どういう関係だったの?
「あなたとよちかさん? ってどういう関係だったの?」
柘植雨代千華と留義統の関係性。
明狼に強い恨みを持つくらいである。浅い関係ではないはずだ。
羅羽羅は、ただその関係性を問うた。
「それがどうした!?」
それだけのことで留義統は激怒していた。
何かが逆鱗に触れたのだろう、留義統は怒りに任せ、破る事のできない羅羽羅の前に張られたバリアを、魔力を込めて殴る。何度も、何度も殴る。
明狼は、羅羽羅はもちろん、自分と日美々の前に張っているバリアを切らさぬよう魔力を流し続けながら、留義統の動きを観察していた。
「お前らに一体何がわかるんだ!」
我を忘れたように留義統は叫びながら、なおも殴り続ける。
「俺と代千華は魂で繋がっていた!
俺はいつでも代千華を見てた!
代千華の為に、欲にまみれて近付く奴は排除した!
俺と代千華をどうしてみんな引き離そうとするんだよ!」
留義統の攻撃に乗る魔力が、だいぶ減っていた。
とはいえまだまだ余力はあり、攻撃で押し切るには厳しそうだと明狼は判断する。
叫んで、殴って、留義統の怒りのボルテージが僅かに下がり、動きが止まった瞬間。
「つまりストーカー野郎ってこと?」
日美々が挑発するように言う。
留義統からの攻撃は、明狼が防いでくれると全幅の信頼を寄せて。
「死んだくらいで魂の繋がりを過去形にしちゃうなんて、その程度の関係ってことね」
日美々はさらに煽る。
死んだくらいでは、本当の魂の繋がりは無くならないと、何故か日美々は確信していた。
そんな日美々を留義統はギロリと睨みつける。
「ストォカァだと!? ふざけんな!
俺と代千華の繋がりを何も知らずに好き勝手言うんじゃねえぞ!」
落ち着きかけた留義統の感情が強く揺さぶられ、怒りに染まる。
留義統の標的が日美々へと切り替わる。
魔力の大半を消費していることなどお構いなしに、留義統はステージ端まで助走し、日美々に向かって飛びかかり、残り全ての魔力と拳を叩きつける。
迫りくる留義統を前に、日美々は動じることなく――それどころか笑顔さえ浮かべ、自然体で迎える。
留義統の攻撃と明狼の魔法によるバリアがぶつかる。
怒りに任せ、魔力の最後の一滴までもを絞り出すようにして叩きつけた留義統の一撃は、それでも明狼のバリアを破る事はできなかった。
日美々が挑発し、自らへと攻撃を向けさせ、留義統が魔力を使い切ったその瞬間を明狼は見逃さない。
明狼は右腕を、左側の腰の辺りから、右上に開くように動かすと共に、魔力の刃で留義統の右腰から左上腕へ、逆袈裟に斬り裂く。
明狼の魔力切れを狙った留義統だったが、皮肉にも自らの魔力切れにより、明狼の攻撃に対して無抵抗に斬られることになった。
「ちくしょうが……。理不尽に泣き、理不尽に死ぬ。そういう存在に、お前は落ちた、そのはずだった……」
左腕斬り落とされ、身体からは体液を流し、それでも倒れることなく立ったまま、血反吐と共に留義統が声を絞り出す。
「世界も俺も変えてみせても、結局俺は何も果たせず、死んでゆくのか……」
留義統は大きく顔をゆがめる。
「この手で殺し永遠に、代千華は俺と、俺だけと、繋がりを持つ魂となるはずだったのに……」
留義統はそう言うと、体勢を維持できなくなり、そのまま後ろに――仰向けに倒れた。
「万が一何かあるかわからないから、トドメを刺させてもらう」
明狼はそう告げて、留義統の眉間に向け魔力を放った。
「もう動かないよね?」
「ここまでやれば大丈夫だと思う」
留義統の躯は、そのうちダンジョンに取り込まれることになる。
そこまで警戒しておけば確実だろうが、この状態で動くことはさすがにないだろう。
「挑発のつもりだったんだけど、マジのクソストーカー野郎だったね」
日美々は汚いものでも見るような表情を見せる。
「ありがとう。おかげで勝てたよ」
「どういたしまして」
日美々は表情を切り替え、笑顔で明狼に返す。
「でも、めいろくんの魔法は信じてたけど、前で庇ってくれても良かったんですよ?」
日美々は更に表情を変え、拗ねたように明狼を見上げる。
「そこはまあ、平等に、ね」
目を逸らしながら、歯切れ悪く明狼が言う。
「じゃあ次は、平等に庇ってくださいね」
日美々がニッコリと笑う。
「庇わなきゃいけない状況に、陥りたくはないけどね」
やれやれと明狼は首をすくめる。
「とにかく、羅羽羅のところに行こう」
明狼はそう言って、体育館のステージに向かって歩いていく。
明狼がステージ下に近付いたところで、羅羽羅はステージ上を駆け、明狼に向かって飛び込む。
明狼の視界を「聖女」の文字が独占した。




