煽らないで!猪恵美さん! ~2日目食事~
火葬の日が決まり、オレの家族と春藤一家が集まって食事している。
千春「春藤家の料理、お口に合いますか?」
父「僕が若いころ、香苗が作ってくれた郷土料理に似ているかな。とてもおいしい」
母「私が弔い業を引退するまで、この料理は何度も作ってきたの。最近は平穏だったから、レシピを忘れてしまったわ」
千春「料理、洗濯、風呂などの家事は私たち姉妹が全てやります。約束通り、全て任せてくださいね」
父「わかったよ。千香恵ちゃんはずいぶん大きくなったね。千香恵ちゃんも弔いに参加するのかい?」
千香恵「うん! 裕也お兄ちゃんと色々遊んだり、教えてもらったから。お返ししないと」
父「そうか。裕也も喜んでくれると思うよ」
千香恵「うん。事故の時に近くにいてね。救急車呼んで、一緒に付き添ったの」
ヘビメタっぽい女性「千香恵は、こいつの旅立ちをちゃんと務めたのか?」
千香恵「ちゃんと詠んだよ! 最後の最後まで、お兄ちゃん聞いてくれたもん!」
ヘビメタ女「そっかなぁ? 千香恵は泣き虫だから、ちゃんと見送れたとは思えねぇが」
千香恵「泣いてないもん!! うぅぅ!! お務めちゃんとやったもん!」
ヘビメタ女「泣くぞ。すぐ泣くぞ。絶対泣くぞ。ほーら泣くぞ」
千香恵「お兄ちゃん…また会いたいよぉ」
救急車で一緒にいてくれた千香恵ちゃんは、息を引き取るまで真剣に立ち会ってくれた。
家族団らんで安心したのか、オレの離別の悲しみが沸き上がって泣きそうになっている。
千春「やめなさい猪恵美。神聖な儀の途中で、感情的になってはいけません」
猪恵美「ちっうっせーな。反省してまーす」
千春「千香恵は裕也お兄ちゃんにお世話になったから、辛い別れになるでしょうね。でも直接会って、泣かずに責務を全うした。姉として、あなたを誇りに思うわ」
千春さんは、千香恵と同じ目線になるように膝をついて両手を握った。千香恵は、笑顔でうんと返事をする。千春さんは千恵美を優しくなでて抱きしめた。
千春「あと猪恵美。進行表の通りに対応お願いね」
猪恵美「わかってるよ姉貴。明日から2週間、バイトは休むってもう店長に伝えてある」
父母「よろしくお願いします」
猪恵美「春藤猪恵美におまかせあれ! 永久の儀式、ナーロッパの六法、お見せしよう!」
ナーロッパ? え、何そんなのが古くからあるの!? さすがに嘘だろそれ…