージを与えるには、武器に魔力を纏わせる必要があるってのは、めいろが持ち帰った情報だからわかってると思うけど」


「うん」


「で、そんなモンスターを倒すことのできる武器を用意できるのは、めいろしかいませんと」


「たしかに、俺が魔力を付与(エンチャント)するのが、確実ではあるか」


「それはつまり、めいろの用意した武器次第で、自らの生死が左右されますと」


「使ってみたらろくにダメージを与えられなかった、なんてことになれば、逃げるか死ぬかってことになると」


「だから、本当に信用できる武器を用意できるのか、一度めいろに会わせて欲しいというわけだね」


「なるほど」


「それに、モンスターを倒すことも魔力を纏った武器を用意することもできるのに、目立ちたくないからと自分らに仕事を押し付けた男を見てやろうってところじゃないかな?」


「そういう面も、たしかにありそうか……」


 嫌なことを押し付けていると思われて然るべき状況ではあった。


「面会依頼ってのは、モンスター討伐に向かう獣人の人たち全員?」


「いや、仁雄優(におゆ)っていうリーダー格の狼の獣人の男性と、乃胡音(のこね)っていう猫の獣人の女性の二人だね」

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