[ 螺子 / 月桂樹 / 森 ]
彼に連れられて、ネジのごとく螺旋になっている、大樹の中を歩く。
なんでも、この先は森になっていて、その中の月桂樹の葉がほしいらしい。
木の中が森だなんて、なんとも頭がおかしくなりそうな話だが、事実、中は森だった。
「お前のおかげで、僕はひどい目に遭ったんだ」
先を行く青年に、僕は噛みつかんばかりに不満をぶつけた。
知ってるさ。青年はこともなげに言う。
「地図を視ているとき、君もまた、地図に視られていたのさ」
「なにを」
「地図を視ている者を私は見ることができる。私は君を知っている。アリスティード坊ちゃま」
つまりは、ドレス姿も見られていたと。
そういうこと。青年がコロコロ笑う。
「よく似合っていたよ。最初は女かと思っていた」
僕はあの姿が大嫌いだったのに。
一回、殴ってやろう。
そう思って拳を握り、振り上げると、彼はこちらを向かないで避けた。
よろめいた僕は、体勢を立て直す。
「ああ、いいローリエが見つかった。これは使えそうだ」
どうやら青年は、避けたわけではなくて、単にいい月桂樹が見つかったので駆け寄っただけらしい。
それが、余計に腹が立った。
「また魔術を使って人に迷惑を掛けるつもりか」
僕の言葉に、青年は不思議そうな顔をして、こちらを見た。
そして、彼の言葉は僕を惑わせる。
「君のお父上も、同じことを言っていたが。私は人に迷惑を掛けようとしたことなんてないよ」