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[ ババロア / ガーネット / ブローチ ]
僕はミシンの間から出してもらえたあとに、傷を癒やすための部屋に移された。
筆頭侍女は、生きて出られたお祝いに、と好物のババロアを作って持ってきてくれた。
まろやかな甘味で生きていることを確かめていると、父が小さな箱を持って、僕を訪ねてきた。
箱の中身は、ガーネットをあしらったブローチだった。
キラキラ輝くそれは、地図を作った者の持ち物だという伝承があるという。
「かの者を探す際に、必ず役立つであろう。持って行け」
父様はそう言うと、きびすを返し、部屋を出て行った。
声を掛けようとしたが、なんと言えばいいのか、僕には分からない。
彼の背中が、なんだか小さく見えた。