植え付けられたモノ?
「俺の感情や考え方が、俺のモノではなくて、羅羽羅によって作られ、植え付けられたモノかもしれない――」
自らが抱く感情が、自らのモノではない。それはたしかにとてもイタイ発言だった。
「それはたしかにちょっとイタイかも……」
ちょっとイタイとオブラートに包んで言う日美々。
「えっと、めいろくんが魔法を使えるようにした時に、他にもらうらさんが仕込んでいたということ?」
「その可能性を捨てきれないかな……と」
「そう思う理由ってなにかあるの?」
「前にも話したけど、にみを助けたあの時、俺自身のモノとはとても思えない衝動に突き動かされて……」
「その衝動は、らうらさんによって植え付けられたモノかもしれないと」
「うん」
明狼が伏し目がちに続ける。
「今、こんなこと言うのはヒドい話かもしれないけど、俺はにみのこと、好き、です」
「!!!」
ヒドいというのは、つい先程まで別の女――羅羽羅とイチャイチャしておいて、という意味だろう。
しかし、明狼に「好き」と言われてしまえば、日美々にはそんなことどうでもよく、自然と顔がほころんでいく。
「ありがと……私もめいろくん好き」
お互いの気持ちを確認しあい、明狼と日美々はめくるめく展開へと進む――ことはなく、明狼は俯いたままだ。
「俺のにみが好きだって気持ちは間違いないけど……」
「らうらさんによるものかもしれないと」
明狼は頷く。
「どうしてその対象が私なのかよくわからないけど、仮にらうらさんが、私を好きになるようにめいろくんに植え付けていたとしたら――超ラッキーだね!」
そう言った日美々は、喜色満面にあふれていた。
「めいろくんから好かれて悪いことなんてないからね!」
自分の言葉に納得して、うんうんと頷きながら日美々は続ける。
「植え付けられたモノだとしても、好かれているうちに頑張ってもっと好きになってもらって、何があっても私から離れられなくすればいいんです!」
日美々は握りこぶしを作って明狼にアピールする。
「めいろくんは、植え付けられた好意が、らうらさん次第であっさり失ったり、反転することを恐れているんだと思うんだけど、そもそも人って心変わりするものだからね?
小さなことで簡単に変わることもあるだろうし、私の気持ちが変わることだってあるかもだしね?」
(と言いながら、よっぽどの事があってもめいろくんへの気持ちは変わらない気がするけど)
そんなことを思う日美々。
「それにしてもめいろくん、らうらさんのせいにし過ぎじゃない?」
「え?」
「感情を植え付けられてるとか、勝手に改変されるかもとか、らうらさんのせいだと押し付けてるけど、単純にめいろくんに主体性が無いだけじゃない?」
「…………ええっ?」
明狼は驚愕に満ちた表情を見せる。
「え? もしかして自覚ない?」
日美々も目を見開く。
「めいろくんが感情を植え付けられてるとか考えるのも、主体性の無さから、あれこれらうらさんに委ねてるからなんじゃ?」
もちろんそれだけでは、明狼が抱いている疑惑の全てを晴らせはしないだろうが、そういう明狼自身の性格が、より疑惑を深めている部分もありそうだ。
「まあ、めいろくんはそのままで変わらなくていいと思うけどね。
これからは私も、めいろくんの舵取りに加わるし!」
もともと明狼の性質として、主体的に行動をするタイプではないのだろう。
羅羽羅が握っていた明狼の手綱を、自分も握ることで、明狼の基軸となるものを増やせればいい。日美々はそう考えた。
(めいろくんの行動原理が私に委ねられる状況っていうのも、それはそれで魅力的に見えるけどね。
羅羽羅さんもそんな風に思ってるのかなあ?)
「ということで、めいろくんは感情がどうとか気にしなくて大丈夫!」
これ以上うだうだと考えていたところで、明狼の疑問を晴らす答えなど出ないだろうと、日美々は切り替える。
「えーと?」
「男なら細かいことは気にしない!」
「は、はい」
明狼は納得しきっていない様子ではあるが頷く。
「じゃあ、めいろくん家に行こ!」
「ええと、【転移】する?」
「んー。
せっかくだし魔法は無しで、普通に行こ。途中で買いたい物もあるし」




