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ロダンが続けて言った。
「そこで出会った二人の内、X氏。もうこちらも名を明かすべきでしょ、公然の話ですから。里見雄二と牧村佐代子、まるで学生の死は自分の彼女への恋と言う意地を見せた結果、別の愛を育んでしまった結果になったのです」
心を慰めてゆくピアノの音に巡査は一抹の寂しさを感じた。寂しさが次の展開を運んでくる。
「小さな名も無き悲劇は、一方で愛を育み、それが遂に大きな次を生んだのです。それから数年が過ぎたころ、その間に里見さん、牧村、有馬兄弟は仲良くつるんでいたのでしょう。それも有馬春次は小さな古美術商の所に養子に出ていて店を切り盛り始めた。ここに「芸術」を通じた一つの形ができたのですよ」
巡査は頷く。まるで時間を超えてそれを見てきたかのようなロダンの口ぶりに、唯、静かに。
「それから、ここに不幸が落ちて来た。この頃には里見と牧村は婚約をしていたと思うのです。だからこそ里見は牧村の実家の事に首を突っ込むことが必要になった」
「つまり、新聞の記事にあった例の老舗薬屋D倒産騒ぎだね」
「そうです。そこで急な資金が必要になったのでしょうね、まさしくこれが巡り巡って三室魔鵬の命を狙うピストルの弾になってしまった」




