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部屋に入らないで!千春さん! ~死から引き取りまで~

 俺は従妹の三女、千香恵ちゃんの救済のおまじないを聞き続けた。


 くうという実体のない心を、水面に浮かぶ月をイメージして瞑想した。



 次第に真っ暗な視界がぼんやりと開き、よくみた景色が映りこんだ。俺の家だ。


 TPSのゲームのように、上から見下ろす俯瞰視点だ。家族が悲しそうに集まっている。


 女性「裕也さんの事故はとても残念です。死亡確認後、家族が遺体を引き取りました」


 女性「夫婦の話し合いの結果、弔いは旧姓の春藤家で執り行う事となりました」


 千春「私、春藤千春(はるとうちはる)が責任もって裕也さんをお導き致します」


 父「千春さん、わざわざ東京からすまないねぇ。2か月の有給を取ったとか……」


 千春「御心配には及びません。春藤家のお役目です。五代目当主として、務めさせていただきます」


 千春「こちらが弔い完了までの進行表、3部印刷してきました。一緒にお渡しするUSBには各種pdfがありますので、スマホやPCで見ることができます」


 千春「ルールが何点かございます。1つ、裕也さんには直接ふれないこと。2つ、弔いが終わるまで家の仕事をこちらに任せること。3つ、裕也さんが現世に執着しないように遺品の全処分を許可すること」


 父「わかりました」


 母「ありがとう千春さん。きっと裕也は安心して旅立つことができるわ」


 千春「香苗さん。裕也さんの部屋はどちらですか?」


 母「2階の右側の部屋です。女の子のシールが貼ってあるはずです」



 えっ!? ちょちょ、オレの部屋に行くの!?


 2件のスリコ(※)だったから、食べゴミをカタしてないし。ゴミ箱とかヤバい!!


 ※スリーコイン。1回の報酬が300円の短距離配達


 実家だって思われたくないから、彼女を家に呼ぶことはないんだよ! 待って、千春さん!!


 叫んでも誰も気づかないし、部屋のドアを体で守ってもすり抜けてしまう。


 ドンドンドン…ガチャリ。


 「失礼します」



 ごちゃぁぁ……。





 本棚とベッド、フィギュアケースを見た彼女は、ゴミと玩具で覆われた床をゆっくりと進む。


 彼女は抱えた緑の包まれた毛布をゆっくり、荒れたベッドの上に載せた。


 よく見ると、浮遊しているオレのへそ当たりから見えない糸が包んだ物体の頂点に繋がってる。


 千春さんは丁寧に毛布を取り外すと、みおぼえのある体が見えた。



 あれ、俺の体じゃないか!?

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