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四章 思い出の崩壊と新しい出会い 1

 大きなビルを見上げて、ため息をひとつ。昼間に来たときとは全く別の心境で見上げるビルは、とても禍々しいものに見えて嫌悪感しか抱けない。窓も作られていないそれに忍び込むのは安易ではないだろうが、諦めるつもりはない。

 創楽社第七棟は地下に十階、地上に二十三階の計三十三階からできている。何階かごとに通風口が存在し、それですら子ども一人がやっと通れる程度の大きさである。頭に叩き込んだ地図を思い出し通風口を探す。昔盗んだコンパスの属性と望遠の魔法を活用しながら、しばらくうろうろしていれば十階部分に存在するそれを漸く見つけた。中の構造と外からの光景で地図を照らし合わせ場所を確定。

 上空に飛び上がり通風口に軽く手を触れてみるとバチッと音を立てて弾かれた。流歌は不機嫌に眉を寄せもう一度手を伸ばす。激しい抵抗を感じながらも手を離さない。

「水、に電気か? いや違う。これは……雷?」

 分析を済ませると一度手を離し、腕に何重にも巻きつけた元素の塊を叩き込む。壁はバリバリと物凄い音を立てて反抗するが流歌の前ではそれすら敵ではなく、不適な笑みを浮かべてさらに奥へとねじ込む。その瞬間、パリンと澄んだ音を立てて結界は壊れた。あとは物理的な金網を外すだけで中に入れる。お気に入りのナイフをネジ穴に突き立てて回せば、ギュリギュリと音を立ててネジが外れた。


 開いたそこに身体を滑り込ませて数分。ダクトを辿ってエレベーター部分まで来ていた。

 地図にあった大きな部屋は恐らく収容室。地下十階から地下六階まで渡るそれのどこかに、実験で使われているひとぼしたちはいる。逆にルカのいた「L」は地上二十階。相当大切にされているらしい。

 上下を確認すると、大きな鉄の箱が三階ほど下にあった。飛ぼうと身体を起こすが空気が澱んでいて風の属性は応えない。苛立ち紛れに舌打ちをひとつ。やはり風の精霊がいないと不便だ。今後ほしいもののリストに風の精霊との契約を加えつつ、どうするかと考えて考えるのをやめた。シンプル イズ ベスト。たんっとダクトを飛び出して下にある箱を目指す。飛び出してすぐに大気中と体内の電子をぶつけて身体に巻き付けるように電流を流し、自らの身体を電子コイルと同じに変える。反発する磁力を利用して衝撃を和らげ、身軽に着地した。

「あー、くそ。痛え」

 ほんの少し痺れの残る足を軽く振って座る。エレベーターの天井にある蓋を少しだけずらして中を覗く。誰もいないのを確認し中に入った。念のため光を屈折させて自分の姿を消すことも忘れない。

 ボタンの役割をしているタッチパネルに手をやって『紫紅の宝玉』を活用しながらセキュリティに潜る。目的は地図。程なくそれを見つけると空中に展開させてじっと見る。頭の中で描いていた地図と重ねて、現在地と自分の乗っているエレベーターが荷物の運搬用であることを確認する。とりあえず一番下からかなぁ。なんて、下へのアイコンを選んだ。ごうんと音を立てて流歌だけを乗せた鉄の箱が降りていく。


***


 一番下に到着するのにもさほど時間はかからず、扉が開いた。視界に広がるのはキメラの大群。遊理に案内されたときに見たライオン擬きも五頭ほど檻の中に入れられていた。

「悪趣味だな。もっといいの作れよ」

 独り言でも呟かないと気が狂いそうな悪臭を無視して奧に進む。元は猛獣だったものが多いが、すでに原型がわからないものまである。もしかしたら人間だったものもあるかもしれない。

 数十を越えるキメラが入った檻の間を進んで反対側の壁まで辿り着いたが、そこにも荷物運搬用のエレベーターしかなかった。

「なんだ、ハズレか」

 流歌は目の前のエレベーターに乗り込んだ。


 一つ上の階で目にしたのはキメラ同士が争う白い空間。本人は運搬用エレベーターから出たせいかキメラの控え用の檻の中にいた。

 部屋の真ん中で争っているのは大蛇がベースで頭が六つに割れているキメラと、牛の形で爪と牙と翼を持ったキメラだった。しばらく一進一退を繰り返していたが、六つある頭のうちひとつを犠牲にして大蛇擬きが牛擬きを締め上げた。苦しみ呻いていた牛擬だが、しばらくして動かなくなった。大蛇擬きは敵が動かなくなったことを確認すると身体を離し、肉塊に食らいつく。びちゃっぐちゃっと音を立てながら大蛇擬きは骨までその腹の中に収めた。丸のみでない辺り、元は蛇では無いのかもしれない。

 流歌は込み上げる感情を抑えてぎゅっと拳を握った。迸るそれは恐怖ではなく怒り。大蛇擬きの動きが止まると、流歌の乗ってきたエレベーターが動き出して次のキメラを運んで来る。すと身体をずらして姿を消す。次に出てきたのは鰐の顔をしたゴリラの身体のキメラ。檻が開いて部屋に出ていくのを見届けたあと、流歌はエレベーターに身体を滑り込ませた。


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