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[ 植物 / 呪文 / 空 ]
空まで続く大樹に寄り添う街。
それが東の果てだった。
伝承によれば、求める者が呪文を唱えれば、かの者は現れるという。
「The quick brown fox jumps over the lazy dog」
唱えてみたが、なにも起きない。
まあ、当たり前だろう。僕だって、期待してはいない。
ところが。
「まあ、合格かな」
いつの間にか後ろにいた青年が、僕を値踏みするような目で見て、そう呟いた。
その視線に居心地が悪くなりつつ、僕は彼を睨みつける。
おお、おっかない。
白い服を着た彼はそう言って両手を挙げて笑い、僕の帽子についていたブローチに触った。
そのとき、帽子のプリム越しからでも分かった。ガーネットだと思っていた宝石が、光っている。
「あなたは」
僕の問いに、彼は答えた。
「君の求める者だよ」