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耳噛みやめてよ!千春さん! ~2日目囁き~

 オレの偽物の耳に口付けをすると、千春さんは我慢できず耳をパクっと咥えだした。


 膝枕の時は女神様のような慈愛のやさしさの表情だったが、

 マタタビを嗅いだ猫のように光悦した表情でペロペロと舐め、咀嚼している。



 ちゅっぱちゅっぱ! ペロペロリン!!



 オレはドン引きした。誰にだって言えない性癖はあるだろうが、まさか従妹の千春さんがこんなことするなんて!


 部屋は閉まっていて誰も入ることはできない。ソレをいいことに、好き勝手にオレの偽物の体を弄って遊んでいる、なんという悲劇!

 実際に耳元でされたら、それはそれで気持ち良いかもしれないが、今のオレは体験することができないのだ!

 くそっ!なら動けるうちにソレやってくれよ! 最近はそういうの1時間いくらとかで秋葉でやってるけどさ。




 数分楽しんで満足したのか、千春さんは賢者モードに入って急に冷静になった。


 千春「ふぅ」



 ふぅじゃないが。


 彼女の手さげカバンからハンカチを取り出し、唾液まみれの左耳を丁寧に拭き取った。



 そして再び、彼女は膝枕の状態で耳元に口を近づけた。



「ゆうやよ、よく聞きなさい。ゆうやよ、よく聞きなさい」


「心が揺らぐことがないように努めなさい」

 

「今や、死なるものがココへ来てしまっているのです」


「今このときに、何ものかを貪り求めたり、執着してはいけない。心を惑わされないように」


 えー!? さっき千春さん、めっちゃ貪って楽しんでたじゃん!生きてる彼女なら良いのか!?




「ゆうやよ、よく聞きなさい。あなたの意識を生まれつきそなえていた光の世界に移しなさい」


「作られたものである、血肉の体を離れなさい。この体は無常であり、幻であると知るべきです」


 いやオレ、偽物の体から抜けて、既に離れてるんだよね。リアルのうちに体験したかったよソレ。





 千春さんは、膝枕で耳元で囁き続けた後、やさしく頭をなでていた。


 その光景はまさに慈愛の女神である。ちょっと前の、乱心耳ペロ変態長女を誰が想像できようか。


 これの真実を知る者は、オレ以外いないだろう。だが誰にも伝える事はできないのだ。悲しい。



 数分やさしくなでた後に、千春さんはベッドから降りて、偽物のオレの体を枕で支えた。


 バターランプを一つづつ息を吹きかけて消し、真っ暗の部屋になった。


 千春さんは1階に降り、父と母と相談を始めた。




 千春「それでは、火葬は十日後の11月3日としますね。よろしくお願いします」


 父母「わかりました」



 俺の体の火葬の日が決まった。

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