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 不思議とはこのことを言うのだろうか。

 グラスに注いだ瓶ビールの数は忘れてしまった。それほどまでにロダンが話すことが自分を夢中にさせて行く。

 自分は警官として常に現実と向き合う。、推理とかなどは無縁だ。あんなものは実際にはテレビのサスペンスにしかない話で警察事件にはそうした余人の推理などが入り込む余地などはない。だからそれらはあくまで推理小説というフィクションの中でしか存在し得ず、それは娯楽的演劇なのだ…


 …そう自分は今まで思っていた。

 このロダンが話すのを聞くまでは。


 と、言う事は遂に自分はそうした想像の演劇の世界という舞台の演者になったということなのだろうか?

 そう言えば、ロダンという人物は『四天王寺ロダン』という名で、いかにも劇団にいそうな演者の名だ。名は体を表すと言うが、彼ほどそうした演者にはふさわしいものはないのではないだろうか。

 そう、推理探偵という演者としては。

 ロダンがアフロヘアの髪を掻いた。それから首を撫でる。撫でるとその手でグラスを手にしてビールを喉奥に流し込んだ。

 小さなゲップをして、すこし酒に酔ったような目でグラスを振る。そこに何を思い揺らしてるのか?

「しかし不思議です。この世は不思議としか言えませんね。人と人は場所や時間、普段は見えないそういった奇妙なもので繋がってるんです。でしょう?だってカラスだって何のゆかりも所以も無く、勿論、僕達とこのX氏とは何もない。何もないにもかかわらず、それとなく関係していて、それは場所と場所を繋ぐと言う役割を担っている」

 少しぶつぶつ呟きながら話し出すロダンの背に手を巡査は置いた。

「まぁまぁ、それはそれとして続きを話してくれよ。僕だって今は目から鱗が落ちるような気分何だ。さぁ、話の続きを是非!!」

 促されるようにロダンはぽつぽつと話し出した。

「それでですねぇ…、その後です。そうカラスが僕の疑似餌を持ち去った後、ちょうど一週間が経った頃です。僕がいつものように芝居の練習を階段の上でしていると…階下の方に二人連れ添うように立つ影が見えたんです」

「二人の影?」

「ええ、それは二人の年老いた老夫婦でした。男性は杖をつき、もう一人のご婦人は車椅子だったのです」

 老夫婦…

 田中巡査はその情景を想像する。

 楠の木陰の縁取りに並ぶ二人の老夫婦。大阪の市内を警らすればそんな老夫婦はよく見かける。ごく当然の光景ともいえる。

「僕は直ぐにピンときました。きっと…この桐箱を仕掛けたのはこのご夫婦に違いないとね、だって認知症用の追跡GPSなんて、若い人が持つもんですか、そいつは必要な人しか持たないものです」

 成程…、

 ロダンの横顔が紅潮しているのが分かる。

「つまり、一週間後にご本人が現れた…という訳だね」

「そうです」

 ロダンはそこから階下へと駆け降りた自分を思い出した様に、再びビールを一気に喉に流し込んだ。


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