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一章 属性と能力と魔法の力 1

 地面を揺らすほど大きな爆音が辺りに響き渡る。継いで、この辺りで一番大きいビルから煙が上がった。壊れたビルの残骸を避けるように突き進むのは、双葉(ふたば)流歌(るか)18歳。外見は8歳前後。栗色をしたセミロングのウルフカットを揺らし、ピンクのキャミソールに黒いロングブーツとジーンズ地のショートパンツ。腰に巻いたベルトにはエアガンとナイフが装着されていて、薄手のスプリングコートを羽織っている。そんな「彼」は、人生は短いからこそ、好きなものを着るべきだといつも主張している。

 ふと視線をやると銃を向けている警備員がちらほら。流歌はにやりと嗤って、その一人を標的に跳躍する。響く銃声。だが、その弾が流歌に届くことは絶対に無い。──流歌の魔法、風属性と創造能力によって作り出された大気の壁と、磁力属性と操作能力によって発生した特殊な地場。それらがシールドの役割を果たすことで物理攻撃からの絶対防御を可能にしている。──狙われた警備員は逃げようとするも、一歩遅かった。流歌はその頭を掴むとにっこりと笑う。

「なぁ、あれどこだ?」

「な、何が……」

「あれ、しらばっくれる?」

 知らないぞ~? などとふざけたように流歌は手に力を込めた。尋常ではないその力に驚いたのは最初だけ。苦痛に悶え、悲鳴すら上げられない男をにやにやと見ながら、もう一度尋ねる。

「紫紅の宝玉はどこにある?」

「な、んの、ことだ……」

「あれ、ホントに知らないの? この会社がデータ盗んだって聞いたんだけど……」

 警備員の頭をぱっと放し、うーんと悩む。しばらくの沈黙。ガチリと装填する音がしてそちらを振り返れば、魔法弾が発射された。魔法弾は物理攻撃ではないため、どんなシールドをもってしても完全に防ぐことは難しい。当たったと見るや魔法弾を撃った男が喜ぶ。

「女のガキだと思って手加減してやったら、なめやがって!」

「あれ? 手加減してくれてたんだ?」

 だが、その喜びもつかの間だった。恐る恐る振り返れば、瓦礫の上にはどこぞの不良のように足を広げて座り、男たちを見下ろす流歌の姿が。冷たい表情でそこから飛び降り、恐怖に震える警備員にゆっくりと近づく。と、ふっと身体を沈め地面を蹴る。一瞬で男の下に潜り込んで、アッパーカットを繰り出す。スローモーションのように倒れる警備員を見下して流歌は大きな声で言い放った。

「俺様は、18の男だっ!」

 なんなら脱いでもいいんだぞ、という流歌に周りは静まりかえった。それもつかの間、次の瞬間には怒号が響く。聞いてみれば「詐欺」だの「嘘つき野郎」だの──。一瞬だけ聞こえた「変態女装野郎」に流歌はキレた。どんな格好であれ流歌はプライドを持って生きている。そんな彼にとって外見を罵倒するなど言語道断。


 斯くして一度は国一番と吟われたセキュリティ会社「バリアルーン」はビルの倒壊という物理的な消滅によって、長い歴史に幕を引くことになった。


***



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