5/7
5
良くない傾向ですね、と医者が形の良い眉をひそめて言った。
そんなに落ちついた返答で済ませていいのだろうか。
「治りますか? 私」
「少し難しいかもしれませんね。でも,睡眠薬の服用はあまり薦めたくありませんし・・・・・・」
せつの病は、普通の病ではない。奇病だ。
夢の世界から現実に、物を持ってきてしまう。
始めは糸とか小石だったが、今では人形一体。
隠すことだけ考えていた両親も、これ以上隠しつづけるのは無理と判断したのだろう。
優秀なお医者様だからと、このあばら屋に連れてこられ、
せつの両親は挨拶もそこそこに帰って行った。
「こうしましょう。これから寝る前に冷たい番茶を一杯飲んでください。
まずこれで様子を見ましょう」
そしてここの若い医者は、せつの症状にも驚かず、
治るとは到底思えない助言をくれた。
しかし数日後、せつはこの医師のすごさを知る。
<了>