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[ 菫 / 切符 / 祝福 ]
傷が癒えたのは、スミレの花が咲く頃だった。
僕は傷が癒えるまで、いろんな文献を調べた。
いろんな伝承に登場している、不思議な力を持つ者。それが、『地図』を作った者で間違いなさそうだ。
その者が登場する、一番新しい伝承は、東に伝わる話のようだ。
僕はドレスを脱ぎ捨て、冒険家として東を目指すことにした。
出発の日。筆頭侍女が見送りに来てくれた。
彼女は、汽車の切符を僕に渡しながら、空いた手で十字を切った。
「坊ちゃまの旅が、なにごともありませんように」
祝福を受け、僕は汽車に乗り込んだ。