これがかの有名な
日美々の提案を受け、【転移】を使わず歩く事にした明狼だったが、きちんと作動するかのテストを兼ね、日美々の荷物を預かり【転移】の魔法を起動させた。
無事、繋がりの確認を終え、日美々の荷物を置いてきた明狼は、日美々と共に家を出る。
「行きましょー」
キビキビと歩き出した日美々を、明狼は慌てるように追い掛けた。
買い物を終えた二人が、明狼の家に帰ってきたのは、日美々の家を出てから一時間半ほど経過した頃であった。
リビングで、「元聖女」とプリントされたTシャツ姿の羅羽羅が二人を迎える。
「おかえりー」
「ただいま」
「にみたんもおかえり」
「えと……ただいまです」
一緒に暮らそうと誘われ、了承した日美々だったが、他人の家感を拭うのはまだ先のことのようで、ぎこちなく答えた。
「らうらさん、これ」
そんな日美々が、羅羽羅に紙袋を差し出す。
「お誕生日おめでとうございます!」
「ありがと! にみたん。開けていい?」
「はい!」
日美々が行きたいと言っていた買い物は、羅羽羅へのプレゼントの為だった。
世界が変貌を遂げてから二日、各地に様々な影響を及ぼし、否が応でも変化を受け入れていくしかない状況で、それでも変わらぬ日々を、生活を、行動を人々は続ける。
さすがに昨日一日は、活動も物流もその他諸々止まっており、その影響で店舗によっては品揃えに支障をきたしていたり、営業そのものができていないところもあるようだが、明狼たちが向かった駅ビルの中の店舗は、世界の変化など無かったかのように営業が行われており、羅羽羅へのプレゼントを買うことができたというわけだ。
羅羽羅が包装をビリビリと破り、中身を取り出す。
日美々が選んだのは、保温機能のあるマグカップだった。
「おー。かわいいねえ」
羅羽羅は手にしたマグカップを食い入るように見る。
「にみたん、ありがと」
「実は、私とめいろくんの分もお揃いで買っちゃいました!
後でケーキ食べながら何か飲みましょう!」
明狼がテーブルの上にケーキの入った袋を置く。
「それがケーキ?」
「うん。さすがにネームとかは無いけどね」
「じゃあそっちは?」
羅羽羅は、明狼が手にしていたもう一つの袋について訊ねる。
「俺からのプレゼント」
明狼が袋を羅羽羅に差し出す。
「ありがと!」
受け取るなり羅羽羅は中を確認する。
「ヘアブラシ?
いつも髪がぼさぼさだとめいろは言いたいんだ?」
「いや、そうじゃなくて」
「ふふ。冗談。ありがとめいろ」
そう言って羅羽羅は明狼に抱き着く。
「あ、ずるい!」
「今日は私のめいろだから」
日美々の抗議に羅羽羅は笑みで返した。
日美々の為の部屋の準備や、夕食、ケーキと共にお揃いのマグカップに紅茶を注ぎ、簡素な誕生日パーティーをした明狼たち三人。
その後、諸々を済ませた明狼は、シャワーを浴びていた。
お湯をためて湯船につかる方が、身体に良いとは聞くが、単純に面倒という理由で、基本的に明狼はシャワーだけで済ます。
今日も当然のようにシャワーだけで済まし、脱衣所に出てバスタオルで頭を拭いていると、カチャとドアが開いた。
万が一入っていることに気付かず、ドアを開けたら裸の――身体中に不思議な紋様の描かれた――男、という状況は日美々に悪いと思い、カギを掛けていたはずなのにも関わらず。
はたして開けたドアから姿を見せたのは、入浴準備を済ませた日美々だった。
明狼と日美々の視線がぶつかり、お互いに固まったように動かなくなる。
先に止まった時の中から抜け出したのは、日美々だった。
日美々はその視線を、上から下へ動かしていき、明狼の下腹部のあたりで止める。
じーーーーーーー。
そんな効果音が見えるくらいの形相で、日美々は一点を見つめ続けている。
「にみ?」
明狼がそう声を掛けたことに、気付かなかったのか、或いは無視したのか、それでもなお日美々の視線は一点に固定され続ける。
(えー……どうしよう……)
じっと見られている事に恥ずかしさを感じるものの、今更隠すのもそれはそれで余計に恥ずかしい気がして、結局動けない明狼。
再び膠着状態へと陥った明狼と日美々を解き放ったのは、羅羽羅だった。
「どったの? にみたん」
そう日美々に声を掛け、羅羽羅は脱衣所の中を覗く。
「ははーん」
裸の明狼を見た羅羽羅が呟く。
「これがかの有名な『ラッキースケベ』ってやつかあ」




