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おくぶたえ  作者: 水上栞
第四章
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18◆ 半年ぶりの同窓会

 


 翌朝、私はまだ圭吾が寝ている間に部屋を出た。本当はせっかく東京に来たのだから、話題の新スポットなどにも二人で足を伸ばしたかった。しかし昨日の今日ではあまりに気まずい。


 仕方なく私は朝っぱらの東京駅でひとりモーニングをして、えらく惨めな気分で家に帰ってきた。おまけに前の晩ほとんど眠れなかったせいで、冷房ガンガンの新幹線の中で爆睡。次の日から一週間ほど夏風邪で寝込むという散々なオチがついた。泣きっ面に蜂とはまさにこの事だ。




 ひとつだけ嬉しかった事と言えば、私が寝込んだと聞いて圭吾が飛んで帰って来たことだ。それこそバイトが終わったその足で、明け方から車を飛ばして見舞いに来てくれた。結局あれ以来、圭吾とはうやむやになってしまっていたので、お互い何となく顔を合わせるのが照れくさい。一通りの見舞いの挨拶を終えた後、私の枕元でもじもじしながら圭吾が切り出した話は、やはり先日の件だった。



「あのな、マネージャーの事なんだけど」



 圭吾によると、溝端さんには今後送り迎えをしないことを宣告したそうで、きっと彼女はそれが私の差し金だと思っているだろう。別に思いたければ思えばいい。圭吾は手近な火遊びよりも恋人の方を優先した。当然といえば当然の話だ。


 それでも圭吾が私を選んでくれた事が無性に嬉しくてたまらなかった。高熱で気が弱っているせいだろうか、私は風邪のせいにして鼻をぐずぐず言わせながら圭吾に「プリン食べたい」とおねだりをした。本当は全く食欲などなかったが、とにかく甘やかされたくて仕方がなかったのだ。






 そんな夏も間もなく終わろうかというある日、高校時代の友人から連絡が来た。内容は9月に同学年の卒業生で集まってプチ同窓会を開こうというもので、しばらくみんなに会っていなかった私は、大喜びで参加の返事を送信した。



 あゆみに電話をしてみると、彼女も同じく参加組で「大ニュース」があると息巻いている。卒業してもアンテナ娘は健在らしい。私はその日が待ち遠しくなった。先日アメリカに旅立つチヨを見送ったばかりで、人恋しい気分になっているのかもしれない。


 彼氏もいいけど友達もやはり大切だ。男女混合でも同窓会なら圭吾もやかましく言わないだろう。私は早速、クローゼットを開けて当日着ていく服を漁り始めた。






「久しぶり~、元気だった?」



 メンバーの数だけ言った気がするその言葉を、目の前の仏頂面にも言ってみる。まさかこんな会合に来るとは予想だにしなかったその男は「おう」とだけ答えると、大皿の料理を取りにフードテーブルの方に消えてしまった。呆れてあゆみと肩をすくめる。



「相変わらずだね、射手矢くん」


「やなオッサンになりそうだな、ありゃ」



 クラス混合の非公式同窓会は、高校の近所にある洋風居酒屋を借り切って行われた。参加人数は男女合わせて100名弱といったところだろうか。思ったよりも盛況である。私はあゆみや元クラスメートたちと一緒に、大いに食べて飲んで楽しい時間を過ごした。


 卒業して半年弱しか経っていないのに、みんなすっかり大人っぽくなっている。あゆみなどギャルからキレイ系に変身していて、よく見なければ本人とはわからないほどの化けっぷりだ。



「実はね、新しい彼氏ができちゃって」


「貴女の場合はいつも新しい彼氏ですから」



 私がからかうように言うと、あゆみが口を尖らせる。



「ちがうんだってば、今度は正真正銘マジラブなの」


「当ててやろうか、けっこう年上でしょ」


「なぜわかるっ!」



 恋に全力投球するあゆみは、付き合う相手に思い切り影響を受ける。華奢なヒールのサンダルに、ゆる巻き髪。くすんだ浅黄色の麻のワンピースを着た姿から想像するに、相手はそれなりの年齢のようだ。持ち物も地味ではあるがお高いブランド品がちらほら目に付く。世を憚る付き合いでなければいいがと案じていた私の心中を察したのか、あゆみがニヤリと口角を上げた。



「大丈夫だって、ちゃんと独身だから」


「何やってる人なの」


「飲食店経営、オーナーシェフっていうのかな」


「なんか、すごくない?」


「そんな有名店じゃないけどね、それよりさ」



 あゆみが体をこちらに乗り出してきた。目がギラギラしている。どうやら言っていた「ビッグニュース」とやらの発表タイムらしい。



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