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昨日見ました!

「あれですね」


 日美々が年季の入った二階建ての一軒家、「伊藤さん()」を指差す。


 たしかに不気味な雰囲気を漂わせてはいるが、しかし、ダンジョン化した学校に比べると、不穏さが足りていないように見える。


「どう思う? めいろくん?」


「んー。なんか普通」


「そうだよね。私の危機感センサーみたいなのにも無反応だもん」


「危機感センサー?」


「なんか、尻尾がピリピリするんだよね」


「へええ。そんな機能が」


(「野生の勘」というやつかな?)


 獣人である日美々にも、そういうものがあるのだろうと明狼は納得して話を進める。


「危険な感じは全然しないけど、何があるかわかんないから、一応慎重に行こう」


 明狼は自戒も込めて日美々にそう声を掛け、目的の家の玄関前まで進んでいく。


 明狼は日美々に目配せし、お互い頷き合うと、玄関の扉に手を掛けた。


 明狼は魔法を使って解錠するつもりだったが、引き戸型の玄関扉は、明狼の腕の動きに合わせてあっさりと開いた。


「鍵は?」


「掛かってないみたい」


 魔法で空き巣みたいな真似をしなくて済んだと、変な安堵感を覚えた明狼だったが、無許可で家に立ち入るという事実には変わりないことに気付き、心の中で苦笑いを浮かべつつ足を踏み入れる。

 

「おじゃましまーす」

 

 日美々がささやくように言う。


 そんな日美々を横目に、明狼は【千里眼】と名付けた魔法による探索を行っていた。


「やっぱり学校の時とは違うね」


 日美々が小声のまま明狼に話しかける。


「うん。モンスターの類も居ないっぽいし……。

 でも、たしかに魔素で満たされてはいるんだよなあ」


「学校とは魔素の()()()が違う感じがする」


 日美々がクンクンと匂いを嗅ぐ。


「なんか、めいろくんみたいな()()()がするような?」


 そう言って日美々は、明狼の身体中を嗅ぎ回る。


「んー……めいろくんのが良いニオイだけど、やっぱり似てる気がする」


 言われて明狼もなんとなく嗅いでみるが、さっぱりわからなかった。


 自分の匂いがわからないということなのか、()()()と表現しているものの、日美々が感じているものが別のものなのかもわからなかった。

 

「匂いはわかんないけど、なんか魔素が違うものな感覚はなんとなくわかるかも」 


「ここってダンジョンなんだよね? なんかダンジョン感全然無いけど」


「うーん。そもそもダンジョンの定義がよくわかんないしなあ」


「学校とは違う?」


「学校だったあのダンジョンは、明らかに人間を捕食する存在だったと思う。

 モンスターは侵入者を狩る為に居て、宝箱は人をおびき寄せる為に作り出されたものって感じで」


 この世界に突如として現れた「ダンジョン」とは、まるで一つの生物のような存在なのだ。


「ここはモンスターも居なそうだし、ただ単に魔素が漏れ出ているだけの場所に思える」


 これまでこの地球上に存在していなかったと思われる、魔素が漂う空間であることには違いない。

 

 しかし、まだ玄関に入っただけだが、明狼は魔法による探索で、「魔素が漂う空間」以上の異常さを発見することはできなかった。


「とはいえ、魔素があるってだけで、これまでの世界には存在していなかった以上、ダンジョンと呼ぶべきなのかもしれないし、現れたダンジョンが持つ機能を有していない以上、ダンジョンとは呼べないのかもしれない。

 その辺はダンジョンって言葉を定義するところからかな」


 羅羽羅がダンジョンと言ったからにはダンジョンと呼ぶことになるかもしれない、そんな風に明狼は思いながら、気を引き締め直して言う。


「ここがダンジョンかどうかはさておき、ここに何があるか調べるとしますか」


 明狼と日美々は頷き合うと、家の中へと足を踏み出していった。



 

 一階のすべての部屋――トイレや浴室も含めて――を見て回ったところ、生活感が全く無かった。


 しかし、誰も住んでいなかったというには、寂れたような感じは全く無く、()()()()()()全てが置き換わったように見えた。


「どう思う? めいろくん」


「こう見るとダンジョン化してるかもって思えるね」


 年季の入った外観とは違い、中は時間を戻したかのように――新築当時はこんな感じだったのだろうと思わせる見た目になっていた。


「魔素の影響かな?」


「魔素が漂うようになった状態を生み出した、()()の影響かな?」


「何かって?」


「それは、上を調べてみないとかなあ」

 


 二階へ続く急な階段を、明狼と日美々は上がっていく。


「魔素が濃くなってる気がする」


「うん。俺もそう思う」


 どうやらこの家の魔素は、二階のどこかから漏れ出ているようだった。


 二階ある三部屋のうち、階段を上りきって右奥の部屋。ドアが開けっ放しになっているその部屋の様子が明狼の視界に映る。


 明らかに魔素が漏れ出てきているその部屋は、一階とは別の異常さが見て取れた。


「あの部屋だね」


 明狼はそう言うと、部屋に向かって歩いていく。


 その部屋中――床に、壁に、天井に――びっしりと文字にも、記号にも見えるナニカが、「魔法陣」を作るように書かれていた。


「めいろくん」


 日美々が、部屋の中心辺りに書かれた()()を指差して言う。


「これ、昨日見ました!」

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