助けてくれたよ千香恵ちゃん! ~事故から心肺停止まで~
「そこの君! 危ない!! 後ろに下がるんだ!!」
キィィ!!! ドォォォン!!
ムーバーで配達中だった俺、浅村裕也はトラックに轢かれ宙を舞った。
後方の電柱に頭を打ち、全身がゴム人形のように折れ曲がり地に落ちた。
目を開けると真っ赤で、トラックと無傷の子供が視界に入った。
良かった…子供は無事だ。オレの声に気づいて止まったから、信号無視の車に当たらなかった。
うはー…痛ェや。轢かれるって話をよく聞いたけど、思ってたより痛い。
あ…目が……。スマホで撮影してないで誰か199番頼むよ。
誰かを助けて死んだら、神様が温情で転生やり直しできるんだろ?
いよいよオレも異世界転生に!
??「大丈夫ですか!?救急車がもうすこしで到着します!意識を保って!」
……あれ? 来ねェなお迎え……
え? なんで? オレ、子供助けたじゃん
「しっかりして!! ……え……お…ん……あ」
やばい耳が……遠くなるやばい!
見えねェ!! 聞こえねェ!! 体が動かねェ!! なんの感覚もねェ!! 痛みさえ!!
おい!! 小説家になろうで読んできた話と違うぞ!! 天国は!? 美女の神様は!?
何にも来ねェじゃねェか!! あんまりだ!! 何のために俺は今まで生きてきたんだ!!
うゥ……なんだか眠い……。意識が……。オレが消える……。
怖い、怖い。怖い……。消えちまう……。家族……ギルドのみんな…死ぬな。
異世界転生なんてウソッぱち……。
ピッ……ピッ……。ピピッ…。
白衣の人「心拍数140、血圧低下中……」
「ここは?」
少女「あっ!気づいた。ここは救急車の中だよ。南楼病院に向かってるって」
「ああ、助けてくれたのか」
少女「お兄ちゃん。無理にしゃべっちゃダメ。あと10分、がんばって」
「俺は…。子供を助けて…。そのまま轢かれて…」
白衣の人「心拍数78、血圧さらに低下……」
「俺は…助かるのか?」
少女「……」
俺の体の感覚からして、嫌な予感はしていた。白衣の人が輸血と薬の注射をしている。
助けてくれた少女の姿と声に見覚えがある。
「君は…いとこの……」
千恵美「春藤千恵美だよ。たしか、ゆうや兄ちゃんだよね。学校の帰りに大きな音がして、向かったら倒れてたの」
「私、お兄ちゃんを助けたい! 春藤家の救済のおまじない、聞いてほしいの」
「ああ」
眠たくて、目が鉛のように重くなり閉じた。耳元で彼女の声だけが聞こえる。
千恵美「高貴なる生まれの者、ゆうや。歩むべき道を探しに行くときが来ました。息絶えたらすぐに、光明が目の前に現れまふゅ、あっ」
えっ、何を言っているんだこの子。
ピー………
「心肺停止! 電気ショック用意!!」
俺の心臓が止まった。